2020年10月5~9日にIEEE主催でバーチャル会議として開催された「International Interconnect Technology Symposium (IITS) 2020」において、ベルギーの先端半導体研究機関であるimecが、2nmプロセスに向けて研究してきたRu(ルテニウム)セミダマシンとエアギャップで構成された相互配線が長寿命と良好な機械的強度を有することを初めて実証したと発表した。

試作では12層構造を採用し、RC遅延、消費電力、およびIR低下の観点から、このセミダマシンテクノロジーのシステムレベルでの利点が確認されたという。また、Ruは、先端の技術ノードのミドルオブライン(MOL)にあるコンタクトプラグの有望な代替金属材料となりうることも併せて実証されたという。Ruなどの代替メタライゼーション(金属配線)材料とセミダマシンなどの代替配線構造は、バックエンドオブライン(BEOL)とミドルオブライン(MOL)を2nm技術ノード以降に拡張するためにimecでは集中的に研究してきた。

デュアルダマシンに代わるセミダマシンとは?

imecは、BEOLにおいて従来のデュアルダマシン構造の代替としてセミダマシン構造を提案している。

セミダマシンというのは、まず、ビアをシングルダマシン方式で形成したのち、次にそのビアを金属で満たし、従来のダマシン方式とは異なり、そこで堆積を止めずにさらに堆積を続けて層間絶縁膜上に金属層(つまり、RuやMoなどのバリアのない金属)が所定の厚さになるまで堆積を続け、最後に金属層を選択エッチングして金属配線パターンを形成する一連の手法や構造を指す。広く普及しているデュアルダマシンとセミダマシンの本質的な違いは、セミダマシンでは金属のCMPステップが無用になるということである。ライン間のギャップはULK(超低比誘電率膜)かエアギャップ(比誘電率が低い1.0の空気層)で形成される。

セミダマシン技術の可能性を十分に活用するには、拡散バリアなしで堆積でき、バルク抵抗率が高く、サブトラクティブエッチング(不要部分を除去するためのエッチング)を使用してパターン化できるCuまたはCo以外の金属が必要となる。CuやCoはサブトラクティブエッチングができないためにCMPを使用して不要なメタルを削り取らねばならなかった。

セミダマシンの採用で、相互接続の高さを増やすことができ、誘電体としてのエアギャップと組み合わせて、BEOLスケーリングの主要なボトルネックである抵抗-容量(RC)遅延を減らすことができるようになるという。

300mmウェハ全面に初めてRuセミダマシンモジュールを形成

imecは、金属配線材料にRuを使用して、300mmウェハ上にセミダマシンモジュールを形成し、配線の機械的および電気的特性を評価した。30nmの金属ピッチラインテスト構造を備えたデバイスは、80%を超える再現性(短絡がない構造)と10年を超える寿命を示したとのことで、これによりRuエアギャップ構造の機械的安定性は、従来のCuデュアルダマシン構造に匹敵することがわかったという。メタル12層の分析により、ベンチマーク設計として64ビットArm CPUを使用して、サブ3nmノードでのセミダマシンアプローチのシステムレベルの利点が解明されたという。

imecのプログラムディレクターであるZsolt Tokei氏は、「結果は、エアギャップ技術と組み合わせたセミダマシンが、周波数特性と占有面積においてデュアルダマシンよりも優れていることを示している。また、さらに拡張するためにスケーラブルであることも実証された。エアギャップは、消費電力を5%以上削減しながら、パフォーマンスを10%向上させる可能性を示している。高アスペクト比の配線を使用すると、電力ネットワークのIRドロップを10%削減して、信頼性を向上させることができる。バリアレスRuなどの代替金属は、接触面積の縮小から生じる接触抵抗をさらに低減する可能性がある。ベンチマーク研究では、imecはRuとCoの両方を比較評価した。結果は、Ruが狭いMOLトレンチでCoを置き換える有望な候補であることを示している」と述べている。

  • 2nm

    アスペクト比が(a)2.2、(b)3.2、および(c)3.8のセミダマシン構造、(d)高密度に配列されたセミダマシン(黒い箇所)とエアギャップ(白い箇所) (出所:imec)

  • 2nm

    抵抗やIR低下のアスペクト比依存性(RLK=Replacement Low-K、CDF=累積分布曲線) (出所:imec)

MOLコンタクトプラグとしてもRuは有望

また、imecは、高度なMOLコンタクトプラグの代替金属として従来のWやCoの代わりとしてRuを使用することの有用性を示した。imecのCMOSデバイステクノロジーディレクターである堀口直人氏(元富士通研究所)は「バリアレスRuのような代替メタルは、接触面積の縮小に起因する接触抵抗を減らすことができる。ベンチマーク調査では、imecはRuとCoの両方を評価した。結果は、Ruが狭いMOLトレンチでCoを置き換える有望な候補であることが示された。0.3nm TiNライナー(バリアなし)上のRu充填ビアの抵抗は、Co充填の同等プロセス(1.5nm TaNバリアあり)よりも優れていることが示された。ソース/ドレイン接触材料としてのRuも実証され、p-SiGeとn-Siの両方で10~9Ωcm2のオーダーの低い接触抵抗率を示した」と述べている。

  • 2nm

    CoおよびRuのビア抵抗の累積分布曲線 (出所:imec)