市場調査会社Omdia(旧IHS Markit)は4月初頭、2019年における半導体企業の売上高ランキングトップ10を発表したが、本誌では独自に同社に対して取材を実施、日本の半導体企業に絞った売上高ランキングトップ10(実績に基づく確定版)が判明した。
それによると2019年の日本の半導体企業の売上高総額は、前年比4.7%減の427億ドルであったという。世界の半導体企業の売上高総額が同11.7%減であったのに比べて日本勢の減少率が低かったのは、日本半導体業界において半導体メモリメーカーはキオクシア(旧東芝メモリ)のみで、総額に占める半導体メモリの売上高の割合が比較的少なかったうえにソニーセミコンダクタソリューションズの売上高が大きくプラス成長したためである。日本の半導体企業トップ10社の売上高総額は、前年比3.7%減で日本企業全体の減少率より小さかった。
日本の半導体企業トップ10社ののうち7社が売り上げの減少に見舞われた。トップのキオクシアは、半導体メモリバブルがはじけたため前年比23.2%減となったが、かろうじて日本企業トップの座を保った。同社の世界ランキングは、2018年は8位だったものの、2019年は11位に後退し、世界ランキングトップ10からは消えてしまった。
2位のソニーセミコンダクタソリューションは、大きく売り上げを落としたキオクシアとは対照的に、同30.9%増と、驚異的な成長を遂げ、首位のキオクシアに肉薄した。ソニーの2019年の世界ランキングは13位だった。2018年の17位から順位を4つ上昇させ、いよいよ世界ランキングトトップ10入りが見えて来た。
すでにソニーは、四半期ベースの売上高統計では、2019年第3四半期に、前四半期比41.5%増という驚異的な成長率で世界半導体企業ランキングの8位に入っていた。
ソニーの躍進で、2018年の2位から3位に順位を下げたルネサス エレクトロニクスの売り上げは、2018年とほぼ同じだった。世界順位は2018年と同じ16位であった。同社は2019年3月に米IDTを買収したのでその売り上げが含まれているにもかかわらず売り上げが伸びなかったと言うことは、ルネサス本体の業績が悪化していることを意味している。同社は、Intersilに続いてIDTを買収したが、期待されていたシナジー効果を発揮した売上高には至っていない。
4位のローム、5位の東芝、6位の日亜化学、7位の三菱電機、8位のサンケン電気の5社の順位は2018年と変わらなかったが、唯一三菱電機だけが、パワー半導体の好調により売り上げを伸ばした。
9位のソシオネクストと10位のパナソニックは、2018年と順位が入れ替わった。ソシオネクストは、富士通の子会社であった富士通セミコンダクターとパナソニックのシステムLSI設計部門が統合して誕生したファブレス設計会社で、日本を代表するファブレスに成長することが期待されてはいるものの苦戦が続いている。
パナソニックは日本のDRAM全盛期には世界の半導体ランキングトップ10の常連であったものの、いまや51位まで順位を落としている。それだけではなく、半導体事業を手掛ける100%子会社パナソニックセミコンダクタ―ソリューションズを2020年6月をめどに台湾の新唐科技(Nuvoton Technology)に2億5000万ドル(約270億円)で売却し、半導体事業から撤退するという。いわゆるパナソニック北陸3工場(新井、魚津、砺波)も売却されてしまい。半導体業界からパナソニックの名が消えてしまうのは寂しい限りだ。
Omdiaの半導体製造担当シニアアナリストであるRon Ellwanger氏は、ソニーの驚異的な成長は特に注目するもので、「そのパフォーマンスは、スマートフォン(スマホ)を含むさまざまな電気製品のカメラとして使用されるCMOSイメージセンサチップにおけるリーダーシップの地位に基づいて構築された。スマホがマルチカメラ構成をますます採用するようになるにつれ、ソニーのコンシューマ製品向けセンサに対する需要が急増し売り上げが高騰してきている」と述べている。
Omdiaによると、トリプルカメラを搭載したスマホは、2019年第4四半期の総出荷台数の31%を占め、市場で最も人気のあるモデルとなったという。これにより、2019年のグローバルCMOSセンサー市場は同22.9%増加したという。
なお、Omdiaコンサルティングディレクタの前納(まえの)秀樹氏は、ランキングのトップ3社について「世界ランキングの10位圏外となったキオクシアはほかの半導体メモリベンダ同様、前年比で売上高を大きく落とした一方、ソニーはスマホへのCMOSイメージセンサの搭載量が増加した恩恵を受け、キオクシアに約1億ドルの差まで詰めており、2019年下半期だけを見れば、すでに6億7000万ドルほどキオクシアを上回り1位の座を獲得している。ソニーは新型コロナウイルスの影響で業績の下方修正を余儀なくされることをすでに明らかにしているものの、スマホの5Gへの移行に伴う需要の高まりによって2020年は通年で1位を獲得する可能性が高い。3位のルネサスは前年比0.7%減の微減となっているものの、買収したIDTの売上高(2018年は9億3000万ドル)を加味しなければ実質の成長率はマイナス11.5%となり、東芝、キオクシアとならび2桁%のマイナス成長となった。アプリケーションとして半導体の搭載比率の高いスマホやデータセンター向け製品ラインアップが少ない中で、今後、非メモリメーカーとしていかに成長していくかが、課題となってくる」とそれぞれの動きについてコメントしている。