8月4~6日にバーチャル開催された「IEEE RFIC 2020(無線集積回路国際会議)」にて、ベルギーimecが28nm CMOS標準プロセスを用いた60GHzのミリ波モーション検出レーダーを発表した。

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    低消費電力60GHzレーダーチップ(中央)を搭載したリファレンスモジュール (出所:imec)

2cmの距離分解能を持った高感度レーダーで、人間のバイタルサインのモニタリングとジェスチャー認識に最適化した設計だとしている。電池駆動を可能とする62mWの消費電力を実現しており、実験ではマルチターゲット検出、5m離れた対象者からの心拍検出、歩行者の位置と速度の正確な追跡に対するセンサ能力といった性能が確認されたという。

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    60GHzレーダーチップを用いた実験結果。被験者から5m離れた場所での心拍モニタ(左)と歩行者の位置と歩行速度の検出 (出所:imec)

同レーダーチップは、60GHz前後の周波数帯で動作し、高速の変調波を生成することが可能で、51.2μsで周波数を12%増加させることができるほか、7.2GHzという高い変調帯域幅による高解像度により、指や手、ジェスチャーといった動作の3Dセンシングに適しているため、imeでは医療や産業目的の新しいIoTアプリケーションに使用できると説明している。

62mWの低消費電力性能に加え、起動時間も1μsと短いため、頻繁なデューティサイクルでの使用時にも電力の節減が可能とする。また、トランシーバーチップの面積は4.15mm2と小型なため、安価に製造することが可能なほか、リファレンスモジュールはアンテナを含み、良好なスピルオーバ(Spillover)性能を有する単一チャネルレーダーとして提供される。

imecのプログラムマネージャーレーダーであるBarend van Liempd氏は「コンパクトでエネルギー効率の高い60 GHzレーダーシステムは、スマートフォン、ヘルスモニタリングシステム、ウェアラブルなどのスマートヘルスデバイスに組みこむことができる。レーダーを搭載したモバイル装置は周囲を感知できるようになる。たとえば、ベッドサイドテーブルにおかれたモバイル装置(たとえばスマートフォン)は、睡眠の質を監視できる。個々人の健康、赤ちゃんの監視、スポーツ選手の健康管理、高齢者のケア、入院中の患者の監視、看護師の効率向上、労働者の安全衛生管理などに活用できるだろう」と述べている。

また、imecのIoT担当ディレクターであるKathleen Philips氏は「私たちのプロトタイプは、レーダー技術が次の大きなステップ、つまりバッテリー駆動デバイスでの使用に向けて準備ができていることをIEEE RFICで示した。現在、私たちはこれらのアイデアを活用して、新しいレーダーソリューションを実現することで市場に参入したいと考えている企業を募集している」とコメントしている。