レノボ・ジャパンは3月10日、インテル、NTTドコモ(ドコモ)とLTE/5G対応のモバイルPC「Connected Modern PC」(CMPC)市場の拡大に向けた協業についての合同記者説明会を開催した。3社は協業の一環として、同日よりCMPC活用のためのホワイトペーパーを公開した。

説明会では今後の協業内容とともに、ホワイトペーパーの概要が紹介された。

  • CMPC活用のためのホワイトペーパー

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ドコモは2021年4月に米インテルとCMPC市場拡大に向けた連携協定を締結しており、レノボは同提携のパートナー企業の1社として参画した。同年から3社は、CMPCの認知度向上や顧客への普及促進に向けた活動のほか、技術連携やナレッジの共有を行っている。

協業を進める中で、3社はCMPC自体の認知度が低いだけでなく、「利用時の各種設定や通信の最大利用料がわからない」といった技術やコスト面の情報不足が、ユーザーがCMPCの利用を検討するうえでの心理的なハードルにつながっていると判断。IT担当者の疑問や不安の解消を目指して、今回3社は、CMPC導入の目安となる5つの情報をまとめたホワイトペーパーを発行した。

  • ホワイトペーパーではCMPC導入の課題に応じた情報を紹介する

ホワイトペーパーでは、CMPCの概要やハイブリッドワーク下においてCMPCを利用するメリット、APN設定の方法とトラブルシューティング、Windows上での従量課金制接続の取り扱いなどのトピックスに加えて、月当たりのトラフィック(通信量)のフィールドテスト結果が掲載されている。

フィールドテストでは、5G対応のThinkPad X1 Carbon Gen 9をドコモの5Gネットワークに接続し、下り80Mbps以上、上り10Mbps以上の通信速度が安定して確保できる環境下で、オンライン会議(映像は720p)を実施した際の通信量を計測した。説明会では一例として、Microsoft Teamsを使用したケースが紹介された。音声のみで会議を行ったところ1分あたりの通信量は約1MBだったのに対して、映像・音声ありの会議では1分あたりの通信量は約46MBだったという。

レノボ・ジャパン 企画本部 製品企画部 マネージャーの元嶋亮太氏は、「ネットワークに常時接続できるCMPCは、ハイブリッドワークにおいて業務をサポートする選択肢になるが、オンライン会議では多くのユーザーが想定する以上の通信量が発生している。働き方が多様化する中で、従業員によって通信量に差があり、最適なツールも異なってくるだろう。フィールドテスト結果をCMPCの検討や通信コストを測るうえでの参考にしてほしい」と説明した。

  • レノボ・ジャパン 企画本部 製品企画部 マネージャー 元嶋亮太氏

ホワイトペーパーには付録として、ユースケースごとの月あたり概算の通信量を試算できる表が備わっている。例えば、「音声のみでのZoomミーティング」の月間の使用時間(分数)や「送受信する電子メールの数」(月間)を試算表に入力することで、月あたりの概算通信量(携帯ネットワーク上)を自動で計算できる。

  • 付録の通信量試算表(一部抜粋)

説明会では、レノボ・ジャパン、インテル、NTTドコモのCMPC関連の取り組みや今後提供するサービスなども紹介された。

レノボ・ジャパンは2022年3月10日時点で、WWAN(無線WAN)を搭載したPCを21モデル提供している。同社はCMPC市場拡大に向けた取り組みへの参画を機会にインテル、ドコモと共同でセミナーやイベントの開催などを通じて、CMPCに関する情報発信を強化していくという。

  • レノボの法人向けCMPC

加えて、レノボ・ジャパン 執行役員副社長の安田稔氏は、「CMPCとモダンITを統合したソリューション・体験を提供していきたい。例えば、CMPCが届いたら設定をせずにすぐに使えるよう、オートパイロットなどを活用してゼロタッチエンドロールメントを提供するなどを構想している」と明かした。

  • レノボ・ジャパン 執行役員副社長 安田稔氏

インテルからは、執行役員常務 第二技術本部 本部長の土岐英秋氏が登壇し、現行のCMPCにも利用される第12世代インテルCoreプロセッサ―搭載の「インテル vPro プラットフォーム」が紹介された。

「サイバー攻撃によるシステム停止やファームウェアの改ざんをハードウェア側で復帰させる機能を搭載しており、総合的なセキュリティを高めることができる。また、パフォーマンスプロセッサと電力効率の良いエフィシェントコアプロセッサを組みあわせた、ハイブリッドアーキテクチャが従業員の生産性を向上させると考える。今後も分散しているチームがシームレスにつながり、協業・共有できるようなプラットフォームを目指したい」(土岐氏)

  • インテル 執行役員常務 第二技術本部 本部長 土岐英秋氏

ドコモはCMPC普及に向けて5G環境の拡大に取り組みつつ、MDM(Mobile Device Management)やシステム管理者向けのリモートキッティング・メンテナンスといったサービスの他、パブリッククラウドに閉域接続できる固定VPNサービスなどを提供している。

今後は企業規模に応じたサービス展開も計画しているという。NTTドコモ 法人ビジネス本部 DXソリューション部長の町田直氏は、「ニーズが多岐にわたるお客さまにはオーダーメイドで組み合わせてサービスを提供し、運用を全部任せたいお客さまにはデータレス機能を組み合わせたサービスなどを提供してきた。現在、中堅企業向けに必要最低限な機能をまとめた簡易パッケージの提供を予定している。これからも、CMPCを身近に感じてもらうための取り組みを続けたい」と意気込みを語った。

  • NTTドコモ 法人ビジネス本部 DXソリューション部長 町田直氏