BEENOSは11月10日、2021年の越境ECの消費動向を振り返って「BEENOS 越境EC 世界ヒットランキング 2021」を発表した。コロナ禍で国内外の人流が制限されてインバウンド消費が落ち込む一方で、越境EC市場は拡大しているという。デジタル化やオンライン化が進む中で、国や地域の間でヒットの時差が縮まっているとのことだ。日本が発信した商品のうち、海外では何が売れているのだろうか。
「イカゲーム」「呪術廻戦」のヒットに見る消費活動のグローバル化
以前のコンテンツ消費の流れを思い起こすと、アメリカで流行した映画が数カ月遅れて日本で上映されるような例も珍しくなかった。しかし現在では、NetflixやYouTubeなど大手プラットフォーマーの台頭によって、コンテンツの配信に時差がなくなりつつある。Netflixで世界同時配信された『イカゲーム』の世界的ヒットからもうかがえるように、多言語対応は今や当たり前となり、ボーダーレスなファンコミュニティによって世界的なヒットが生み出されている。
また、2021年に大きな話題となったアニメである『呪術廻戦』は世界最大級のアニメ配信サイト「クランチロール」でも配信され、日本との時差がほとんどないタイミングで海外でも大ヒットとなった。これに伴って、BEENOSが提供する海外代理購入サービス「Buyee」での関連商品の流通量も前年比214.55倍に拡大したとのことだ。
同社の代表取締役執行役員社長である直井聖太氏は、同社が開催したランキング発表会の中で「インターネット環境を利用してプロモーションを積極的に世界展開している企業のみが勝ち残っていると言っても過言ではないと思っている。現代は比較的安価に多くの国でコンテンツを展開できる時代になりつつあるので、積極的に活用してほしい」というコメントを残した。
トレーディングカードの購入理由は遊戯用から資産利用へ
BeeCruiseの執行役員である本間哲平氏は、日本企業の製品を海外ユーザーが購入したデータから算出した、越境EC世界ヒットランキングを発表した。なお、同社が今回発表したデータは、「Buyee」の購買データを基に計測しているとのことだ。
2021年の世界共通の消費傾向として「エンタメ」「ファッション」の2領域における消費が進んだようだ。動画配信サービスやインフルエンサーの活動によって、趣味や嗜好性の高い商品が人気となっている。また、資産価値の対象にも変化があり、トレーディングカードを投資の対象として購入する例が顕著に増加しているという。
地域別の消費傾向を見てみると、北米地域ではポケットモンスターやガンダムといった王道のコンテンツに対して、VTuberを提供するホロライブが割って入ったのが特徴的だ。また、カー用品や高級時計の伸長も話題だという。世界最大のEC市場を持つ中国や親日家の多い台湾などを含む東アジア地域では、世界の傾向と同様におもちゃやゲームの購入数が多いが、アンティークや陶磁器などの商品が上位に入る点がこの地域の特徴とのことだ。越境ECへの抵抗感が低く、越境ECでの買い物が日常に浸透しているのもこの地域の特徴である。
マレーシアなどを筆頭に、東南アジア地域ではECが当たり前の環境で経済成長を遂げてきた。日本ブランドへの安心感が強く、訪日の意向も高いという。マレーシアにおける時計の需要は根強く、2021年もその傾向は続いている。一方で、ヨーロッパはカルチャー志向が高く、音楽や釣り、ゲームなどの人気が高い。日本からの距離が遠く配送料が他地域よりも高いため、日本の越境ECを利用しているユーザーの年齢層も他地域と比較して高い傾向にあるとのことだ。
各地域に共通して高い人気を保っているのが「エンタメ」「ファッション」の2部門である。この2部門ではキャラクターやコンテンツ、世界観、コンセプトが明確であるブランドが世界的に売れているようだ。ブランドが持つ文化を上手に発信することで、ロングテールな人気にもつながりやすいという。日本だけでなく海外にも積極的に発信することで評価を獲得できれば、事業の成長も期待できる。
エンタメに着目すると、オタク消費の機運が高まっており、現提供品などのコレクターアイテムが購買につながりやすようだ。コレクター性の高い限定商品などは、一次流通だけでなくリコマースといった二次流通にもつながりやすく、越境ECとの相性が良いのだという。一方のファッションの人気が高まっている背景にあるのは、デザイナーズブランドによる明確なブランドコンセプトの発信だ。継続的なブランドコンセプト発信をインフルエンサーが拡散し、海外のコミュニティで人気が熟成する場面が拡大している。
「海外展開する際のリスクを懸念する企業も多いだろうが、デジタル化の波によって世界の垣根がなくなりつつある現在では、海外市場にチャレンジしないことによる機会損失リスクにも目を向けてほしい。世界の消費傾向を捉えて海外展開に挑戦すれば、事業成長は叶えられるはず」(本間氏)