「Versal」の第3弾シリーズが登場

Xilinxは3月10日(米国時間)、同社の次世代製品であるACAP(Adaptive Compute Acceleration Platform)「Versal」の第3弾製品シリーズとなる「Versal Premium」を発表した。この発表に先立ち電話会議の形でこの同製品の詳細の説明が行われたので、ご紹介したい。

Versalシリーズ全体の概要は以前の記事でご紹介した通りで、FPGA FabricだけでなくS/W Programmable Engine(同社はこれをAI Coreという名称で説明している)やさらに高速化したI/Oを搭載、全体をNoC(Network on Chip)でつなぐという構成にした製品である。

2018年のXDFではこのVersalが6シリーズ用意されているとしており、AI処理向けの「Versal AI Core」と汎用の「Versal Prime」がまず発表になった形だが、今回追加されたVersal PremiumはVersal Primeの上位にあたる位置づけの製品である(Photo01)。

  • Versal Premium

    Photo01:帯域3倍/計算容量2倍は16nm世代の製品との比較である

Versal Primeの内部構造はPhoto02のような具合であったが、Versal Premium(Photo03)はI/Oに機能的な強化が行われた。

  • Versal Premium

    Photo02:元々のVersal Prime

  • Versal Premium

    Photo03:Versal PrimeはPCIe Gen4どまりでSerDesは32Gと58Gのみ。またEthernetやInterlaken CoreもCrypto Enigineも搭載されていない

具体的には、

  • PCIe Gen5に対応。またCCIXに加えてCXLへの対応を実装
  • 112GbpsのSerDesを搭載
  • 600GのEthenet Core/Interlaken Coreと、400GのCrypto Engineを搭載

といった点が異なる。

Versal Premiumのターゲットはネットワーク分野

明確にネットワーク向け処理に向けた製品である。実際Xilinx自身、16nmプロセス世代のFPGAと比較して、ことネットワーク向けで言えば22倍ものロジック密度が実現できるとしている(Photo04)。

  • Versal Premium

    Photo04:別にFabricが22倍搭載されているという意味ではない

どうしてこれが可能になったかと言えば、強化されたI/OがすべてハードウェアIPの形で搭載されており、FPGA Fabricを消費しないためである(Photo05)。

  • Versal Premium

    Photo05:ここには例として挙がっていないが、確かInterLakenも結構なLUTを消費したと記憶しており、こうしたものをハードIPで持っているからFPGA Fabricを使わずに実現でき、しかもFPGA Fabricを使うよりも当然低消費電力で実現できるから効率も良い

Xilinxでは、Versal Premiumを使う事で、基地局やバックエンドの機能を効率よく実装することができ、より効率の良いソリューションが提供できるとしている(Photo06)。

  • Versal Premium

    Photo06:赤の部分が製品差別化要因で、ここはFPGA Fabric(とDSP)を使って実装する。その他の部分はある意味共通化されており差別化要因とならないので、ここはハードIPで実装することで効率を上げる、という形

また従来の58G PHYに加えて112GのPAM4 PHYを搭載したことで、今後登場する800G Ethernetにも対応可能としている(Photo07)。

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    Photo07:もっとも800GbEはまだ具体的な話になっておらず、先に400GbEへの112G PHYの適用が始まりそうではあるが

加えて、Versal Premiumでは600GのEthernetおよびInterlaken Coreを搭載している。特にハイエンドのVP1802の場合、600G Ethernet MAC×7、600G Interlaken×3、400G Crypto Engine×4という重装備で、アクセスラインのみならずメトロやコアネットワークであっても十分対応できるとする(Photo08)。

  • Versal Premium

    Photo08:Xilinxのメッセージはコアからアクセスまで、基本設計を変えずにVersal Premiumの製品SKUを変更するだけで対応できる、というものである

そのため、ここでの差別化要因はFPGA FabricとDSPを使ってどのような事が出来るかという話になってくる。こうした用途で昨今はAIを利用するケースが少なくない(Photo09)。

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    Photo09:ルーティングとか脅威判定/対策などにAIを利用するケースが増えてきており、ここにFPGA Fabricを利用する形になる