宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月25日、2機の超小型探査機「OMOTENASHI」「EQUULEUS」に関する蚘者説明䌚を開催した。䞡機はNASAの倧型ロケット「SLS」(Space Launch System)初号機に搭茉され、月ぞ向かう。SLSの完成は予定より倧幅に遅れおいるが、珟時点で、打ち䞊げは2022幎2月12日以降になる芋蟌みだ。

盞乗りで10機もの超小型探査機が月ぞ

米囜が䞻導する「Artemis」(アルテミス)蚈画は、月面での持続的な有人掻動を目指す囜際協力プロゞェクトである。たず2024幎たでに、再び人類を月面ぞ送り蟌み、その埌、月呚回軌道に新たな宇宙ステヌション「ゲヌトりェむ」を建蚭。ここを拠点に、月面基地を構築し、将来的には、有人火星探査も芖野に入れおいる。

Artemis蚈画のために開発されおいるのが、有人宇宙船「Orion」ず倧型ロケット「SLS」である。SLS初号機「Artemis I」は、詊隓のために無人のOrionを搭茉。Orionは月呚回軌道に投入された埌、地球に垰還する予定だ。

  • Artemis I

    Artemis Iのミッション図。Orionを打ち䞊げ、地球に垰還させる (C)NASA

日本は小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち䞊げ時、ロケットの䜙剰胜力を掻甚し、超小型探査機「PROCYON」(プロキオン)を盞乗りさせおいた。Artemis Iも同様に、6Uサむズ(10×20×30cm)のキュヌブサットの打ち䞊げ機䌚を提䟛。圓初は米囜内のみで遞定が進んでいたが、空きがあったため囜際パヌトナヌに声がかかったずいう。

条件は、有人探査を掚進する技術・科孊ミッションを含むずいうこず。JAXAには2015幎8月に連絡があり、提案の締め切りたでたった2カ月しかなかったものの、耇数のミッションを提案し、OMOTENASHIずEQUULEUSが遞定された。圓時は2018幎の打ち䞊げ予定で、開発期間が1幎半ほどしかなく、JAXA内で開発を進めるこずずなった。

Artemis Iには、日本の2機のほか、米囜7機、むタリア1機の合蚈10機の探査機が搭茉。もずもずは13機の予定だったが、3機は間に合わなかったそうだ。

  • Artemis Iの盞乗り探査機のロゎ

    盞乗り探査機のロゎ。様々なミッションが蚈画されおいる (C)NASA

これらの盞乗り探査機は、宇宙船ずロケット䞊段の間のアダプタ内に蚭眮。Orionを月遷移軌道に投入した埌、分離される。SLS䞊段は月のそばを通過し、惑星間空間ぞず投棄されるが、この間、分離のタむミングは探査機偎で自由に遞ぶこずができる。日本の2機は、ノァン・アレン垯付近ずいう、早いタむミングでの分離を予定しおいる。

  • Artemis Iの盞乗り探査機

    盞乗り探査機はすでに搭茉されおおり、打ち䞊げを埅぀ばかり (C)NASA

打ち䞊げ日は、ただ「2022幎2月12日以降」ずしか分かっおおらず、正匏な日時に぀いおは、同幎1月初頭に実斜予定のリハヌサル詊隓埌に決定されるずいう。2機のうち、OMOTENASHIは月面着陞を蚈画しおいるのだが、打ち䞊げが倧幅に遅れなければ、日本初の月面着陞になる可胜性が高い。その点でも泚目だ。

䞖界「最小」の月面着陞を実珟できるか

「OMOTENASHI」(オモテナシ)は、革新的な月面着陞技術の実蚌を目的ずした探査機である。橋本暹明氏(JAXA宇宙科孊研究所 宇宙機応甚工孊研究系 教授)によれば、すでに遞定されおいた他の盞乗り探査機に極域の氷を芳枬するミッションが倚かったこずから、競合を避け、他に無かった着陞を提案したずいう。

  • 橋本暹明氏

    橋本暹明氏(JAXA宇宙科孊研究所 宇宙機応甚工孊研究系 教授)

最倧の特城は、キュヌブサットクラスの小さな探査機で、月面着陞するずいう䞖界初の技術に挑むこずだ。通垞は、どんなに小さくおも、着陞機は数100kg皋床にはなる。しかしキュヌブサットで実珟できれば、コストは桁違いに䞋がる。橋本氏は「倧孊や䞭小䌁業、個人でも可胜になる。敷居が䞋がり、いろんなアむデアが出おくる」ず期埅する。

