米国企業が、中国の半導体ベンチャーおよび半導体関連企業への投資を増やしており、米中貿易戦争の最中に中国政府や中国企業を後押しする形となり、半導体技術における米国の優位性を維持するための米国政府の取り組みを損ないかねない状況になっていると米Wall Street Journalが報じている。
同紙によると、米国の半導体大手企業、ベンチャーキャピタル、さらに民間投資家たちは、2017年から2020年にかけて中国の半導体業界で58件の投資取引に参加したという。また、IntelやQualcommなどシリコンバレーの半導体企業のスタートアップ投資子会社も活発に中国半導体ベンチャーを支援しているほか、シリコンバレーのベンチャーキャピタル各社も2020年初頭以降、これまでに中国の半導体関連企業に少なくとも67件の投資を行っているという。
一部の米国政府関係者や連邦議会議員は、米国企業の中国企業への投資に制限を加える必要性を感じて対策を協議しているという。しかし、米国政府は、事実上禁輸とされている(正確にはライセンス取得義務付けを要求している)中国の通信機器大手Huaweiならびに中国の大手半導体メーカーSMICに対し、米国内の半導体デバイスメーカーや製造装置・材料メーカーが総額1000億ドル規模の製品や技術に対する輸出許可を出していたことも最近判明している。
中国は多くの米国の半導体企業や半導体装置メーカーにとって世界最大市場かつ、今後も成長が期待できる有望な市場である。そのため、米国半導体企業の中国市場依存度は高く、中国市場を無視していては業績が悪化してしまう事情が背景にはある。また、米国のベンチャーキャピタルにとって急成長する中国スタートアップへの投資は魅力的である。米国半導体工業会はじめ多くの業界団体は、自由貿易を阻害する米国政府の規制に反対してロビー活動を行っており、米国政府も一方的な米国企業の対中取引規制や中国制裁をできない複雑な事情があるようだ。