白熱電球の基本的な技術は、フィラメント素材のわずかな改良を除けば、1800年代後半以降ほとんど変わっていません。白熱電球を発明したのは誰かに関して、ジョセフ・スワンとトーマス・エジソンの両者にいろいろな説がありますが、商業的に成功したのは特許を取得したエジソンの設計でした。余談ですが、世界標準となったエジソンのネジ式口金(スクリューベース)は、当時流行していた燭台のサイズに合わせたものでした。

1900年代に入ると、白熱電球は安価で高品質、かつ安全な光をもたらし、私たちの家庭を暗闇から救い出しました。しかし、事務所や工場などの商業施設では、蛍光灯が普及したのは1940年代に入ってからです。蛍光灯の光は白熱電球と比べて硬かったので、家庭ではあまり使われませんでした。

しかし、蛍光灯は比較的技術進歩が速く、この時代には世界的に、白熱電球に代わるより効率的な技術が求められていたのです。照明技術者たちは、蛍光灯をより小形で安定したものにすることに成功しました。また、革新的エレクトロニクス技術によって、より魅力的な色を作り出すこともできました。さらに、短期間ですが白熱電球を永遠になくすために、蛍光灯が店頭に並んだこともありました。

LEDに光あれ

LEDライトは1960年代から存在していました。主にテレビのリモコンや、電子機器のスイッチのオン・オフ表示に使われていたのです。青色LEDが開発され、白色LEDライトが実用化されたのは1990年代に入ってからでした。

LEDは白熱電球に比べて発熱量が少なく、消費電力も少ないため長持ちします。一般的なLED電球は、消費電力1Wあたりの光量(lm/W)が90lm以上の効率を持っています。最新のものでは、効率が200lm/W以上と謳っている製品もあります。それと比較して、従来の電球の効率はわずか15lm/Wほどです。LEDも大部分の蛍光灯に比べて消費電力が少なく、一般的に55~60lm/W程度ですが、すぐに最大輝度に達するという圧倒的な利点があります。

LED技術への移行に拍車をかける主な要因は、EU、米国、カナダが非効率な照明の使用を禁止するなど、政府主導の政策にあります。また、インドなど一部の地域では、政府が地元メーカーへの税金や関税の減免を通じて、LED照明への切り替えを加速させています。しかし、製造コストの低下や価格の下落に伴い、従来型の電球を段階的に廃止していく上で、政府の決定が果たす役割は小さくなっていくと予想されます。2018年には、世界の家庭用LED電球の販売個数が蛍光灯を抜いて40%のシェアに達し、子供たちが「灯りが点くのが遅い」と不満をいっていたのも過去の話になりました。企業においても、これまで蛍光灯が主流だったところにも、LEDが採用されるようになっています。

LEDは消費電力が少ないため、電力線がない場所でも光を放つことができます。アフリカやアジアの一部では、太陽電池を利用したLEDが、日没後にクリーンで安全な照明となり、老若男女を問わずみんなの生活の質を向上させています。

さらなる効率低下

LEDには家庭用交流(AC)電源から直接給電することはできません。それよりも電圧がかなり低い直流電源が必要です。これには適切なドライバや他のパワーマネジメントデバイスを使用しますが、どうしても効率が低下してしまいます。

LEDの順方向電圧は電流と色に応じて2Vから4.5Vまで変化します。オン・セミコンダクターのような企業は、パワーマネジメントの専門知識を生かして、信頼性および効率の高いLEDドライバーを開発することで、LEDの採用を可能にしてきました。

オン・セミコンダクターのLEDドライバ「NCL30082」は、メインAC電源を定電流の低DC電圧に変換します。このデバイスは、高効率を達成し調光をサポートするPWM電流モードコントローラを内蔵しています。また、斬新な制御方式により、必要な外付け部品点数を減らすことができます。電力変換回路を構築するには、入力ブリッジ整流器とスーパージャンクションMOSFETを追加しますが、これらもオン・セミコンダクターから入手できます。

しかし、LEDドライバだけでなく、照明アプリケーションには他の部品も必要です。

オン・セミコンダクターのNUD4700のようなLEDバイパスシャントを使えば、ストリング内の1個のLEDが故障しても、残りのLEDを点灯させることを可能にします。

スマート照明

LEDの使用による効率化だけでなく、自動化やユーザー管理によって、さらなる節電が可能です。周囲の光量を検知するセンサを追加すれば、照明の明るさ自動的に調整することができます。人感センサーは、オフィス内で人の動きを感知すると照明を点灯しますが、さらに重要なことは誰もいなくなると消灯することです。

照明器具のエンジニアは、LEDをより賢く制御すること(これは「スマート照明」とも呼ばれる)にも長けています。これは業界標準のKNXRネットワークなどの電力線網や、ZigbeeやBluetoothなどの無線技術を用いて実現されます。例えば、日中は鮮やかに、夜はソフトに、といった具合に照明を調整することができます。エンジニアがスマート照明の設計を行って稼働させ、各種LED電源ソリューションと標準的な無線技術を組み合わせて試験するには、オン・セミコンダクターのConnected Lighting Platformが役に立ちます。

まとめ

製造コストの低下に伴ってLED価格が下がっていることに加え、ネットワーク技術も格段に安くなっています。そのおかげで、家庭用スマートLED電球が「かなり」手頃な価格で登場してきました。LED技術は比較的短い期間に飛躍的な発展を遂げました。今後も消費電力は確実に減少し、スケールメリットによって価格もさらに低下し、環境に優しい明るい未来が待っていることでしょう。

著者プロフィール

Ali Husain
ON Semiconductor
Corporate Marketing & Strategy