半導体業界は現在、上流であるTSMCやUMCといった主要ファウンドリがフル稼働で生産を続けており、下流のOSA業界の生産能力も不足をきたすほど活況を呈している。そのため、ファウンドリでの生産量を確保するために各社がせめぎあっており、台Phisonや台Silicon MotionといったNANDコントローラIC専業サプライヤは、クライアントからの増加する需要に十分に応えることができていないのみならず、多くのサプライヤが新規受注を一時的に停止する事態に陥っているとTrendForceが伝えている。
また現在、NANDメーカーとモジュールサプライヤは、2021年第1四半期の契約をめぐる重要な時期にあるが、NANDコントローラICサプライヤは値上げを検討しており、その値上げ幅は15〜20%程度になる可能性があるともしている。
eMMCは需要大幅増も供給は減少傾向
NAND製品の需要に関しては、64GB以下の中および低メモリeMMCに対する需要が、Chromebookやテレビの需要増に併せて大幅に増加しているという。しかし、NANDメーカー各社はeMMC用のNANDのプロセス技術の更新をほとんど停止したままで、従来の2D NANDならびに64層3D NANDプロセスを活用している模様だ。
とはいえ、NANDメーカー各社はそうした古いプロセスの生産量を徐々に引き下げており、eMMC製品をクライアントに直接供給する意欲が低下しているとされている。その結果、クライアント各社は、NANDとコントローラICを調達できるメモリモジュールハウスからeMMC製品を大量に調達する必要が生じ、供給ひっ迫に拍車をかける結果となっているという。
コントローラICの値上げでChromebook用eMMCモジュールの値上げへ
現在、NAND市場全体は供給過剰であり、価格は軟化傾向にあるが、中低メモリ容量のeMMCは、コントローラICが足りないことによって供給がタイトになっており、それでも入手しようとすれば高い価格のコントローラICを入手する必要があり、結果として2021年第1四半期に価格が上昇する可能性が高いとTrendForceは指摘している。
SSD市場は、Samsung Electronicsなどの主要なNANDメーカーもブランド展開しているが、多くのSSDメーカーは、長期契約の下でファウンドリに独自開発したコントローラICを製造委託しているため、現時点ではその値上げや供給不足といった話は出ていない。しかし、TrendForceでは、ファウンドリでのSSDコントローラICのリードタイムが長引いていることを確認しているという。
さらに、外部のIC設計会社にアウトソースされたSSDコントローラICのシェアが、少なくともPCIe 4.0対応SSDに関しては増加しており、今後、SSDコントローラICの価格が外部のICサプライヤの状況に影響される可能性が高まっているとも指摘している。