2022年4月の改正個人情報保護法の施行を控えて、国内でも個人情報の取り扱いを重要視する機運が高まっている。また、ヨーロッパや米国カリフォルニア州などでもプライバシーに配慮したデータの取り扱いを求める声が強まっていることから、GoogleやAppleなどの大手プラットフォーマーも「Cookieレス」へ舵を切ると表明している。

こうした環境において、ブランドはプライバシーの保護やデータ管理といった制約条件をクリアしながらも、顧客とのエンゲージメントを築き、顧客ロイヤルティを高めることを重要としている。このような背景において、サードパーティCookieに代わるマーケティング手法として注目されているのがゼロパーティデータである。

そこで、ゼロパーティデータによって実現可能な顧客との接し方や今後のデジタルマーケティングのあり方などについて、消費者の趣味・嗜好に関するゼロパーティーデータを活用したマーケティングソリューションを提供する、チーターデジタルの副社長兼CMOである加藤希尊氏に聞いた。

  • チーターデジタル 副社長 兼 CMO 加藤希尊氏

プロフィール
広告代理店と広告主、B2CとB2B両方の経験を持つプロフェッショナルマーケター。外資系広告代理店(WPPグループ)に12年勤務し、2012年よりセールスフォース・ドットコムに参画。マーケティングオートメーションをはじめとした10以上のSaaSマーケティング製品の日本上陸を手がけ、AIやクラウドを活用したカスタマージャーニーの実現を啓蒙する。
また、国内100社のブランドが参加するマーケティング責任者のネットワーク「CMO X」を創設し運営。著書にその成果をまとめた『はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ (翔泳社)と、『The Customer Journey「選ばれるブランド」になるマーケティングの新技法を大解説』(宣伝会議) がある。

--まず、Cookieとはどのようなものですか

加藤氏:Cookieとは、Webサーバからブラウザに送られる小さなテキストデータのことです。Cookieがあることによって、ユーザーがいつWebサイトに訪れて、サイト上でどのような行動をとったのかをトラッキングできるのです。

一言でCookieと言っても、大きくはファーストパーティCookieとサードパーティCookieの2種類に分けられます。ファーストパーティCookieは自社ドメインが付与するもので、自社のWebサイトに訪れた利用者をトラッキング可能です、サードパーティCookieは、広告タグを利用して外部ドメインから間接的に付与されるCookieです。

ファーストパーティCookieが、自社サイト内でのユーザビリティの向上を目的に活用されるのに対して、サードパーティCookieはリターゲティング広告など、サイトを横断したユーザーの囲い込みに活用されます。

--なぜサードパーティCookieが規制されるのでしょうか

加藤氏:ユーザープライバシーへの懸念が大きいからです。自分が意識していないところで勝手に情報を抜き取られていることに対する不安はやはり大きいですね。実際に、カスタマーサポート宛てに、リターゲティング広告に関してデータ管理方法を不安視する声が寄せられる例もあります。

当社は以前、日本を含む6カ国の約5000名の生活者を対象に消費者マインドを調査しました。その結果から、Cookieを利用したリターゲティング広告に対して3分の2の方が不信感を抱いていることが明らかになりました。法律の改正による規制だけではなく、個人の意識も変わってきたことがうかがえます。

こうした背景を受けて、Webブラウザを提供する各プラットフォーマーも規制に向けた動きを見せています。GoogleはGoogle Chromeでユーザートラッキングを目的としたサードパーティCookieのサポートを終了すると表明しており、AppleはSafariでのサードパーティCookieの受け入れを完全にブロックすると発表しています。

  • GoogleやAppleなどの各プラットフォーマーは、サードパーティCookieを規制すると表明している

ですが、サードパーティCookieを制限してもターゲティング広告配信の手法はなくならないでしょう。Googleが今後提供する「プライバシーサンドボックス」は、個人を特定しないような形でセグメンテーションするとのことですが、従来のリターゲティング広告を代替する方法に成り得るか、今後の検証が必要です。

結局のところ、サードパーティCookieの利用が規制されても、ユーザーを追いかけるマーケティング手法が変わらない限りは不信感が高まるばかりであり、ユーザーが本当に求めているコミュニケーションにはなりません。