宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月24日、小惑星探査機「はやぶさ2」に関するオンライン記者説明会を開催し、キュレーション作業の状況について説明した。サンプルキャッチャーは、B室とC室の開封作業も実施。A室より大きなサンプルが見つかった。またカプセル回収班がオーストラリアより帰国、現地での活動について報告を行った。
「小石」サイズのサンプルを確認!
はやぶさ2のサンプルキャッチャーについては、1回目タッチダウンで使われたA室の開封がすでに行われており、中から大量のサンプルが見つかっていた。その後、JAXAでは順調にキュレーション作業が進み、同21日には、続いてB室とC室を開封。2回目タッチダウンで使われたC室からも、大量のサンプルが発見された。
A室とC室のサンプルで、明らかに異なっていたのは、C室の方がサイズが大きいということだ。驚いたことに、中には最大1cmほどという、もう「砂」ではなく「小石」と呼べそうなものまであった。小惑星リュウグウは局所性が小さく、どこも似たような場所と言われていたが、サイズがこれほど違ったのはなぜか。
結論は今後の分析を待つ必要があるが、キュレーションを担当する臼井寛裕氏(JAXA宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 教授)は、C室の方は「着地点が岩盤で固かった可能性」を指摘する。
はやぶさシリーズは、着地の瞬間に弾丸を発射して、舞い上がったサンプルを回収する方式を採用している。この方法には、地表が細かい砂でも、硬い岩であっても対応できるというメリットがあるのだが、もし岩であれば弾丸で砕かれた破片が多く入っていても不思議ではない。
2回目のタッチダウンでは、衝突装置(SCI)で作成した人工クレーターのそばに着陸しており、狙い通り地下物質を採取できたのかどうか、気になる人も多いだろう。ただ、これについては、現時点ではまだなんとも言えない。科学分析が必要なので、もうしばらく待つ必要がある。
なお前回の会見で、臼井氏はB室/C室の開封について、「年明けになる」との見通しを示していた。かなり前倒しになり、JAXAからの思わぬ“クリスマスプレゼント”になったが、予定が早まったのは、作業が順調だったからだという。
「前回は、サンプルが予想を遙かに超える量だったため、スケジュールに遅れが出ないか不安もあって、作業の見直しを検討していた状況だった」と臼井氏は説明。しかし、サンプルの粒子が硬くて扱いやすいなど、キュレーション作業にとっては好条件があったため、順調に3部屋すべてを開封できたとのこと。
C室に人工物? 気になる正体は……
ところで、C室の写真を見ると、銀色の人工物らしきものが混じっていることが分かる。この正体についても、詳しくは今後の分析待ちとなるが、サンプラー担当の澤田弘崇氏は、「サンプラーホーンをカバーしているアルミ箔では」と推測する。
弾丸を発射する「プロジェクタ」(射出装置)は、サンプラーホーンの根元の外側に設置されている。弾丸は、サンプラーホーンのアルミ箔を突き破って内部に撃ち込まれるため、このときに千切れた破片が紛れ込む可能性がある。ただ、これは事前に想定されており、アルミは高レベルに洗浄済み。他のサンプルの分析に影響が及ぶことは無い。
なおB室の開封結果だが、ここからは、肉眼で見える粒子が無数に見つかったという。しかしA室とC室に予想を超える量のサンプルが入っていたため、作業としてはそちらが優先となる。B室の作業は、A室とC室が終わってからになるので、かなり後になりそうだ。
ところで、オーストラリアでのカプセル回収時、「振ってみればサンプルが入っているかどうかすぐ分かるのでは」と思った人もいるだろう。貴重なサンプルが割れてしまう恐れがあるため、気軽に振るわけにもいかないのだが、早く知りたかったのはJAXAも同じだったようで、現地での裏話が1つ紹介された。
前述のように、カプセルは慎重に扱わないといけないのだが、現地での作業において、どうしても何回かは上下をひっくり返す必要があった。どうせなら、このタイミングで内部の音を計測してみようということで、サンプルコンテナに高性能マイクを貼り付けておいたという。
録音されていたのは、中で何か硬いものが移動するような音。現地での作業は忙しく、この音について議論する余裕は無かったそうだが、一般的なC型隕石の経験からすると、このような硬い音は想定外だったという。
ただ、実際に硬くて大きなサンプルが中から出てきたので、このサンプルの音が正しく捉えられていた模様だ。今回は「試しにやってみた」というところだが、もしかすると次のサンプルリターンでは、正式な手順になることもあるかも?