九州大学(九大)と東京大学は10月14日、温度応答性のゲル粒子の相転移現象を利用することにより、室温付近で1℃の温度差を最大6.7mVの電位差に変換する熱電変換材料の開発に成功したと発表した。
同成果は、九大大学院工学研究院三浦佳子研究室の星野友准教授、同・君塚信夫研究室の山田鉄兵准教授(現・東大大学院理学系研究科教授)らの研究チームによるもの。詳細は、米化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。
IoT社会を実現するためには、いくつものさまざまなセンサーやデバイスを街中の至る所に備え付ける必要がある。そうしたセンサーやデバイスは、装置自身の排熱、地熱、太陽熱、そして人の体温など、身の回りのありふれたエネルギーを利用して自律的に駆動するシステムとすることが重要だ。また、持続可能な社会の実現のためにも、現在は廃棄されてしまっている低温の排熱を回収し、電力などに変換して効率的に使用するシステムの開発が求められている。
廃熱を電気に変換する素材として、これまでにもさまざまな熱電変換材料が開発されてたが、その多くは、室温付近の小さな温度差では大きな電位差を出力できないことが課題だった。
そうした中で研究チームは、最近になって、室温付近に相転移温度を有する温度応答性のゲル粒子電解質のpHが、体温程度のわずかな温度変化で大きく変化することを発見。さらに、ゲル粒子の相転移によって引き起こされる電解質のpH変化を「プロトン共役電子移動反応」と組み合わせることで、小さな温度差を大きな電位差に変換することに成功したという。今回の材料を用いることで、室温付近の1℃程度の温度差を6~7mV程度の電位差に変換することが可能となるとしている。