IC Insightsが2020年12月時点に調査した各国・地域ごとのIC生産能力の結果をまとめた「Global Wafer Capacity 2021-2025」によると、日本は月産328万枚(200mmウェハ換算)で世界に3番目だという。

1位は台湾の月産445万枚(同)、2位は韓国の月産425万枚、そして4位は月産218万枚の中国となっているが、最先端プロセスとなる10nm未満での生産に対応しているのは台湾と韓国だけで、米国はIntelの長期にわたるプロセスの開発遅延の影響から10nm未満の生産能力は2020年末時点では皆無となっている。また、韓国はSamsung Electronicsだが、こちらもEUVを用いた最先端プロセスの歩留まりが低迷しているようで、結果としてこうした最先端プロセスは歩留まりが安定しているTSMCに注文が殺到する事態となっている。

また、日本がほかの国・地域と大きく異なるのが、40nm~20nmプロセスの生産能力が皆無であるという点である。代わりに10nmクラスのプロセスの割合が大きいが、これはキオクシアとWestern DigitalのNAND製造拠点が日本に集中しているためで、ロジックが対応しているというわけではないことに注意が必要である。つまり現状、日本国内には40nm未満のロジックを製造する施設がないということとなる。

日本の半導体企業は、2007年のソニーの40nm未満の半導体プロセスを用いたロジック製造から撤退するという宣言を皮切りに、次々と各社がロジックでの微細化を諦め、外部委託へと切り替えていった経緯がある。たらればの話だが、現在の半導体の活用範囲の広がりと先端プロセスを用いたロジック需要の高まりをみれば、各社が先端プロセスへの投資を維持し続けていれば、と思えてくる。

そうした背景の1つに、現在の車載半導体の供給不足が挙げられる。現実問題、現在の車載半導体の製造の多くが台湾企業に依存していることが浮き彫りになっているためである。

米中をはじめ、半導体を消費する各国・地域がさまざまな理由で半導体の自給自足体制を敷こうという動きを見せている中、日本も何らかの対応を取っていく必要性に早晩迫られることになるものと思われる。一部の報道で、ルネサス エレクトロニクスがTSMCに製造委託を行っていた車載半導体の一部をひたちなかの自社300mm工場の遊休状態になっていた生産ラインに戻す、という話が出ているが、同工場は40nmプロセスまでしか対応していないため、生産ラインを再稼働させても、40nmプロセスまでの品目が製造されるだけであり、40nm未満の先端プロセスに関しては、相変わらずTSMC頼みが続くことになる。

  • Global Wafer Capacity 2021-2025

    2020年12月時点の国・地域ごとのIC生産能力のプロセス別割合 (出典:IC Insights、Global Wafer Capacity 2021-2025)