半導体・電子部品商社のコアスタッフは11月30日、半導体産業・電子部品産業の現状に関する報道機関向け説明会を実施。半導体不足についての見通しなどを商社の視点から説明した。
半導体産業のけん引役に変化の兆し
同説明会には、市場調査会社の英OmdiaにてConsulting Sr Directorを務める南川明氏も登壇。「半導体産業の2021年の振り返りと2022年の見通し」をテーマに現状の半導体産業の状況説明を行った。
同氏は、現在、半導体産業に変化のタイミングが訪れており、半導体消費のドライバ役がこれまでのスマートフォン(スマホ)やPCから、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)といったより上位のレイヤに移行しつつあるとする。「個人や企業が投資をする規模から、国が政策を打ち出し、インフラを変えていく、ということを考える段階に入っており、これが異次元の成長を半導体にもたらす可能性がある」とし、これまでの成長の仕方とは大きく変わってくることが期待されるという。
また、そうなると従来のような先端プロセスを活用し、より高い演算性能を持ったデジタル半導体で、他社と差別化した製品を提供するという流れよりも、より技術としてはレガシーなパワー半導体やセンサ、アナログ半導体など、これまで表舞台に上がりづらかったデバイスに注目が集まることが期待されるとする一方、直近の動きとして、メタバースに対する注目度が高まってきており、仮想現実でのより高いリアリティの実現に向けたコンピューティング性能の向上ニーズが生じており、データセンターや通信インフラへの投資が企業や国家レベルで重要な戦略になるとする。
2022年の半導体業界はどうなる?
もう1つ、この1年の間で世界的に話題になってきたのが、国家戦略としての半導体の在り方だという。空前の半導体不足、そして米中の摩擦を背景に、米国、中国、欧州などは数兆円規模の産業支援策を打ち出し、デカップリングを進めているのが現状で、各国がそれぞれの意思で巨大投資を進めることで、設備の過剰投資に対するリスクが高まることが懸念されるという。「2023-2024年にターニングポイントがくるのではないか」と南川氏は予測する。
ただ、そうした2023年、2024年の動きを気にする前に、2022年の世界経済の動向を考える必要があるともする。特に中国については、恒大集団の過剰債務の問題などがある一方、2020年より5年間で170兆円を新型社会インフラ投資を行うとしており、その実現に向けたパワー半導体を中心とした投資が加速しているとする。
また、世界的な潮流としてSDGsがあり、カーボンニュートラル実現のための省エネ技術が、発電所、製造現場、交通機関など、あらゆる分野で重要になってくることから、グリーン電力関連を中心に対応する半導体需要の増加が期待され、当該分野だけで年間5兆円の半導体需要を生み出すことが期待されるという。特にその6割がパワー半導体、アナログ半導体、センサで占められる見通しだという。
日本はどういったポジションに立つべきか?
世界の半導体需要を俯瞰すると、最大の需要先(消費先)は中国が40%、東南アジアが33%、日本が7%と、工場が集中しているアジアが圧倒的な存在感を示す。しかし、そうした工場に対して、どこが半導体を提供しているかというと、約半数が米国企業からであり、次いで韓国が19%、日本とEMEAが各9%ずつ、台湾が7%となっている。ただし、実際に、どこでそれが作られているかというと、韓国21%、台湾20%、米国が11%、EMEAが10%、日本と中国が9%となっており、日本もそれなりの生産能力を有していることとなる。
「ただし、日本は古い工場が多い。これをなんとかアップグレードしていく、ということを日本政府が考えていると思われる」とするほか、製造装置シェアについては、米国38%、日本32%と圧倒的な存在感を有しており、半導体材料についても日本が過半数を超すシェアを有していることから、半導体サプライチェーンで日本が重要な位置を占めているのか、ということが世界中で理解され始めており、これが今後の日本半導体産業の重要な戦略の中心になる部分だと考えられるとした。
なお、南川氏は、「需要と供給のバランスは常に変化するため、その動きを注視していく必要があるが、それとは別に、今後の日本政府による強い戦略が打ち出されることが期待される」と、日本でも国家戦略としての半導体産業への注力が進むことに対する期待を述べている。