既報のように、インターステラテクノロジズ(IST)は1月26日、観測ロケット「MOMO6号機」(名称:TENGAロケット)のプロジェクト概要を発表した。MOMOは現在7号機が延期中だが、その後の今年夏頃に打ち上げられる予定。6号機では初めて、ペイロード(荷物)の回収ミッションに挑み、フェアリングの開頭機能などを新たに搭載するという。

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    観測ロケット「MOMO6号機」(TENGAロケット)のイメージ (C)IST

MOMOは、全長約10mの観測ロケット。推進剤としてエタノールと液体酸素を使用する単段式の液体ロケットで、30kg程度のペイロードを搭載する能力がある。これまでに5機が打ち上げられ、2019年5月の3号機では初めて、高度100kmを突破。日本の民間開発のロケットとしては、初の宇宙到達を実現した。

6号機のスポンサーとなったのはTENGA。記者会見には、同社の松本光一・代表取締役社長が出席し、「我々は、“性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく”をビジョンに、タブー視されがちな性をポジティブなものにしようと挑戦してきた」とコメント。「国や人種の違いを超えて、宇宙から愛と自由を叫びたい」と意気込みを述べた。

今回のミッションは以下の3つ。

1. TENGA MESSAGE POD

一般から募集した1,000人分のメッセージをPODに入れて宇宙に届ける

2. SPACE TENGA ROBO & DOG

TENGAロボのフィギュア(10cm程度)が搭乗し、宇宙空間から地球へ帰還する

3. SPACE TENGA

宇宙用TENGAの開発を視野に、データ計測用のTENGAを搭載する

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    MOMO6号機の3つのミッション (C)IST

3つの中でも注目は2番目のミッションである。これは、MOMOとしては初の回収ミッションとなる。MOMOは観測ロケットのため、宇宙に到達してもすぐに落下してくるものの、実験機器や記念品を回収したいというニーズは大きい。これが実現すれば、今後の大きな訴求点となるはずだ。

MOMOは4号機において、紙飛行機を放出するというミッションがあった。4号機は宇宙に到達しなかったため、これは実行されなかったが、今回の放出機構はこれをベースに、改良したものになるという。

今回の6号機では、この回収ミッションのために、フェアリングに開頭機能を追加する。フェアリングの開頭後、宇宙空間に放出されたTENGAロボは、降下中に減速用のパラシュートを展開。海上に着水後、回収される予定だ。TENGAロボにはシーマーカー(海面着色剤)が搭載されており、海面の変色を目印にする。

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    会見には、なぜかTENGAロボも登場。「宇宙は初めてなので緊張している。名誉なことなので頑張りたい」と述べた

追跡のためのGPSやビーコンなどは、スペースなどの都合で搭載できなかった。基本的には、軌道計算で落下地点を予測し、シーマーカーを頼りに探すことになる。

同社は先日、衛星ビジネスを手がける新会社「Our stars」の設立を公表した。そこで発表したミッションの1つに、「宇宙実験用衛星・回収カプセル」があったが、軌道上から回収するには、耐熱機能や追跡機能などさまざまな要素が必要になる。今回の回収ミッションはシンプルなものの、そのための第一歩になると言えるだろう。

MOMOの回収ミッションのためには、開頭機能や放出機能などを追加する必要があるため、その分、実質的なペイロード重量は小さくなる。ただ、MOMOは改良型(v1)への改修を進めているところで、打ち上げ能力の強化も見込まれている。最終的に、v1でどのくらいのペイロードを回収できるようになるのかは、今のところ未定とのこと。

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    MOMO6号機のモックアップ。TENGAの単独スポンサーとなるため、全面的にデザインされている

そのほか6号機では、オンボードカメラからの映像のリアルタイム中継も検討しているという。これまで、オンボード映像は打ち上げ後に公開される形だったが、特に今回のような放出ミッションであれば、リアルタイム中継があるとさらに盛り上がるだろう。こちらも楽しみにしたいところだ。

6号機の前には、7号機の打ち上げも予定されている(MOMOの機体ナンバーは受注順のため、打ち上げの順番は前後することがある)。同社はv1の機能を段階的に実証していく計画で、それぞれの機体でv1の機能がどこまで盛り込まれるかも注目していきたい。

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    右から、ISTの稲川貴大・代表取締役社長、堀江貴文・ファウンダー、TENGAの松本光一・代表取締役社長

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    クラウドファンディングのリターンでは、エンジニアユニフォーム、Tシャツ、TENGAロボなどを提供予定