Intelは3月15日(米国時間)、欧州における研究開発(R&D)から半導体の前工程および後工程に至る半導体バリューチェーン全体にわたり、今後10年間で総額800億ユーロ(約10兆3800億円。1ユーロ=129.73円換算)の投資を行う計画を明らかにし、その第一弾として170億ユーロを投じ、ドイツに最先端半導体ファブを2棟建設することを発表した。

  • ドイツに建設予定の最先端ファブの完成予想図
  • ドイツに建設予定の最先端ファブの完成予想図
  • ドイツに建設予定の最先端ファブの完成予想図 (出所:Intel)

一連の計画には、フランスに新しい研究開発と設計の拠点を設置すること、イタリアやアイルランド、ポーランドとスペインでR&D、製造、ファウンドリサービスに投資する計画なども含まれており、Intelは、この巨額投資により、最先端のテクノロジーを欧州に持ち込み、次世代の欧州の半導体エコシステムを構築することを目指すとしている。

欧州各地で投資活動を活発化するIntel

ドイツの新ファブは、ザクセン=アンハルト州の州都マグデブルクに建設される予定。建設は欧州委員会の承認を待って2023年前半に開始され、生産は2027年より開始する予定である。この新規ファブは、同社の最先端となるオングストローム世代のトランジスタ技術を使用した半導体の製造を行うという。同社のIDM 2.0戦略に沿って、自社の半導体デバイス製造に加え、ファウンドリサービスの両方を提供し、ファブ建設の過程で,000人の建設雇用、3000人の恒久的なハイテク雇用、そしてサプライヤーやパートナー全体で数万人の追加雇用を創出するとしている。

また同社は、アイルランドのリークスリップでの既存工場拡張プロジェクトへの投資を継続しており、新たに120億ユーロを投じ、製造スペースを2倍に拡張する計画も打ち出している。これにより、「Intel4プロセス」テクノロジーを欧州に持ち込み、ファウンドリサービスの拡拡充を図るとしている。この拡張が完了すると、Intelのアイルランドへの投資総額は300億ユーロを超えることになる。

さらに、Intelはイタリア政府と、最先端の後工程(アセンブリおよび最終テスト)製造施設を実現するための交渉を開始したことも明らかにしている。この工場には最大45億ユーロが投じられ、約1500人の雇用を創出するほか、サプライヤとパートナー全体で3500人の雇用を創出するとされている。操業は2025年から2027年の間に開始される予定としている。Intelは、イスラエルのTower Semiconductorの買収を進めているが、Towerはイタリアに新たなファブを建設中のSTMicroelectronicsとパートナーシップを結んでいることから、今回の後工程工場建設は、そちらとの相乗効果を期待したものとなる。

これらの欧州向け投資は総額で330億ユーロを超す規模となる見込みで、同社では欧州全体で半導体製造能力を向上させることで、欧州での半導体サプライチェーンの回復力を高めるための基礎を築くとしている。

欧州での研究開発も加速

最先端の半導体製造を進めるためには、研究開発と設計が不可欠であるが、Intelは欧州の世界クラスの大学、研究機関、および主要なチップ設計企業とサプライヤを支援することを目的に研究開発への追加投資を行うともしている。

まずはフランスのプラトー・ド・サクレー周辺に新たなR&Dハブを構築し、1000人規模のハイテク雇用を創出するとしており、これによりフランスはIntelの高性能コンピューティング(HPC)や人工知能(AI)の設計機能に関する欧州の中心に位置づけられることとなる。また、フランスにはファウンドリデザインセンターも設置し、フランスのみならず、欧州をはじめとした世界中の業界パートナーと顧客にデザインサービスを提供する予定だともしている。

また同社は、ポーランドのグダニスクにてディープニューラルネットワーク、オーディオ、グラフィックス、データセンター、クラウドコンピューティングなど半導体応用分野でのソリューションの開発を行ってきたが、この開発拠点のスペースを2023年までに50%拡大し、能力強化を図る予定ともしている。

さらにIntelは、スペインで過去10年にわたってバルセロナスーパーコンピューティングセンターとエクサスケールアーキテクチャで協力してきたが、次の10年間に向けたゼタスケールアーキテクチャの開発を進めており、共同でバルセロナに共同ラボを設立することを計画しているという。

Intelによると、これらの投資により、ベルギーimec、オランダのデルフト工科大学、フランスのCEA-Leti、ドイツのFraunhofer Institutesなど、欧州の主要研究機関との長年の関係がさらに強化されることになるという。また、イタリアでLeonardo、INFN、CINECAとパートナーシップを構築し、HPC、メモリ、ソフトウェアプログラミングモデル、セキュリティ、クラウドなどの分野での研究開発を強化していくともしている。