日産自動車とNTTドコモは7月19日、横浜みなとみらいおよび中華街エリアにて、一般モニター参加型の自動運転車両を用いたオンデマンド配車サービスの実証実験を2021年9月21日から実施することを共同で発表した。また合わせて、今回の実証実験に参加する一般モニター約200名の募集をインターネットにて開始したことも発表。モニター募集の期間は8月15日までで、参加費は無料だ。

実験の期間は9月21日から10月30日までで、日曜と月曜を除く8時30分から16時まで。車両台数は4台で、乗降ポイント数は23か所、配車予約はスマートフォン向けアプリからとなる(利用登録が必要)。また、一般モニターとして参加する場合はアンケートへの回答も必要だ。

少子高齢化に伴い、すでに地域によっては公共交通のドライバー不足の問題が顕在化している。その大きな課題解決のため、現在日本では国を挙げて自動運転技術の開発が進められている。こうした背景を受け、それぞれ課題解決のための技術の研究開発を続けている日産とNTTドコモは今回、両者が持つ技術を融合させ、自動運転サービスを目指すための実証実験を行うことにしたという。

今回の実験は、日産とDeNAが2017年から共同開発をスタートさせた自動運転交通サービス「Easy Ride」(イージーライド)と、NTTドコモが2019年に商用化したAIを活用したオンデマンド交通システム「AI運行バス」を組み合わせて行うというもの。

各サービスの内容だが、まずEasy Rideは、2020年代早期に本格的なサービス開始を目指している、“自動運転観光タクシー”ともいうべきものだ。これまで2回の実証実験が行われ、そのうち2018年に行われた1回は、一般モニター300名を募集し、日産グローバル本社から横浜ワールドポーターズまでの合計約4.5Kmのコースを往復運行した。今回はそのバージョンアップ版的な位置づけでもある。

Easy Rideの実験では、単に2地点間を往復運行する自動運転バスというわけではなく、ルート上の自動運転車両が停車して乗車・降車を行える乗降ポイントであれば専用モバイルアプリを利用して配車したり、目的地として設定したりすることが可能だった。そのほか、周辺の観光情報・イベント情報が車載タブレットに表示され、店舗のクーポンなども用意されており、横浜巡りができるようになっていたのである。なお、このときの車両は、自動運転機能が搭載されたEV「リーフ」が用いられた。

一方のAI運行バスは、NTTドコモがスマートモビリティ推進コンソーシアムの取り組みの一環として実証実験を2017年より行ってきたオンデマンド交通システムだ。複数の利用者からのリアルタイムで発生する乗降リクエストに対し、効率的な車両とルート(利用者の乗り合わせる組み合わせ)がAIによって算出されるというもので、“AI管理乗合タクシー”というイメージのシステムだ。2017年より実証実験で協力してきた九州大学伊都キャンパスでは、そのまま2019年4月から本格導入している(車両は自動運転ではなく、ドライバーがいる)。

今回の日産とNTTドコモの共同実証実験では、日産の自動運転車両を用いて、NTTドコモのAI運行バスが配車やルート設定などの管理をするというもの。将来の完全自動運転(すべての道路において自動運転できるシステム)によるMaaS(Mobility as a Service)をイメージさせる技術やサービスを一般モニターに体験してもらい、その実用性を検証することが目的とされている。

今回使われる車両は、日産の中型商用車「NV200」のEV仕様「e-NV200」(2019年に生産終了)に自動運転機能を搭載した車両が4台用いられる。なお、今回の自動運転システムは自動運転SAEレベル2相当であり、厳密には高度運転支援の範疇となる。車両は無人運転ではなく、非常時などに備えて自動運転車両の運転席にはドライバーが乗っており、一度に乗車できるのは3名までとなっている。

  • 自動運転

    今回自動運転車として使用される「e-NV200」の外観イメージ。日産の国内向け商用車ラインナップ中ではミドルサイズの車種で、タクシーなどにも使われている。台数は4台が用意される (出所:日産ニュースルーム)

ただし、通常はドライバーはステアリングやアクセル・ブレーキからも手足を離しており、運転そのものは車両自体(システム)が行う。タクシーではないため、ドライバーに目的地を伝えるのではなく、専用モバイルアプリで目的地を指定すればよく、あとは自動運転でそこまで連れて行ってくれるようになっている。

そして今回の乗降ポイントは2018年のEasy Rideの実証実験で得られたデータから9か所拡大され、合計23か所となった。そのいずれかであれば、自由に配車したり目的地として設定したりすることが可能だ。

  • 自動運転

    サービスエリアと乗降ポイントイメージ。乗降ポイントは23か所。この23か所であれば、配車することができ、また目的地として設定できる (出所:日産ニュースルーム)

またAI運行バスも、自動運転車両およびEVに対応するためのシステムアップデートが行われた。自動運転時のドアの開閉との連携や、車両の電池残量を考慮した配車制御などが新たに実装されている。配車予約では、目的地を地図から直接指定する以外にも、ショッピングや食事、観光などのカテゴリから目的地を選択することが可能だ。

  • 自動運転

    スマートフォンの専用モバイルアプリの予約画面イメージ。左がトップ画面で、右が予約画面 (出所:日産ニュースルーム)

なお、一般モニターに参加するにあたり、(1)事前説明会への参加、(2)参加同意書への同意、(3)乗車後および実証実験終了後のアンケートへの協力が必要となる。これらのアンケート結果は、実証実験を通じて得られた走行データや配車状況データなどと合わせ、さらなるサービス開発や今後の実証実験に活用する予定としている。

ちなみに今回の実験は、横浜市がIoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどを活用し新たなビジネスモデル創出による社会課題の解決を目指したオープンプラットフォームである「IoTオープンイノベーション・パートナーズ(I・TOP 横浜)」の取り組みの一環として行われる。また、「自動運転ロボット利活用サービス」として、神奈川県の「さがみロボット産業特区」における重点プロジェクトにも位置づけられている。

日産とNTTドコモは、両社の持つ最新技術の強みを活かし、誰もがどこからでも好きな場所へ自由に移動できるサービスの実現を目指していくとしている。