米国航空宇宙局(NASA)は2020年12月10日、有人月探査計画「アルテミス」で月に降り立つ、最初の18人の宇宙飛行士を発表した。

この18人は「アルテミス・チーム」と呼ばれ、2024年の有人月着陸を皮切りに、10年後までに持続可能な有人月探査を確立する役割を担う。

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    アルテミス計画において、月の南極で探査活動を行う宇宙飛行士の想像図 (C) NASA

アルテミス計画とは?

アルテミス計画は、NASAが進めている有人月探査計画で、実現すればアポロ計画以来、半世紀ぶりに人類が月に降り立つことになる。

現在のところ、まず2021年に無人での月飛行試験「アルテミスI」を実施。続いて2023年に有人で月のまわりを回る飛行試験「アルテミスII」を実施。そして2024年に「アルテミスIII」で月の南極へ宇宙飛行士を送り込むという計画となっている。また並行して、月を周回する宇宙ステーション「ゲートウェイ(Gateway)」も建造される。

その後の計画はまだ正式には決まっていないが、アポロ計画のように月に行って帰ってくるのではなく、ゲートウェイを拠点に、宇宙飛行士が交代でつねに月に滞在し、探査活動を継続的に行うことが計画されている。さらに、得られた技術やノウハウを活かし、2030年代には有人火星探査を行う構想もある。

今回発表されたのは、アルテミス計画の初期段階の飛行に参加するNASAの宇宙飛行士18人で、アルテミス・チームと呼ばれる。全員が男性だったアポロ計画とは異なり、半数が女性で、また同じく半数が現時点で宇宙飛行を経験したことのない、新人の宇宙飛行士が含まれている。さらに人種や生まれ、性などもばらばらで、多様性の高さが特長となっている。

また、医学や生物学のバックグラウンドをもつ宇宙飛行士も多く、月や火星にこれまでにないほど長く滞在したり、過去に生命がいた可能性がある火星を探査したりといったことを視野に入れたものであることが伺える。

なお、各々のミッションへの割り当てや飛行時期など、詳細は後日決定するという。

選ばれた18人の宇宙飛行士は、民間企業と協力して月着陸船を開発したり、訓練の開発を支援したりなど、ハードウェアや技術の開発の定義づけやコンサルティングを行い、アルテミス計画をサポートする。また、アルテミス計画やNASAの広報も務める。そして2023年以降に順次、月へと旅立つことになる。

今後も必要に応じて、他の宇宙飛行士をチームへ追加していくという。また、欧州やカナダ、日本などの宇宙飛行士も追加していくことになるとしている。

NASA宇宙飛行士のチーフを務めるパトリック・フォレスター宇宙飛行士は「月への帰還に向けては、多くのエキサイティングな仕事が待ち受けています。月面を歩くということは、私たち全員にとって夢のようなことであり、それを私たちが実現できることは大変な名誉です。今回選ばれた18人を誇りに思います。この誰もが、アルテミス計画で素晴らしい仕事をしてくれることでしょう」とコメントしている。