NXP Semiconductorは2月25日、同社のプロセッサ製品へのTSN対応を発表すると共に、これのCC-Link IE TSNへの対応も明らかにした。これに関する記者説明会がオンラインで開催されたので、その内容をご紹介したい。
元々同社は現在LPCやKinetisといったMCUからi.MX/Layerscapeといった高性能MPU、その間をつなぐi.MX RTといった豊富なプロセッサ製品のラインナップを誇るが(Photo01)、今回このi.MX RT以上のクラスにTSN機能を搭載することを明らかにした。
また同社は車載向けに「SAJ1105T」というTSN対応Ethernet Switchを発表している。これはあくまでも車載向けという位置づけで汎用品ではなかったが、昨今では産業向けにTSNが本格的に使われてきており、それにあわせてLayerscape LS1028Aが2017年に発表された。
これはTSNのEnd point×1に4ポートのTSN Switchを組み合わせた製品であった。今回はこれに加え、まさに今月量産を開始した「i.MX RT 1170」、そして今四半期中(=3月)に量産を開始する「i.MX 8M Plus」が、やはりTSN Endpoint×1を搭載することを明らかにした形だ(Photo02)。
ちなみにNXPそのものは、特定のIndustrial Protocolに特に肩入れする訳ではなく、TSNの上に構築される多数のIndustrial Protocolを等しくサポートする、という立場にある。
またTSNといっても実際には多数の規格のいわば集合体であるが、i.MX RT1170はEndpoint向け規格を、LS1028AはEndpoint向け+Switch向け規格をすべてサポートしているとされ(Photo04)、TSNをベースとしたIndustrial Protocolは「変なことをしていなければ」そのまま動作するとしている。
さて、ではCC-Link IE TSNのサポートは? というと、これがport industrial automationの提供するNetwork StackおよびICCツールを利用する形で可能になる(Photo05)。もともとこうしたIndustrial Networkの場合、地域性が強い。CC-Linkは日本の顧客に好まれるが、欧州だとOPC-UAがメインになっており、これを全部カバーするのは労力としても見合わないという判断だったのかもしれない。
NXPとしてはCC-Link IE TSNのサポートを得たことで、これで本腰を入れてi.MX RT 1170やLS1028Aを産業機器向けに投入できる様になり、さらにi.MX 8M Plusの投入で幅広い産業分野での採用を見込みたい、という意向と思われる。確かにこれまで産業機器向けの分野で決して強いとは言えなかった同社だけに、これで巻き返しを期待しているようだ。