たたコストが䞋がれば、たくさん打ち䞊げお、月面の様々な堎所を調べるこずができる。倧型蚈画ずは、補完的な圹割も期埅できるだろう。

  • OMOTENASHI

    OMOTENASHIの構造。3぀のモゞュヌルから構成される (C)JAXA

しかし月面着陞で小型化が難しいのは、火星ず違っお倧気が無いため、パラシュヌトなどの空力的な枛速手段が䜿えないからだ。枛速のためには、どうしおもロケットによる倧きな掚力が必芁になっおしたう。

基本的に、探査機を小さくするには、郚品やコンポヌネントを小さくしおいけば良い。ただし掚進系には、バルブなど䞀定以䞋にできないものもあり、構造効率がどんどん悪化するため、小型化には限界がある。OMOTENASHIは、「どこたで小型化できるかの挑戊」(橋本氏)なのだ。

液䜓ロケットは高性胜だが、構造が耇雑なため、小型化には向かない。事実䞊、固䜓ロケットしか遞択肢は無く、今回、盎埄11cmの超小型固䜓ロケットモヌタヌを開発した。しかしこれでも探査機の党重量を着陞させるのは䞍可胜なため、点火時に着陞郚以倖は投棄する仕組みになっおいる。

  • OMOTENASHI

    掚進系のトレヌドオフ。このサむズだず、固䜓ロケットでしか実珟できない (C)JAXA

䞀般的に“着陞”ずいうず、逆噎射により察地速床をれロ近くたで䞋げる゜フトランディング(軟着陞)のこずを指す。䞀方、無制埡のハヌドランディングもあるが、これはむしろ着陞ずいうより“萜䞋”や“激突”のむメヌゞに近い。OMOTENASHIが目指すのは、この䞭間ずいえる“セミハヌド”である。

゜フトランディングには掚力の粟密な制埡が䞍可欠だが、固䜓ロケットは点火したら燃え尜きるのを埅぀しかない。枛速量(ΔV)の誀差がどうしおも倧きくなるため、確実に着陞させるためには、ある皋床の残留速床は蚱容するしかない。

OMOTENASHIの堎合、この速床は、秒速50m(時速180km)皋床になる。激突の衝撃に耐えるために、着陞郚の䞋偎にアルミ補のクラッシャブル材を搭茉。ここが朰れお衝撃を吞収するこずで、着陞郚にかかる衝撃は8,000G皋床たで抑えた。着陞郚の機噚内ぱポキシで充填しお隙間を無くしおおり、10,000G以䞊にも耐えられる蚭蚈になっおいる。

  • OMOTENASHI

    ちなみに゚ポキシの充填は、蚈画が䞭止された「LUNAR-A」のペネトレヌタの技術を掻甚しおいる (C)JAXA

なお、圓初は䞊偎からの衝撃を吞収するために゚アバッグを䜿う蚈画だったが、䞋偎からしか衝突しないこずになったため、膚匵はさせる必芁が無くなった。ただ、この゚アバッグはアンテナずしおも利甚しおいるため、展開だけは行う。着陞郚には、アマチュア無線の送信機を搭茉。この電波が受信できれば、着陞の成功確認ずなる。

欲を蚀えば盎接月面の映像が芋たいずころであるが、さすがに着陞郚にカメラたでは搭茉できなかった。しかし本䜓偎には搭茉されおいるずのこずで、地球の撮圱を実斜する予定だ。

OMOTENASHIは、本䜓(OM)7.6kg、固䜓ロケットモヌタヌ(RM)4.3kg、着陞郚(SP)0.7kgずいう構成で、合蚈重量は12.6kgだ。本䜓には、探査機を月衝突軌道ぞ向けるためにガスゞェットの掚進系も搭茉。たた固䜓ロケットモヌタヌをスピン安定にするため、点火前には、このガスゞェットを䜿い、本䜓を高速に回転させる。

  • OMOTENASHI

    本䜓(OM)。倪陜電池は+Y面にのみ搭茉し、23.8Wの発電胜力がある (C)JAXA

  • OMOTENASHI

    固䜓ロケットモヌタヌ(RM)ず着陞郚(SP)。この状態で月面に衝突する (C)JAXA

OMOTENASHIの運甚

以䞊は工孊ミッションであるが、OMOTENASHIは科孊ミッションずしお、攟射線環境の枬定も行う。そのために、民生品の携垯型線量蚈を改造したものを搭茉。超小型のため粟床は限られるものの、地球磁気圏倖での芳枬機䌚は貎重だ。今埌、倚数の超小型探査機に搭茉すれば、デヌタの蓄積に貢献できるず期埅されおいる。

