i-Automation!のもとに230個以上のアプリケーション開発を行ってきたオムロン

オムロンは1月12日、2016年より取り組んできた“イノベーションでモノづくり現場の課題を解決する”という独自コンセプト「i-Automation!」に関して、今後5年を見据えた次世代のコンセプトとして進化させた「i-Automation!-Next」の概要発表を行った。

併せて同コンセプトを実現していく場として、滋賀県草津市の草津事業所内にある「オートメーションセンタ KUSATSU(ATC-KUSATSU)」をリニューアルオープンし、実証実験を行う施設「POC-KUSATSU」も新設したことを発表した。

  • ATC-KUSATSUの内

    リニューアルオープンしたATC-KUSATSUの内部(提供:オムロン)

i-Automation!は、モノづくり現場でイノベーションを起こす(i-Automation!のiはinnovationのiという意味も込められているとのこと)というコンセプトのもと立ち上げられ、オムロンが持つ20万種類以上の製品群と「integrated(制御進化)」「intelligent(知能化)」「interactive(人と機械の新しい協調)」という3つの“i”を活用することで、製造現場の生産性を高めるソリューションの開発に取り組んできたという。

すでに、3つの“i”を絡めた230個以上のアプリケーションを開発してきたという。具体的には、intelligentを加えたAI予兆保全や人と機械が協調するセルラインコントロールシステムといったもので、代表例として同社が2020年に発表した「ロボット統合コントローラ」がある。

  • ロボットコントローラ

    POC-KUSATSUでも用いられていた「ロボット統合コントローラ」

以前は生産ラインの制御機器と産業ロボットはメーカーが異なることが多く、コントローラが別々で存在することから複雑な作業をロボットが行うことは難しかったという。そこで同社は、ロボットと制御機器といった周辺機器をシームレスに統合し、人でしかできなかった複雑な作業を高度に自動化する「制御の統合」と、リアルとバーチャルを融合させたシミュレーション技術によって、システム構築からメンテナンスまでを効率化する「構築プロセスの統合」が可能なロボット統合コントローラを開発。現在までに数100システムを導入したという。

こういった実績も出てきているが、現在、製造業の現場では人材不足や熟練の技術者不足といった従来の課題に加え、ポストコロナを見据えたより高度な自動化や、SDGsに代表される地球環境や人の価値観の多様化・働く人々の幸せに配慮したモノづくりの高度化が重視されてきている。

そういった背景を踏まえ、同社ではi-Automation!の未来形としてi-Automation!-Nextを掲げ、今まで培ってきた3つの“i”の視点をより強化・融合させた「人を超える自動化」「人と機械の高度協調」「デジタルエンジニアリング革新」という3つの方向性を掲げていく方針だ。

  • 方向性

    i-Automation!-Nextで掲げた3つの方向性(提供:オムロン)

「人を超える自動化」はヒトへの過度の依存を低減し、継続的なモノの供給と生産性向上を追い求めるためのコンセプト。

「人と機械の高度協調」は機械が人に寄り添うという考えのもと人と機械がともに進化するモノづくりを目指すというもの。

そして「デジタルエンジニアリング革新」は、センシング&コントロール技術をベースに製造現場や設備をデジタル空間で再現することで、モノづくり現場のDXを加速させるというものだという。

ローカル5G実証エリアも新設

上記3つのi-Automation!-Nextを実現するために今回リニューアルオープンした草津事業所内のATC(オートメーションセンター)。

ATCは、オムロンのFA(ファクトリーオートメーション)技術の集積拠点として2011年より設置され、現在は世界37か所の拠点で製造業各社に対しさまざまな技術ノウハウや生産に関する課題解決策の提供を行っており、近年は、i-Automation!のもとに開発されたアプリケーションを体験する場所としても運用を行っているという。

中でもATC-KUSATSUは、技術・開発・製造機能を同拠点内に有するのが特徴で、このような拠点はオムロンの中でも唯一とのことだ。

その特徴を活かし、同社が持つ20万点以上にもおよぶ制御機器とソフトウェアやサービスをすり合わせ、クライアントの課題に合わせた解決策を実証できるほか、クライアントへの技術トレーニングも提供しているという。

そして、今回新たにクライアントの装置の持ち込み検証といった実証実験が可能な「POC-KUSATSU」を開設。POC-KUSATSUは、昨年末にローカル5G無線局免許を取得したことから、ローカル5Gを用いた実証も可能だという。

同社によれば、ATCはアプリケーションや事例を“体験”する場所で、POCは“実証”を行う場所という位置づけという。

今回、リニューアルに合わせて、報道陣にPOCやATCの内部や実証の様子が公開された。

POC-KUSATSUでは、従来、各工程での作業の後に、次の工程に運ぶという有線方式ではレイアウトに制限があったものを、ローカル5Gでの通信へと変更することで、装置や搬送ロボットのレイアウトを気にしないで設置することを可能とするレイアウトフリーに変更できるという実証実験の様子が公開された。

  • 実証

    ローカル5Gエリアで行われている、コンベアと搬送ロボットの実証(提供:オムロン)

また、協調ロボットやモバイルロボットなど各種ロボットやAIといった技術を組み合わせた実証も可能だという。

  • 実証エリア

    POC-KUSATSUのロボット実証エリア(提供:オムロン)

  • 実証

    POC-KUSATSUで実証していたパッケージの色ごとに仕分けて箱に入れるという実証。前出のロボット統合コントローラが使用されている

一方のATC-KUSATSUでは、草津工場の基板実装ラインの生産性を大幅に改善したDX活用事例などを見学することができ、そういった事例をもとにクライアントごとにソリューション開発を目指していくという。

なお同社では、ATC-KUSATSU、POC-KUSATSUをクライアントに活用してもらうことで、よりi-Automation!-Nextの世界を広げていくことができるようになるとしており、積極的な活用を促していきたいとしている。