SEMIは9月14日(米国時間)、定期的に発行している世界の半導体工場に関する調査・予測レポートの最新版「World Fab Forecast Report 2021年第3四半期更新版」に基づき、半導体前工程製造装置(ファブ装置)への投資額が、デジタルトランスフォーメーション(DX)に代表される長期的技術トレンドを推進力として、2021年に900億ドルを超え2022年には1000億ドルに接近し、過去最高額を更新するとの予測を発表した。

半導体業界はいわゆる4年周期のシリコンサイクルをベースに、1年から2年の成長期の後に1年から2年の停滞もしくは後退期が訪れるのが通例で、それに併せて設備投資も行われてきた経緯があるため、2020年、2021年、2021年とファブ装置投資額の3年連続成長は特殊な状況となる。

前回、3年以上の連続成長が見られたのは、2016年から2018年の3D NANDの増産に起因したものであった。当時は、スーパーサイクル(下降局面のない長期にわたる上昇傾向)の到来などと一部では騒がれたが4年目には下落した。

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    半導体前工程製造装置の年間投資額の推移 (出所:SEMI、2021年9月時点の予測)

2022年のファブ装置投資が最も活発なのは事業分野はファウンドリで、440億ドルを上回る見込みで、2番目がメモリで380億ドル(DRAMが170億ドル、NANDが210億ドル)、そしてMCU/MPUが約90億ドルで、ディスクリート/パワーが30億ドル、アナログが20億ドル、その他が20億ドルとSEMIでは予測している。

また、国・地域別に見ると、韓国が300億ドルで最大となり、次いで台湾が260億ドルで追いかけ、中国が約170億ドルでそれを追う見込みである。4位は日本でほぼ90億ドル、以降、欧州/中東が80億ドル、南北アメリカが60億ドル以上、東南アジアが20億ドルという順の見通しとなっている。

また、最新のSEMIの調査によると、2021年以降に世界で129の前工程ファブが量産を開始すると見込まれているとする。

2023年以降もファブ建設ラッシュ

SEMIは2022年までの見通しを出したわけだが、実は2023年以降も半導体ファブの建設ラッシュが続くことが予想されている。例えば米国では、2024年ごろにアリゾナ州でIntelが2棟、TSMCが1棟のファブを稼働させる見込みである。TSMCはさらに数棟増設することを検討中だともしている。また、GlobalFoundriesはニューヨーク州にある既存のFab8隣接地に新たなファブ建設を決めており、すでに土地の取得も終えている。Samsung Electronicsも米国内に先端ファウンドリを建設することを近く正式に発表すると見られており、その候補地としてアリゾナ州やニューヨーク州など数か所が上がっているが、テキサス州が有力視されている。

欧州でも、Intelが2か所にファウンドリファブ建設を計画しているとしており、2021年末までにその建設場所を発表するとしている。EU政府としても、域内で製造される半導体の比率を現在の10%程度から2030年までに倍増させることを検討をしており、Intelのみならず、同地域の半導体メーカーにも工場建設を促している。

韓国でも、SK Hynixがソウルの南50kmの龍仁に120兆ウォン(約11兆円)を投じる巨大な半導体クラスター工業団地(SK Hynixのファブ4棟+半導体装置材料メーカー数十社)計画を立て準備を進めているし、中国でも、SMICが上海に月産10万枚規模(300mm)の巨大な半導体ファブを建設することを計画しているほか、Huaweiも半導体のファブ建設を計画しているという。ただし、中国では、多数の半導体工場建設計画が打ち上げられているが、それらが計画通りに実行されるか否か定かではないことが多い。

台湾でも、TSMCが2nmファブ(全部で4棟)の建設を新竹で2022年春より始めるほか、台湾南部の高雄で新たな半導体工場(当面2つのファブ)を構築する検討が進んでおり、近々発表される見込みだという。日本でも、TSMCが熊本に前工程ファブを建設する計画が具体的に検討されており、日本側と打ち合せを進めていることをTSMCは明らかにしている。

半導体製造装置・材料メーカーにとってまたとない黄金時代がしばらく続きそうである。