世界的に中間層が増え、自動車やHVAC、産業用ドライブの電動化が進むにつれ、電力需要は増加の一途をたどっています。各パワーステージ(発電、配電、変換、消費)における達成可能な効率に応じて、電力インフラ全体での負担増の程度が決まります。各ステージでは、効率が悪いと主な副産物として熱が発生します。多くの場合、この熱を除去、あるいは処理するには、さらに多くのエネルギーが必要になります。したがって、各ステージでの廃熱の発生を削減すると大きな効果が得られます。

パワーエレクトロニクスによって発生する熱は、主に変換ステージで生じるもので、大部分は導通損失とスイッチング損失に起因しています。半導体の効率が高いほど熱の発生が少ないため、エネルギーの浪費も減少します。効率が低い半導体によって発生する熱は使用に適さず、大部分が不要なものですが、半導体技術や半導体材料の絶え間ない改良による効率向上の結果、このような発熱も回避できるようになっています。

パワー半導体は進化を続けていますが、エンドマーケットのニーズに少なからず影響を受けます。今日、どのような垂直セクター、市場、またはアプリケーションであっても、独自の電力要件があります。最近でも、これらの異なるニーズは、ほぼ同じ基礎半導体技術であるシリコンFETで満たす必要がありました。すべてに同じ技術を使用すると、単にデバイスの限界により、アプリケーションに応じて損失に大小が発生します。1つの技術でどんな場合にも対応できるわけではありません。

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    図1:現在のパワー半導体技術は既存および新規すべてのアプリケーションに対応

現在、パワースイッチにはいくつかの異なる選択肢があります。パワーMOSFETは最も基本的なデバイスであり、主にブレークダウン電圧が200V以下のアプリケーションに使用されます。スーパージャンクションMOSFETは、パワーMOSFETを拡張したもので、比較的高速なスイッチング特性を備え、高電圧に対応できるように設計されています。IGBTはバイポーラトランジスタとMOSFETのハイブリッドとみなされ、スイッチング波形は遅くてもハードスイッチングトポロジーに適しており、高電力アプリケーションに使用されます。

現在、SiCやGaNなど、ワイドバンドギャップ(WBG)に大別される技術は、特定の電力アプリケーションに適用されるあらゆる基準において、シリコンFETやIGBTに匹敵するまでに成熟してきました。WBGの主な利点の1つは高周波で効率的にスイッチング可能なことであり、これは電源に使われる受動部品や磁気部品の小型化につながります。また、逆回復電流が比較的少ないため、さまざまな電源トポロジーにおいてダイオードの代用とすることができ、全体的な効率が向上するだけでなく、まったく新しい構成を実現することができます。

WBGパワートランジスタの開発により、OEMメーカーはスイッチングソリューションの選択肢が広がり、より高い効率と高電力密度を実現するための代替トポロジーが可能になります。このような選択肢の多さは、既存のアプリケーションにおいて有利なだけでなく、実際に電気を利用するまったく新しい方法を可能にしています。良い例がトーテムポール型PFCトポロジーであり、WBGデバイスを選択することで、より有用かつ実現性の高いものになります。

今日の多くの応用分野を見ると、ほとんどすべての分野でパワーエレクトロニクスに対する大きな需要があります。自動車業界では、ドライブトレインの電動化が進んでいます。ハイブリッド車や電気自動車の開発が進む中、車載バッテリ充電や電気モータの駆動に対応するために、AC-DC変換やDC-DC変換が必要になっています。電力インフラ全体で再生可能エネルギーが占める割合が大きくなっており、その割合は今後も増加していくと考えられます。太陽光発電では、比較的低い電圧の直流大電流を取り込み、交流に変換してより多様な送電系統で使用できるインバータが必要です。また、補完的な応用分野として、電力需要を安定させるためのバッテリ貯蔵の利用があります。この技術は、比較的短期間に発生する電力系統接続のたびに物理的に規定速度まで回転させる必要がある、効率の悪い石炭発電機やガス発電機に取って代わるものです。

