1億ニューロンの演算能力を提供

Intelは3月18日(米国時間)、自己学習型ニューロモーフィック試験用チップ「Loihi」を768基搭載することで、1億ニューロンの演算能力を実現したニューロモーフィック・リサーチ・システム「Pohoiki Springs」を発表した。

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    ニューロモーフィック・リサーチ・システム「Pohoiki Springs」の外観 (C)Intel

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    Intelの自己学習型ニューロモーフィック試験用チップ「Loihi」の概要 (資料提供:Intel)

同システムは、5Uのラックマウントシステムで、300W~500W程度で動作することが可能だという。同社では、「これにより、Intelの研究パートナーは、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)システムを含む従来のアーキテクチャ上で、長い処理時間を必要とするさまざまなワークロードについて、より高速化する方法を模索することが可能になる」と説明している。

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    「Pohoiki Springs」の概要 (資料提供:Intel)

従来プロセッサ比で最大1000倍の高速化が可能に

Intel Labsのニューロモーフィック・コンピューティング担当ディレクターであるMike Davies氏は、「制約充足やグラフ・パターンといったものの検索、最適化問題などといったアルゴリズムの高速化にLoihiは向いている」としている。同氏は、例えばグラフの検索の場合、同社のサーバ向けCPU「Xeon」と比べて100倍高速に処理することができるとしており、こうした特定領域における負荷の若いワークロード処理を、従来型のプロセッサと比べて、最大1000倍高速、かつ1万倍高効率に行うことが可能だと説明している。

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    グラフ検索をXeonと比べた場合、100倍高速に処理を終えることができるという (資料提供:Intel)

また、「従来の既存システムに比べて、より柔軟さをスケールの増大に併せて提供することができ、かつ演算処理能力を高めつつシステムとしての消費電力を削減することができるようになる。そのため、冷却機構の簡素化など、システム全体として見た場合のメリットを得ることも可能になる」と、ニューロモーフィックシステムの有用性について説明している。ただし、Pohoiki Springsを含む同社のニューロモーフィック・システムについては、まだ研究段階のものであり、商用化される段階にはないとしている。

研究パートナーはクラウド経由でアクセス可能

そのため、同社ではIntelの研究機関であるIntel Labsがニューロモーフィックの研究開発を進めることを目的に立ち上げたコミュニティ「Intel Neuromorphic Research Community(INRC)」に参加する90を超す大学、研究機関、企業などの研究パートナーにツールとして提供し、ニューロン触発型アルゴリズムの開発や特性化への取り組みを進めていってもらうことを予定しているという。

実際にはINRCのメンバーたちは、Intelの提供するNx SDKやINRCにて開発されたソフトウェア・コンポーネントを使用してクラウド経由でPohoiki Springsにアクセスし、アプリケーションの開発を行うことになるという。

なお、Loihiを搭載したシステムはPohoiki Springsに至るまでに、「Wolf Mountain」、「Nahuku」、「Kapoho Bay」と開発が進められてきた。Pohoiki Springsはこのうち、32基のLoihiチップを搭載したNahuku(Arria 10をコントローラとして搭載)を24枚(3枚のNahakuを1モジュールとし、それが8枚挿さっている)搭載することで1億ニューロンを実現したという。

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    Loihiを搭載したPohoiki Springsの前のシステムとして「Nahuku」(Loihiを8~32基搭載)と「Kapoho Bay」(Loihiを1~2基搭載)がある。Pohoiki SpringsはこのNahakuを24枚用いることで実現された (資料提供:Intel)

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    Pohoiki Springsのモジュール。Nahakuが3枚つながっている (C)Intel

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    Nahakuのボード上に搭載されたLoihiチップ (C)Intel