米国時間の9月24日、PCI-SIGとCXL ConsortiumがMOU(Memorandum Of Understanding:了解覚書)を取り交わしたことを発表した。今回のMOUの目的は、相互に関心のある分野で一貫した共同メッセージングやマーケティングを行うために、両組織間の連絡体制を確立するためのものとなっている。

もともとPCI-SIGはI/O Interconnectの仕様の標準化とその普及を行っており、まずPCI、ついでPCI-Xと来て現在はPCI Expressの標準化を進めており、PCI Express 5.0はすでに標準化完了。現在はPCI Express 6.0のDraft 0.71が会員に公開されてレビューを行っている段階であり、まもなくDraft 0.9がリリースされて予定となっている。

このPCI-Expressの物理層の仕様をそのまま利用しながら、Cache Coherencyを保つアクセラレータ向けの新しい論理層を載せたのがCXL(Compute Express Link)であり、2019年3月に突如発表されたが、この後CXL ConsortiumはPCI-SIGと同じようにオープンな形で運営が行われ始め、2020年に11月にはCXL 2.0の標準化も完了した。このCXLはIntelだけでなくAMDやArmもサポートの意向を示しており、この結果として2020年代のアクセラレータ向けI/Fの標準としてのポジションを急速に確立しつつある。

実際IntelのSappire RapidsはPCI Express 5.0とCXL 1.1の両対応のI/Fを搭載している事をすでに明らかにしており、同様の実装はArmベースのSoCやAMDの製品でも予定されている。こうなると利用者の側は拡張デバイスとアクセラレータカードのどちらもPCI Expressのスロットに装着するだけで良く、あとはOSの側がそのカードがI/Oデバイスなのかアクセラレータなのかを判断して適した方法で利用が可能になるという、便利な状況になっている。

こうした状況を考えると、両組織が共同でメッセージを出したりマーケティング活動を行うことは理に適っているのは間違いない。声明によれば両組織は共同でウェビナー、ワークショップ、ミーティング、プレゼンテーション、その他の業界イベントのための適切なトレーニングやプロモーションコンテンツの開発、特定の共同活動の調整、ブログ、記事、プレスリリース、ソーシャルメディアのコンテンツなど、特定のプロモーションおよびマーケティング活動といった事柄を共同実施してゆく予定とされる。

ちなみに今回のMOUはあくまでPCI-SIGとCXL Consortiumのみであって、Rambusが今年6月に発表したCXL Memory Interconnect Initiative」は、この対象外となると思われる(というか現状CXL Memory Interconnect InitiativeはRambusが提唱しているだけで、これに賛同するパートナーが現れないあたりでは、MOUの対象に入る訳もないのだが)。

今回のMOUをちょっと裏側から見てみると、実は今回の動きはアクセラレータ接続というよりも、もう1つの特徴であるMemory Attach I/Fの争いに絡んでいる部分が大きいように思われる。現在Memory Attach I/Fに関しては

  • OpenCAPI/OMI
  • CXL/Gen-Z/(CCIX)

という大きく2つのグループに分かれる。OpenCAPIはもともとIBMが始めたCAPIをOpen Standardとし、さらにこの中でMemory Attach I/FをOMI(Open Memory Interface)として標準化したものである。一方CXLは元々アクセラレータとメモリを接続するI/Fとして開発されている。同種の異なるI/FとしてGen-Zがあるが、実はCXL ConsortiumとGen-Z Consortiumは2020年4月にMOUを交わしており、両方の技術の相互接続性の確保に関して協力する事を発表している。

CCIXは今のところCXLとの互換性は無いが、当初の目論見からCCIXはやや後退し、現在はマルチプロセッサの接続といった、より複雑で完全キャッシュコヒーレンシが必要な用途向けにCCIXを、アクセラレータやメモリプールの接続にはCXLを、といった方向性になっている事を鑑みると、まぁCXL陣営に入れても構わないだろう。今のところOMIとCXLは技術的な方向性がまったく異なるので、相互接続性を考えられる段階にはなく、OMIを選ぶかCXLを選ぶか、といった感じになっている。こうした状況を考えると、今回のMOUは単にアクセラレータ/デバイスの接続に関する共同プロモーションの枠を超えて、Memory Attach I/Fの標準のポジションを獲得するためのマーケティングにもつながる、と見えるのは筆者の勘繰りすぎだろうか?