英国に本拠を置く多国籍情報プロバイダであるInformaのハイテク市場動向調査部門(ブランド名Omdia、旧IHS Markit)が、2021年の半導体企業売上高ランキングトップ10(確定版)を3月28日(欧州時間)に発表した。

2021年の半導体市場は、前年比24.2%増の5868億ドルと半導体産業史上初めて5000億ドルを超え、同社が調査対象にしている世界中の半導体企業247社のうち、145社(59%)が、2021年に前年比20%を超える成長率を示したという。過去の最高値は、2018年に記録した4847億であったことから、2021年には、これより1000億ドル以上の成長を遂げたこととなる。

また、24.2%という成長率は、同社が2002年に調査を開始して以降、2番目に高い値であったという。過去最高の成長率を記録したのは2010年(同34.1%増)であったが、これは2009年のリーマンショックの影響による世界的な不況で同10.9%減と市場が後退した後に、反動で回復したことが大きい。一方、2021年の成長は2020年の高成長をさらに加速したものであり、意味合いが異なっていると考えられる。同社のデータベースによると、2002年~2020年の平均成長率は6.8%となったという。

  • 2002年から2020年に至る毎年の半導体市場の前年比成長率の分布

    2002年から2020年に至る毎年の半導体市場の前年比成長率の分布 (出所:Omdia)

ちなみに、市場動向調査会社である米Gartnerが2022年初頭に発表した2021年の半導体市場規模(速報値)は同25%増の5835億ドル、同じく市場調査会社である米IC Insightsが2021年末に発表した2021年の半導体市場規模(速報値)は同25%増の6140億ドル、同じく世界半導体市場統計(WSTS)が2021年12月に発表した市場予測値では、5559ドル(同26%増)となっている。

  • 半導体企業売上高ランキングトップ10社の2020年および2021年の売上高と成長率

    半導体企業売上高ランキングトップ10社の2020年および2021年の売上高と成長率 (出所:Omdia, 2022年3月)

売上高トップはIntel、Samsungが猛追もわずかに届かず

Omdiaの調査による2021年半導体売上高ランキングのトップとなったのは、前年比0.4%増と市場平均成長率24.2%を大きく下回ったIntel。売上高は766億ドル。同32.1%増で第3四半期以降は売り上げ規模でIntelを追い抜いたSamsung Electronicsの通年売上高が752億ドルとなっており、なんとか首位陥落を免れた形となった。

Intelの事業の柱であるMPU市場の成長率は同11%と、ほかの半導体製品分野ほどの高い成長率を示せていない。Omdiaの半導体担当コンサルティングディレクタである杉山氏は、Intelについて「(売上高横ばいが続いてきたが)今年は、PC市場向けのAlder Lake、DC市場向けのSapphire Rapidsが展開されるので巻き返してくるだろう」とみている。

一方、Intelに肉薄するSamsungの力強い成長は、DRAM市場(2021年の成長率は42%増)とNAND市場(同23%増)の2大市場の拡大が後押ししたもので、トップIntelとの売り上げ規模の差は2020年には193億ドルあったが、2021年は14億ドルまで縮まった。

同社の売上高ランキングは、3位のSK Hynixまでが2020年のものと順位に変動がなかった。4位以下は、QualcommとMicron Technologyが入れ替わり、4位にQualcomm、5位にMicronとなったほか、NVIDIAが8位から7位に、MediaTekが10位から8位に繰り上がった一方、Texas Instrumentsが7位から9位に転落。また、AMDが前年の13位からトップ10社中、同68%増というもっとも高い成長率を示し、10位へとランクインしてきた。

トップ10社の本社所在地の国・地域別内訳は、米国が7社(IDM3社、ファブレス4社)、韓国が2社(IDM)、台湾が1社(ファブレス)で、日本勢はトップ10のランク外となっている。

ちなみに15位までに広げると、以下の通り、日本勢が入ってくるという。

  • 11位:Infineon Technologies(2020年は9位)
  • 12位:キオクシア(2020年は11位)
  • 13位:STMicroelectronics
  • 14位:NXP Semiconductors
  • 15位:ルネサス エレクトロニクス

四半期ベースで過去最高を記録した2021年第4四半期

2021年は記録的な成長を示した年であり、中でも第四半期は前四半期比3.6%増の1591億ドルと、四半期ベースで過去最高値を記録することとなった。5四半期連続での売上高の拡大であり、Omdiaのデータベースによると、前四半期比の平均増加率は0.6%とのことから考えると、同四半期の好調ぶりがうかがえる。

なお、Omdiaの四半期業績のレビューによると、2021年第4四半期はSamsungが売り上げトップとなっている。Intelは2021年第2四半期までトップであったが、第3四半期以降、Samsungがトップに立っていることから、2022年のトップ争いには注目である。