  • OMOTENASHI

    OMOTENASHIの科孊ミッション。地球磁気圏倖で攟射線環境を枬定する (C)JAXA

1リットルの氎でラグランゞュ点を目指せ

「EQUULEUS」(゚クレりス)は、倪陜-地球-月圏での効率的な軌道制埡技術を実蚌するための探査機である。担圓した船瀬韍氏(JAXA宇宙科孊研究所 孊際科孊研究系 教授、東京倧孊倧孊院 工孊系研究科 航空宇宙工孊専攻 准教授)は、前述のPROCYONの開発者でもあり、超小型の深宇宙探査機ずしおはこれが2機目ずなる。

  • 船瀬韍氏

    船瀬韍氏(JAXA宇宙科孊研究所 孊際科孊研究系 教授、東京倧孊倧孊院 工孊系研究科 航空宇宙工孊専攻 准教授)

EQUULEUSの目的地は、地球から芋お月の向こう偎にあるラグランゞュ点L2だ。ラグランゞュ点は、地球・月の重力ず遠心力がうたく釣り合う堎所で、5カ所あるこずが分かっおいる。燃料をあたり䜿わずにその堎所にいられるこずから、深宇宙枯の蚭眮堎所ずしお期埅されおおり、月面ぞの物資茞送や火星ぞ向かう䞭継地点ずしお掻甚できる。

EQUULEUSは、地球-月系のラグランゞュ点L2(EML2)に、キュヌブサットずしお初めお向かう。キュヌブサットは燃料をあたり搭茉できないため、軌道制埡胜力は極めお限られる。しかし倪陜や月の重力をうたく利甚するこずで、半幎1幎皋床の長い飛行期間は必芁になるものの、キュヌブサットでもL2ぞ到達できるずいう。

  • EQUULEUS

    L2ぞ向かう軌道の䟋。打ち䞊げのタむミングによっおも軌道は倉わる (C)JAXA

打ち䞊げ埌、数回にわたっお月スむングバむを実斜するため、L2ぞ向かう軌道は非垞に耇雑なものになる。ただ、これによっお、L2に盎接向かうより、遙かに燃料の消費を抑えるこずができる。必芁な制埡量(ΔV)はわずか数10m/s皋床ずのこずで、これならキュヌブサットでも十分実珟可胜だ。

EQUULEUSの重量は10.5kg。倧きな特城は、氎(1.22kg)を掚進剀ずするレゞストゞェットを搭茉するこずだ。氎は無害、ずいうか飲めるほど安党であるので、探査機の安党審査で非垞に有利ずいうメリットがある。たた氎は月面でも入手できる可胜性があり、将来的には、宇宙で氎を珟地調達し、それを䜿っおさらに遠くに行くこずも考えられる。

  • EQUULEUS

    EQUULEUSの構造。キュヌブサットながら、ゞンバル付きの倪陜電池パドルを搭茉する (C)JAXA

今埌、Artemis蚈画などの進行によっお、月ぞの盞乗り機䌚がさらに増えるこずが予想される。軌道制埡技術を駆䜿するこずで、少ない燃料でも到達できる範囲が広がれば、将来の超小型ミッションの自由床が向䞊し、様々な科孊成果が埗られるこずになるだろう。EQUULEUSで狙っおいるのは、その可胜性を実蚌するこずだ。

EQUULEUSでは、3぀の科孊ミッションも蚈画されおいる。

  • EQUULEUS

    EQUULEUSに搭茉された科孊芳枬機噚 (C)JAXA

「地球磁気圏プラズマ撮像」(PHOENIX)では、搭茉する極端玫倖光カメラを䜿甚。地球から遠く離れるこずを利甚し、磁気圏プラズマ党䜓を撮圱する。地球呚蟺における攟射線環境の理解を深めるこずに繋がり、JAXAのゞオスペヌス探査衛星「あらせ」(ERG)の芳枬を補完するこずも期埅されおいるずいう。

「月面衝突閃光芳枬」(DELPHINUS)では、可芖光の高速カメラにより、月面に衝突する隕石が発する閃光を芳枬するこずを狙う。L2からなら、地球照に邪魔されず、長時間の連続芳枬が可胜になる。これにより、月面に萜䞋する隕石のサむズや頻床が分かり、月面の有人掻動におけるリスク評䟡ができる。

「地球-月圏ダスト怜出」(CLOTH)では、地球や月の呚囲の宇宙空間に、どのくらい埮粒子(宇宙塵)が挂っおいるのか調べる。そのために、探査機を芆う金色のMLI(倚局断熱材)の䞭に、薄膜状のダスト怜知センサヌを埋め蟌んでいる。これにより、キュヌブサットながら倧きな芳枬面積を実珟した。