市場動向調査会社である富士経済は、2020年2月に「2020年版 次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望」を発行したが、2020年7~8月に改めて市場調査を実施。新型コロナウイルス感染症の影響を含んだ修正版を改めて発行し、市場見通しを下方修正したことを明らかにした。

修正版によると、シリコンパワーMOSFETの2020年市場見込みは、2020年2月時点の予測である前年比3.9%増から、8月時点では同8.5%減の7054億円規模へと下方修正されている。新型コロナの影響から、自動車・電装分野や民生機器分野、産業分野での需要が減少したことが大きな要因だという。

また、SiCパワー半導体市場見通しは、2020年2月時点では、同16.5%増と予測していたが、8月時点では同13.1%増の493億円へと下方修正された。SiC関連は、新型コロナ禍でも、積極的に開発が進められ、サーバ電源向けを中心に堅調な成長が期待できるという。一方のGaNパワー半導体市場は、新型コロナの前後で市場規模は変わらず、同10.5%増の21億円のままと予測されているる。

主要なSiパワー半導体市場動向

パワーMOSFET

  • 富士経済

パワーMOSFETは、自動車・電装分野や民生機器分野を中心に採用されている。2020年の市場規模は2月時点で前年比3.9%増の8007億円が見込まれていた。しかし、新型コロナの影響により、自動車の生産台数が減少し、自動車・電装分野の需要が落ち込んだほか、民生機器分野や産業分野などでも需要の減少がみられた。一方、5G通信やテレワークの普及によりサーバ電源向け需要は堅調であったが、自動車が産業向けでの落ち込みをカバーするまでには至らず、8月調査版では同8.5%減の7054億円となることが見込まれている。

2021年以降は自動車・電装分野の需要回復などが期待され、48V系や電動化の進展によるDC-DCコンバータやオンボードチャージャ向けが増えていくことで、緩やかな拡大が続くとみられるが、2月時点の市場予測までには至らず、2030年の予測は1兆2060億円から1兆960億円へと下方修正が行われている。

パワーモジュール(IGBTモジュール、インテリジェントパワーモジュール)

  • 富士経済

IGBTモジュールは産業分野と自動車・電装分野、インテリジェントパワーモジュールは民生機器分野を中心に採用されている。

2020年のパワーモジュール市場は2月時点では同4.7%増の4358億円と予測されていたが、設備投資の抑制などにより産業分野の需要が落ち込み、自動車・電装分野などの需要も低迷したことから、8月時点版では同8.2%減の3819億円へと下方修正されている。

IGBTモジュールはエネルギー分野や電鉄車両分野におけるプロジェクトの遅延などがみられたものの需要は底堅く、インテリジェントパワーモジュールは中国の省エネ規制強化に伴うエアコンのインバータ化による需要が期待されることから、2021年以降は再び市場が拡大していくことが予想されるという。ただし、富士経済は2030年の市場予測を従来の7080億円から6140億円へと下方修正している。

次世代パワー半導体の世界市場

SiCパワー半導体

  • 富士経済

SiCパワー半導体は、民生機器分野、情報通信機器分野、自動車・電装分野などの各アプリケーションで採用されている。

2020年の市場は2月時点では同16.5%増の508億円が見込まれていた。8月修正版では、新型コロナ禍にあっても、積極的に開発が進められていることや、サーバ電源向けの需要が堅調であり、新型コロナの影響も鉄道車両など一部用途に限られていることから、成長率は鈍化するものの成長そのものは続くと見られ、同比13.1%増の493億円としている。

今後は、パワーMOSFETやパワーモジュールと同様に、自動車・電装分野のオンボードチャージャや駆動用インバータモジュールなどでの需要増加によって、2030年に1852億円へと成長することが予測されている。

GaNパワー半導体

  • 富士経済

GaNパワー半導体は、サーバ電源などの情報通信機器分野、ACアダプタなどの民生機器分野で主に採用されている。現状は開発やサンプル評価が主なことから、新型コロナの影響による需要減少などはみられず、2020年の市場は同10.5%増の21億円が見込まれている。今後も情報通信機器分野などを中心に市場は拡大していくとみられ、自動車・電装分野への展開も検討されている模様だ。