PINK-01のポータビリティは、従来の一巻きコイル法装置に比べて、コンデンサのエネルギーが100分の1程度に縮小されたほか、一巻きコイルの直径も10分の1程度に縮小するなどの工夫が施されることで実現された。

研究チームは完成したPINK-01を、X線自由電子レーザー施設SACLAに搬入。77Tの超強磁場を発生させた瞬間の、物質のX線回折実験を実施。その結果、実際に磁場がかかる前とかかっている最中では、大きく結晶状態が変化することが見出されたとした。

  • PINK-01の磁場波形

    PINK-01の磁場波形 (出所:電通大プレスリリースPDF)

100T級の超強磁場は長時間持続するわけではなく、100万分の1秒程度とわずかであるため、その短時間でデータを取得する必要があるが、SACLAのX線レーザーはそれよりも極めて短時間の100兆分の1秒でX線回折実験を行えることから、今回の実験に問題はなかったという。

  • SACLAに持ち込まれたPINK-01

    (上)SACLAに持ち込まれたPINK-01。(下2点)超強磁場中のX線レーザービーム実験の結果 (出所:電通大プレスリリースPDF)

PINK-01の開発により、100Tに迫る超強磁場のポータブル超強磁場発生装置をさまざまな施設に持ち運ぶことが可能になったといえる。また、今回の実験で、物質科学の基本手法であるX線回折実験が超強磁場条件下で可能であることが示されることとなった。100T級の磁場によって結晶状態が変化することが予想されている物質は多くあり、今後、今回の成果を活用していくことで、これらが一気に解明されることが期待されると研究チームでは説明している。

また、PINK-01を利用することで、X線にとどまらず、これまで不可能だったテラヘルツやパルスレーザーなどのシングルショットプローブと超強磁場を組み合わせる研究を推進することができると期待されるともしており、これらにより今後、超強磁場の物質科学において研究手段が増大することが期待されるともしている。