半導体市場調査会社のTrendForceが、メタバースが今後の半導体産業の成長に寄与する可能性についての調査結果を発表した。

参加者のインターネット上のリアルタイムの双方向通信や仮想シミュレーションなどを活用するメタバースは、既存のインターネットよりもさらに複雑な世界となるため、より強力なデータ処理コア、膨大なデータを転送できるネットワーク環境、および表示パフォーマンスが向上したVR/ARデバイスが必要になり、そうしたニーズが半導体メモリ、高度な半導体プロセス、5Gテレコミュニケーション、およびディスプレイテクノロジーの開発を推進することになるとする。

半導体メモリとしては、メタバースによる多くのデータを蓄積・処理するためにデータセンターはストレージのパフォーマンスを向上させる必要がある。これは、データの書き込みが高速なSSDが不可欠となることを意味する。一方のDRAMは、短期的には搭載SoCの大幅な性能向上は見込めないため、容量の増加は落ち着いたものになるとしている。

プロセス技術としては、AIと演算能力の向上ニーズや、グラフィックのレンダリング処理に対する需要が高まるとする。その実現のためには、より高度なプロセス技術を実現することであり、より高性能なCPUとGPUの登場が、パフォーマンスの向上、消費電力の削減、チップの小型化といった恩恵を得ることができるようになる。CPUについては、Intel 7(第3世代10nmプロセス)やTSMCの7nmプロセス(AMD)で製造され、GPUについてもAMDはCPUと歩調を合わせる形で、NVIDIAはTSMCの7nmならびにSamsungの8nmプロセスを採用しているが、NVIDIAは、5nmプロセスGPUを2023年初頭にリリースする可能性があるという。

ネットワーキングとテレコミュニケーションとしては、よりデータ送信の帯域幅と遅延に対する注意が必要となる。5G通信は、高帯域幅、低遅延、およびより多くのデバイス接続数をサポートしているため、この需要を満たすことができることから、5G関連技術の実用化に拍車をかける可能性があるとする。ネットワーク環境のバックボーンになる、(1)ネットワークスライシングを介してより高い柔軟性を提供するSA(スタンドアローン)5Gネットワーク、(2)クラウドのコンピューティング能力を向上させるMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)、(3)データ送信の信頼性を向上させるTSN(Time Sensitive Networking)などが該当するほか、屋内無線接続の範囲拡大に向けたWi-Fi 6との組み合わせも考えられ、メタバースが、こうしたネットワークサービス開発の主要な推進力になるとしている。

ディスプレイ技術としては、VR/ARの高性能化がより高い解像度とリフレッシュレートを求めることとなる。特に、ディスプレイの画素の物理的寸法が縮小するにつれ、マイクロLEDおよびマイクロOLED技術の採用が進むことが期待される。また、従来の60Hzのリフレッシュレートでは、高度なディスプレイアプリケーションの視覚的な要求を満たすことができなくなるので今後は120Hzを超えるリフレッシュレートが主流になることも期待されるほか、メタバースでは双方向性に重点を置くため、従来の物理的なデザインに制約されないディスプレイテクノロジーの実現を求めることとなり、結果としてフリーフォームファクターを可能にするフレキシブルディスプレイパネルの市場が恩恵を受けることが期待されるとしている。