2019年第4四半期のNAND市場は125億ドル規模に回復

市場調査会社である台TrendForceによると、2019年第4四半期のNAND型フラッシュメモリ市場のビット出荷容量は、データセンター需要の増加を背景に前四半期比で10%近く増加。金額規模としても同8.5%増の125億ドルとなったという。

このデータセンター需要の増大により、NANDサプライヤ各社の在庫は通常レベルにまで改善されたとのことで、NANDサプライヤは現在、比較的高いマージンを確保できる製品の製造に集中することができるようになってきたとTrendForceでは見ており、市場のさらなる健全化に期待を寄せる。

ただし、2020年第1四半期は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大がスマートフォンやノートパソコンを含む家電サプライチェーンに影響を与える可能性が高いことから、ビット出荷容量は、前四半期比でわずかな減少または横ばいとなるとTrendForceは予想している。とはいえ、契約価格の上昇により、金額規模としては2019年第4四半期と同程度を維持することが予想されるとしている。

2019年第4四半期の各社の動向

Samsung Electronicsは旺盛なデータセンター需要によりSSDの供給が追い付かない状況となったとのことで、同社のビット出荷容量は前四半期比10%の増加増、売り上げも契約価格の上昇により同11.6%増の44億5100万ドルとなったという。また、生産能力としては、第12ラインにおける2次元NANDの生産比率を削減させ、3D NANDへのフォーカスを加速させているとするほか、新型コロナウイルスの感染拡大の潜在的な影響はあるものの、中国の西安工場における新たな製造棟は現状、予定通りの稼働を続けているとしている。

SK HynixもSamsung同様、データセンターでの需要の高まりなどを背景にビット出荷容量を同10%増、売上高も同5.4%増の12億700万ドルと増収を達成した。生産計画としては、2020年は2次元NANDの生産削減と3D NANDの生産拡大を進めるほか、2020年第1四半期から128層製品の量産を開始する予定。また、2020年中にQLC製品のリリースを予定しているというが、同社は軸をモバイル市場に置いており、クライアントがQLC SSDを採用するのに時間がかかるものと見られている。

キオクシアは、2019年7月に発生した四日市工場の停電からの生産能力の回復と、データセンターならびにPC向けSSD需要の高まりを受け、ビット出荷容量を前四半期比で約10%増とした。また、停電の影響で製品不足となったこともあり契約価格が上昇し、平均販売価格が約5%ほど増加したこともあり、売上高は同5.1%増の23億4100万ドルとなったという。

生産能力としては、岩手県北上市のK1ファブが2020年上半期に稼働を開始する予定。96層/112層製品を生産することになっている。岩手の新ファブの稼働により、四日市工場での3D NANDの積層数増加にともなう生産量の低下を補うことができるため、キオクシア全体におけるウェハ投入枚数そのものに変化はないものとTrendForceは見ている。

そのキオクシアのパートナーであるWestern Digitalは、Appleの新型iPhoneによる需要とデータセンターSSDの需要の増加により、ビット出荷容量を同24%増と大きく伸ばした。このため、同社製品の平均販売価格は同8%の低下となったものの、売上高は同12.6%増の18億3800万ドルとなったという。同社もまた、キオクシアと協力して岩手のK1ファブへの投資を進めており、生産能力の維持につとめているという。

Micron Technologyは、モバイルストレージ市場でのMCPの出荷数の伸びに加え、SSD需要も増加したことを受け、ビット出荷容量を同15%増としたほか、製品構成を収益性の高い方向にシフトさせたこともあり、平均販売価格も若干上昇しており、その結果、売上高も同18.1%増の14億2200万ドルとなったとする。

生産能力については、比較的保守的で、2020年の動きとしてはプロセスノードとマイクロアーキテクチャの改善に注力。128層製品については2020年の後半の量産開始を計画しているという。

そしてIntelだが、同社も他社同様データセンターからの需要増の恩恵を受けたが、前四半期に、それ以上に需要の先取りを図ったクライアント向けに出荷を行ったことから、同四半期のビット出荷容量は前四半期比で10%以上の減少となったという。ただし、第3四半期に急速に在庫を減らしたこともあり供給不足に陥り、平均販売価格が同10%以上の増加したにも関わらず、売上高そのものは同5.7%減の12億1700万ドルにとどまったという。

なお、IntelのNAND工場である中国・大連工場は現在、新型コロナウイルスによる影響は軽微であり、通常の生産能力を維持しているという。また、同社は144層製品の実用化に向けた開発を継続して続けており、2020年の下半期には量産を開始する予定としている。

  • TrendForce

    2019年第4四半期の自社ブランドNANDフラッシュメモリメーカー売上高ランキング (出所:TrendForce)