NXP Semiconductorは、CES 2022において4D Imaging RaderとTri-Radio Deviceを発表した。このうちトライラジオデバイスに関して1月12日にNXPジャパンより説明があったので、これをご紹介したい。
このトライラジオデバイスに関するCESでの展示はこちらで公開されているが、基本的にはMatterに対応したマルチラジオ(Wi-Fi/Bluetooth/ZigBee)対応デバイスと考えれば良い。
問題はMatterとは何ぞやという話であるが、この規格を策定しているのはCSA(Connectivity Standards Alliance)である。聞き慣れない団体であるが、以前はZigBee Allianceという名前であった。要するにZigBee以外の規格も取り入れるべく、看板を付け替えた格好だ。
このCSAが2021年5月に発表したのがMatterである(Photo01)。
Matterは要するに通信プロトコルの上位に位置するSmartHome規格というかIoT規格で、その意味ではQualcommがかつて掲げていたAllseen(というか、その中核のAlljoyn)とかAppleHomeKitと非常に似たような位置づけにある規格である。強いて違いを挙げれば、通信規格が比較的緩やかな事であろうか? 少なくともIPで繋がれば利用できる事になっている。ここに次世代Home Network向けのチャンスがあると考えたのか、NXPもMatterにはコミットしており(Photo02)、これに向けて製品展開を行っている。
今回発表された「IW612」もその1つである(Photo03)。
Tri-RadioというのはWi-FiとBluetooth、ZigBeeの3種類で、波長的には2.4GHz帯(+5GHz帯)ということになるが通信プロトコルとか変調方式などには違いがある。ただこの3種類の通信方式を同時に利用できる事で、「一番繋がりやすい方式で通信できる」が簡単に実現できるとする。
そのIW612の特徴をまとめたのがこちら(Photo04)。
Wi-FiとBluetoothのモデムは多く存在するが、ZigBee/Threadまで統合したモデムは余り見かけない。これを1チップで利用できる、というのが最大の利点である。内部構造はこんな感じ(Photo05)である。
PAまで含めて1チップ化されているのが特徴で、MCUとMPUの両方に接続可能とされる。これにより、現時点で同種のこと、つまりWi-Fi/BluetoothとZigBeeを全対応するにはモデムが2チップ、それとコントローラとなるMCUなりMPUが必要になるが、これをIW612で置き換える事で将来的には部品点数が半減するとされる(Photo06)。
冒頭に示したCESでの展示ビデオであるが、デモ構成はこんな感じ(Photo07)。
Wi-Fiのゾーンを挟んで左右に2つのThreadで接続されたゾーン(右と左は直接通信できない)が設けられており、左にあるスマート照明とか右にあるスマートドアノブなどはThreadだけでしか通信出来ない。そこで、左右と中央の境界はThreadとWi-Fiの相互通信を行うBridgeにあたる“Thread Border Router”がおかれ、それがWi-Fiのアクセスポイントに繋がる格好であるが、するとスマート機器の制御とか状態表示は、Matterで接続されたタッチパネルでまとめて制御できるようになる。
Border RouterのみIW612が必要だが、あとのものはWi-FiなりZigBeeなりでしか通信できなく、それでも全体としてネットワークが構築できるというものである。すでに同社からはサンプル出荷が開始されており、また評価ボード(Photo08)も提供されている。むしろあとはMatterがどれだけ今後盛り上がってくれるかというあたりだろうか。これまで何度も盛り上がっては消えているSmartHome系の規格。最近は例えばAmazonのAlexaとかGoogle Nestの様に1社による独自規格でエコシステムを作ろうという動きがむしろ活発なだけに、Matterの今後の頑張りに期待したいところだ。