米カーネギーメロン大学の学部学生であるSam Zeloof氏が自宅のガレージで、ホットプレートなど簡易な装置や中古のニコン製顕微鏡を改造したリソグラフィ装置などを用いて10μmプロセスルールによる1200個のトランジスタを搭載したICの試作に成功したことがインターネット上で話題になっている。

同氏は高校生の時(2018年)に、6トランジスタを搭載したICを手作りし、それを用いたLEDの点滅デモに成功していた。Intel初期のMCU「4004」は、10μmプロセスルールを用いて製造され、搭載トランジスタ数はおよそ2000個であったことから、同氏はIntel創業時ごろの技術レベルに達したと語っているほか、初期のムーアの法則によるトランジスタ数の増加率よりも、自分の取り組みの方が早いとも語っている。

現在は、グレードアップしてRF GaAs HEMTなどにも挑戦しているとのことで、今後は自宅のガレージでファウンドリサービスを開始し、MEMSをふくめ、さまざまなデバイスをガレージで“受託製造”することを計画しているとする。

  • Sam Zeloof氏

    Sam Zeloof氏が高校生の時に製作したアルミゲート6トランジスタ搭載IC「Z1」(上)、大学生になって製作したポリシリコンゲート1200トランジスタ搭載ゲートアレイIC「Z2」 (出所:http://sam.zeloof.xyz/category/semiconductor/、以下すべて)

  • Sam Zeloof氏

    半導体業界初期のムーアの法則の直線と、Sam Zeloof氏が作製したICに搭載されたトランジスタ数の増加直線の比較

製造装置はほとんど手作りとするほか、必要な薬品について、近所のスーパーやAmazonで購入しているとする。ただし、フォトレジストは高価なうえに個人では購入できないため、Kodakの1954年の特許を見て自分で薬品を調合して作製したという。また、シリコンウェハについては、eBAYで酸化膜付きのものを購入し、小片にカットして使用。酸化膜の保護膜付きウェハであるため、クリーンルームのない環境でもシリコン基板を汚染から守れるという。

  • Sam Zeloof氏

    中古のニコン製顕微鏡を改造し、光学系やUV-VIS分光分析器を搭載して開発された自家製の2インチウェハステッパ

なお、同氏はデバイスの製作プロセスの過程や、できたICの特性計測・評価結果、さまざまな製造装置の自作手法や中古の実験装置の改造手法などを自身のTwitterやYouTubeなどで公開しており、いずれも教育的な内容となっている。現在、少額出資者・協力者を複数募集し、自宅ガレージでの半導体試作ファウンドリを始めている。