2021年の設備投資費用を約280億ドル(3兆円超)としているTSMCだが、5GやHPC、DX(デジタルトランスフォーメーション)などの分野からの需要の増加に対処するため、さらなる半導体の生産能力拡大に向けて今後3年間で総額1000億ドル(約11兆円)を投資する計画であると台湾や米国の複数メディアが報じている。
TSMCのWei Zhejia社長は顧客に半導体の供給不足とTSMCの対応についての書簡を送り、その中でTSMCが過去12か月にわたって生産能力を増強し、稼働率も100%を超えているにもかかわらず、依然として(特に先端プロセス品の)需要を満たすことができていないとし、今後3年にわたって総額1000億ドルの設備投資を行い、生産能力を増強する計画を説明したという。また、同社は現在、数千人規模で技術者を募集しているほか、土地と製造装置の継続的な購入を進めており、TSMCが世界の信頼できる技術と生産能力のプロバイダーになることを約束すること、ならびに高度なプロセス技術の複雑化と材料費の増加に対応することを目的に、2021年12月31日から4四半期(1年間)にわたって製造受託価格の値下げを一切停止するとも伝えたという。
5GやHPCを中心とした技術トレンドの中で、今後数年間にわたって半導体に対する強い需要が続くとの見通しがはっきり見えてきたことから、生産能力の増強に向けた巨額投資を実施することを決断した模様だ。
すでに同社では約半世紀ぶりとなる深刻な水不足の影響を鑑み、台湾北東端に位置する多雨で水資源の豊富な宜蘭(ギーラン)県に新工場を建設するべく、用地を探している模様だと台湾メディアの中時新聞網が、半導体業界関係者の話として伝えている。
TSMCは100ha以上の土地を探しているとのことで、その広さから、宜蘭県庁の担当者はすぐに用地を見つけ出すことは難しいと見られている。この件についてTSMCの広報担当者は、宜蘭県に工場を建設する計画は今のところないとしつつも、同県にも科学園区(工業団地)が整備されていることから、いかなる可能性も排除しないで検討すると述べたという。
なお、台湾の半導体業界関係者によると、TSMCは長期的な生産能力確保のために、これまでの1年契約ではなく複数年の製造委託契約を顧客に求めている、という話もでている模様で、ますますTSMCの存在感が半導体業界の中で増す可能性が高まっている。