今秋始まる新しい宇宙飛行士の募集、応募者へのアドバイス

民間企業や民間人による低軌道への飛行が進む一方で、NASAをはじめ日本、欧州などは、国際共同による有人月探査計画「アルテミス」や、「ゲートウェイ」計画を進めている。

こうした動きを背景に、JAXAは今秋から、新しい宇宙飛行士の募集を予定している。

応募しようとしている人に「どういった人が宇宙飛行士になれるのか?」というアドバイスを、と問われた星出宇宙飛行士は「『失敗すること、チャレンジすることを恐れない人』ですね」と回答。

「誰でも失敗はするもので、私も宇宙飛行士の訓練の中で失敗することが多々ありましたが、そこから多くのことを学びました。だから、失敗やチャレンジを恐れないことが大事です」と語った。

また、「宇宙飛行士は大きなチームの一員として活動します。宇宙飛行士としてのチームもあれば、地上の管制・運用、訓練担当の人々も含めたチームでもあります。ですからチームワークが取れることも大事です」とも語った。

ちなみに星出宇宙飛行士は、宇宙飛行士の募集に3度応募し、2度落選。3度目の挑戦でようやく選ばれたという過去を持つ。最初は大学在学中、応募資格がなかったためNASDAに直談判するも応募を断念。2度目は1996年で、最終選考で落選。ちなみに、このとき選ばれたのは野口宇宙飛行士だった。そして1999年、ついに念願叶い、宇宙飛行士の候補者として選ばれた。

この経験を踏まえた想いやアドバイスを問われた星出宇宙飛行士は「諦めなかったから宇宙飛行士になれたのかなと思いますし、夢を追いかける大切さを感じます」と回答。

そして「その一方で、ただやみくもにがんばるのではなく、落選したときも『なぜ落ちたのか』と自己反省し、修正をかけていくことも大事だと思います」と語った。もっとも、「なぜ私が宇宙飛行士に選ばれたのか、その理由は教えてもらえないので、どういった反省や修正が役に立ったのかはわかりませんが」とも語り、笑いを誘った。

そんな苦い経験も経て宇宙飛行士になった星出宇宙飛行士。なる前となったあとで印象や考えに違いはあったのかと聞かれると「宇宙飛行士に選ばれる前、NASDAで宇宙飛行士の近くで仕事していましたから、どんな訓練をするのかや、宇宙に飛び立つまでにどんな仕事をするのかといったことは、横で見てわかっていたつもりでした。ですが、実際に自分で訓練するようになると、教えてもらったことを自分のやり方に落とし込んで身につけるのが非常に大変でした」と振り返った。

そして、「宇宙飛行士という仕事は、非常に華々しいと思われるかもしれませんが、地上の普通の仕事と同じように、見えないところでいろんなことを努力しないと成功しないものだと思います」と語った。

また、選抜や訓練でそれほどの苦労をする価値や、宇宙飛行士という仕事の醍醐味は? と問われた星出宇宙飛行士は「宇宙というなかなか行けないところ、特殊な環境の中で仕事ができるということが魅力ですね。そして、いろんなバックグラウンドや考え方、そして夢を持っている人と一緒に仕事ができるところが一番の醍醐味です」と回答。

そして「これから、さらに幅広いバックグラウンドの人材が必要になってくると思います。いろんな人が異なるバックグラウンドを持ち寄ることで、強いチームになれる。だからぜひ、いろんな人に積極的に応募してもらいたいです」と、応募を考えている人にエールを送った。

  • 星出宇宙飛行士

    SSATA(Space Station Airlock Test Article)チャンバにて船外活動(EVA)に関する訓練を行う星出彰彦宇宙飛行士 / NASAジョンソン宇宙センター(JSC)/ 撮影日:2020年12月15日(日本時間) (C) JAXA/NASA

「いつか色んな人と月に行きたい」

さらに今年は、宇宙飛行士だけでなく、民間人による宇宙飛行も活発になろうとしている。

これについて星出宇宙飛行士は「これからは私たちのような職業宇宙飛行士だけでなく、一般の方を含め、いろんな、そして多くの人々が宇宙を飛行する、宇宙に進出する機会が広がっていくでしょう。そこから新しい知見、文化が生まれるのではないかと期待しています」と述べた。

新しい宇宙飛行士が誕生し、民間人が宇宙へどんどん進出しようとしている中で、星出宇宙飛行士はこれから先、どのような活動をしていこうと考えているのだろうか?

そう問われた星出宇宙飛行士は「まずは今回のミッションをしっかりやり遂げたいと考えています。その先、火星はちょっと世代的に難しいかもしれませんが(笑)、月は目指していきたいと思っています」と想いを述べた。

星出宇宙飛行士らは4月22日以降に宇宙へ飛び立つ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、訓練や打ち上げ準備も困難な状況の中で行われている一方、有人月・火星探査という未来に向けた動きも始まりつつある。この良くも悪くも激動の中、無事のミッション成功と、それが明るい未来へとつながることを願いたい。

  • 星出宇宙飛行士

    会見する星出彰彦宇宙飛行士 (C) JAXA

参考文献

JAXA | JAXA星出彰彦宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在 搭乗機決定について
JAXA | 星出宇宙飛行士 ISS長期滞在ミッション特設サイト
星出彰彦:JAXAの宇宙飛行士 - 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター - JAXA