元々はSamsung財閥系メディアとして創刊されたためにSamsungに甘いと言われる韓国日刊紙「中央日報」が4月19日付けで「世界の半導体戦争の中でSamsungのオーナー不在が惜しまれる」という社説を掲げた。

それによると、Samsung Electronicsは最近、米国に170億ドル規模の2番目のファウンドリ工場を建設することを検討しているが、グループのトップである李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は1月、韓国の朴槿恵 前大統領の知人女性に対する贈収賄事件での実刑が確定し服役中のため、弁護士との面会もままならず、投資決定が遅れてしまっているという。

米中の激しい経済戦争の下、Samsungの経営スピードに支障が生じると韓国経済全体に打撃があるため、韓国経済5団体のトップが李副会長の赦免を政府に公式建議として申し入れたが、中央日報の社説では、韓国大統領はこの建議に耳を傾けよと結論付けている。

さらに同紙は4月20日付けで「ファウンドリーで格差が広がりDRAM・NANDでは追われ…サムスンは大丈夫か」という記事も掲載し、Samsungをとりまく状況の厳しさを伝えている。

この記事では、「米中貿易対立によりファウンドリ事業が『ナッツクラッカー』の境遇に追いやられたSamsungが、メモリでもライバルから脅威を受けており、同社のシェア下落傾向が続いている」と指摘している。ちなみに、ナッツクラッカー(くるみ割り人形のようなナッツを抑え込んで殻を破壊する治具)とは、韓国でさかんに使われている比喩表現で、異なる2者の板挟みになる状態を指す。つまりこの文脈では、Samsungのファウンドリビジネスが、先進のTSMCと後進のSMICなどの中国企業の板挟み状態にある境遇を指すものとなっている。

また、SamsungはDRAM市場では1992年から、NANDでは2002年から世界トップを座を維持してきた。しかし、近年のシェアは下落傾向で、例えばDRAMシェアは4年連続で減少し、2016年の46.6%から2020年は41.7%にまで下落している(英OMDIA調べ)。Samsungのシェアが下落するということは競合のSK HynixやMicron Technologyがシェアを伸ばしているということになる。またNANDシェアも似たような状況で、2017年には38.7%あったものが2020年は33.9%まで落ち込んだ。この間、日本のキオクシアは16.5%から18.9%に、Micronは10.9%から11.4%にそれぞれシェアを拡大しており、中央日報では、Samsungと競合とのシェアが縮まったのは「技術格差」が減ったためだとして、いくつかの具体例を挙げて指摘している。

Samsungが史上最大規模の半導体投資を発表か?

最近、Samsungが韓国と米国において同社史上最大規模となる半導体への投資を5月にも発表するのではないかという見方が韓国内で浮上しているという。具体的には、5月下旬に韓国の文在寅大統領が訪米する予定で、その日程に合わせて、米国と韓国の工場に合計50兆〜70兆ウォン(約5~7兆円)規模の投資を、米国での2番目のファウンドリと、韓国の平沢で建設が進む第3工場(P3)へのEUV露光装置を中心に行うことを発表するのではないかと言われている。