電気を作る方法は、化石燃料から、太陽光、風力、波などの再生可能な「グリーン」エネルギー源へと移行しています。これらの自然エネルギー源は、これまでのエネルギー分野で使われてきたガスや石炭などの資源に比べて適合性が低くなっています。そのため、従来は1Wあたりのコストが高くなっていましたが、現在はその傾向が変わりつつあります。 パワーエレクトロニクスの効率化が進んだことが、太陽光や風力が化石燃料よりも低コストになってきた理由のひとつです。 WBGの登場と従来の半導体技術の継続的な進歩によって、再生可能エネルギーは現実的なものとなり、将来の電化システムでより大きな役割を果たすことになるでしょう。

効率化が原動力

電気的負荷が必要とする電圧や電流の大きさは、マイクロからメガまでの単位で表現されていることからも分かるように、きわめて幅が広くなっています。電気エネルギーが最終製品に到達した時点で電力レベルは最小になります。この制御された電力レベルの低下には変換が必要であり、送電における最終ステージとして前述しています。これは効率の観点からも最も重要と言えます。

稼動中の電源(発電機)と使用中のエネルギー消費機器(電子機器)の比率は説明できないほど大きなものです。業界では、IoTの一部として何百億もの機器が新たに導入されると予想されていますが、それに見合うだけの発電機数の増加は見られません。このトレンドを持続させるには、電力ライフサイクルの各ステージで効率化を推進することが重要となってきています。

IoTによってかなりの数の新型機器が登場することは間違いありませんが、現実としてはすでに多くの機器が稼働し、電力を消費しており、またそれと同様の数の機器が開発・製造されています。これらがすべてグローバルデータネットワークに接続されるわけではありませんが、何らかの形で国の電力網に負荷を与えるはずです。これらの機器の一つ一つが抱える非効率性は、日々刻々と失われる総電力量、すなわち熱として放散されるエネルギー量の原因となっています。用途に応じて最適なスイッチング技術を選択することで、これらの損失を最小限に抑えることができます。

電力アプリケーションに適したWBG技術の主な特性としては、比較的高い電子移動度、高ブレークダウン電圧、高温耐性、高バンドギャップエネルギーなどが挙げられます。これらの特性により、従来のシリコンベースのパワートランジスタよりも高い周波数でオン/オフできます。また、オン抵抗値が低いことも、熱による損失が大きい電力回路には欠かせない要素です。

例えば、GaNトランジスタはMHzの速度で数十kWをスイッチングすることができます。スイッチング周波数が高いため、GaNトランジスタはRFトランスミッタやアンプなどの用途にも魅力的ですが、GaNが電力回路に適しているのは高電圧を高速でスイッチングできるからです。同様に、SiCもまたスイッチングの速度と電圧の点でシリコンFETやIGBTを凌駕しています。両者の性能指数におけるクロスオーバーが限定されているため、SiCはGaN技術と競合するのではなく補完し合っており、どちらも高電力スイッチングアプリケーションでデザインウィンを得ています。

WBGの利点が無料で得られるというわけではありません。コストが比較的高いだけでなく、SiCとGaNは両方ともシリコンFETやIGBTとは異なるゲートドライバーソリューションを必要とします。幸いなことに、これらの技術のサプライチェーンは急速に展開されています。オン・セミコンダクターは現在、シリコンFET、IGBT、SiC、GaNを含むこれらすべての技術に関する戦略を確立し、併せてSiCとGaNの両方をサポートするために特別に設計したゲートドライバーを提供しています。

まとめ

エレクトロニクス業界では、エネルギー変換には常に熱という形である程度の損失が生じることがよく知られています。しかし、パワー半導体の高効率化が継続的に進むにつれ、業界ではインバータやコンバータのスイッチング損失を極限まで低減することが期待されています。現在、あらゆる用途でパワー半導体の搭載量を増やすことが要求されていますが、それと同時に高効率化も絶えず求められています。幸いなことに、オン・セミコンダクターは実現技術に継続的に投資を行うことによって、そのようなニーズに応えることができます。

著者プロフィール

Ali Husain
ON Semiconductor
Sr. Manager
Corporate Strategy & Marketing