TSMCが、2023年にも熊本に前工程ファブを設置し、ソニーグループのイメージセンサを中心に受託生産を行う方向で最終調整に入り、2021年9月までにTSMC取締役会で正式に決定を目指すとNikkei Asiaが台北発の話題として報じている。

TSMCは、先般開催した投資家向けカンファレンスの席で「日本に前工程工場を設置する件はDue Diligence(事前調査検討)段階にある」と明言していた。海外生産は製造コストが台湾で製造するより高くつくのでコストギャップを最小限に抑えるように進出先の政府と交渉する必要があるとも述べていたことから、現在、ソニーや経済産業省がそのコストギャップをどのように補償してくれるのか交渉しているものとみられる。

また同社は、日本には「(最先端のロジックファブではなく)Specialty Fab」の建設を検討中であるとしている。

なお、1987年にTSMCを創業し2018年の引退後も台湾半導体業界はじめ経済界に影響力のある張忠謀(Morris Chang)氏が7月16日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)が非公式で開催したオンラインでの臨時首脳会議に台湾の蔡英文総統指名の台湾代表として参加し、世界各国が自国内だけで半導体サプライチェーンを再構築する動きについて、製造コストが膨らみ、自給自足の達成もおぼつかなくなると警鐘を鳴らした。そして「過去数十年に及ぶ自由貿易が半導体技術の発展を大きく後押ししてきた。製造技術の複雑化がサプライチェ―ンのオフショア化をもたらした。時計の針を戻して自国内だけでサプライチェーンを再構築しようとするいわゆる『オンショア化(Onshoring)』は、製造コストが上昇し、テクノロジーの進歩を鈍化させるだろう。国家安全保障上、軍事チップは自国で生産するにしても、民間の大量の需要に基づくチップに関しては、自由貿易に基づくサプライチェーンを維持するのが最善だ」と自由貿易の重要性を主張したという。