--それでは今後のマーケティングにおいて、どのような手法が必要でしょうか

加藤氏:ユーザビリティの向上と、情報の取り扱いに対するユーザーからの同意が必要になると思います。そうした観点からも、今後はゼロパーティデータの利活用が必要になるはずです。Webサイト上での行動データだけではなく、ユーザーの好みや嗜好に関する情報をデータベースにためていくのが、これからのマーケティングのあり方になるでしょう。

将来的には、サードパーティCookieがこれまで必要とされていた本質を捉えながら、ユーザーと正しい方法でつながるためのマーケティング設計が求められる時代になります。ゼロパーティデータの収集と活用は、そのための一つのソリューションになり得るはずです。

  • サードパーティCookieの本質的な課題を解決するために、ゼロパーティデータが有効だという

--ゼロパーティデータについて、詳しく教えてください

加藤氏:ゼロパーティデータとは、顧客が意図的かつ積極的にブランドと共有する情報です。ゼロパーティデータの中には購入意向や、顧客一人一人がどのように自分をブランド側に認識してほしいかといった情報が含まれます。

ファーストパーティCookieを含むファーストパーティデータとの大きな違いは、Webサイト上での行動やたまったポイントの使用履歴よりも詳しい情報が、顧客自身から得られる点です。顧客一人一人の好きな色や勤務時の服装のスタイル、ペットとして飼っている動物の種類など、さまざまな情報が該当します。

なぜゼロパーティデータが注目されているかと言いますと、顧客の趣味嗜好データを収集することでデータの価値が深まるからです。それに伴って、マーケティングが到達できる領域もさらに深く、広くなります。顧客に寄り添った提案ができるようになり、購買行動につながりやすくなる利点があります。

カスタマージャーニーを想像してください。顧客と企業の接点は複数あると思います。そのため、ゼロパーティデータとして収集する情報も限定的ではなく、ライフサイクルに関する多くの種類の情報が含まれます。

--どうしたら顧客は自分の情報を提供したくなるでしょうか

さきほど、サードパーティCookieへの不信感を持つ消費者が3分の2に相当するとお伝えしました。その一方で、自分に対するサービスが向上するのであれば、自分自身のデータを提供しても構わないと答える消費者は約50%でした。

  • サービスの向上と引き換えなら自分のデータを提供しても構わないと思う消費者は50%だという 資料:チーターデジタル「デジタル消費者トレンド調査レポート2021」

さらに、商品の先行販売や会員限定販売サービスの権利を得るために、自分の嗜好に関するデータを提供しても良いと考える消費者は約80%にも上ることがわかりました。マーケターの皆様は、従来通りのクーポン券やポイントの付与にとどまるのではなく、企業ごとに提供できる特別な体験は何なのか、棚卸ししてみることから始めるのが良いでしょう。

会員登録と引き換えに、単なるポイントやマイルなどを付与する施策は徐々に古くなってきています。顧客のステータスや取得する情報に基づいて、企業が目指すパーパスを一緒に体験できる活動や自社独自のユニークな旅行体験など、特典を設計し直さなければならない時代になりました。

これからは、短期的な売上増加のためのポイント付与だけでなく、ゼロパーティデータによって長期的に顧客とブランドが付き合っていくための取り組みが必要な時代です。従来は短期的な売り上げを得るための施策にしか顧客データが活用されませんでした。今後は、ロイヤル顧客を獲得して長く付き合っていくためのデータ活用が必要ですね。

  • カスタマージャーニーにおける複数の接点ごとに、どのような価値交換ができるのかを考える必要があるとのことだ