半導体市場調査会社である米IC Insightsは2019年末発行のレポート「世界ウェハ生産能力(Global Wafer Capacity) 2020-2024」において、2019年12月度の半導体産業全体の生産能力が月間1940万枚(200mm換算)となったことを明らかにした。
世界一の生産能力は台湾
この生産能力の内訳は、300mmウェハが1290万枚(200mmウェハ換算での数値、以下すべて)、200mmウェハが520万枚、150mm以下のウェハが130万枚となっている。国・地域別では、台湾と韓国が400万枚強でトップグループを形成し、わずかに台湾がトップを獲得。次いで日本が300万枚強で3位、そして200万枚台の中国、北米と続く。300mmに関しては、韓国と台湾が300万枚台でトップクラスで、日本が190万枚で続く。200mm以下では、日本が50万枚でダントツのトップとなっており、日本には、数十年前のDRAM全盛時代のレガシーファブが世界で一番多く残存して、さまざまMore-than-Mooreのデバイス製造に使われている状況と言える。
先端プロセスの生産能力が低い日本
各国・地域別に見たプロセス別生産能力内訳だが、世界全体の生産能力の37%が20nm未満の最先端プロセスとなっている。
日本も20nm未満は53%と過半を占めているが、その後に続く先端プロセス(65nm未満~20nm以上)に関しては、ほかの国・地域に比べて極端に少なくなっている。これは、日本の半導体企業すべてが、40nm未満のロジックIC向け生産に対する設備投資をやめてしまったためであろう。
生産能力が急増する2020年
2019年の年間生産量能力は前年と比べて720万枚増だが、2020年には前年比1790万枚増加とIC Insightsでは予測している。2021年もさらに同2080万枚が増加するとしており、史上最高規模の生産能力に到達することとなる。この増加分の大半は中国における外資系(Samsung、SK Hynixなど)や地場(YMTC/XMC、Huasung Graceなど)によるものとなる見通しだという。特に2019年は、メモリバブルが崩壊し、多くのメモリメーカーが生産能力の拡張計画の一部を一時的に先送りしたが、決してキャンセルされたわけではないため、それらの投資が2020年および2021年に実施されるという予測をしているためである。そのため、それらの投資が終わった2022年以降は、生産能力の増加の勢いは徐々に低くなっていくものと同社では予測している 。
ICの出荷数路湯の増加のカギを握る投入数量
一般的にIC業界は、プロセスの微細化や歩留まりの向上によるウェハあたりのチップの取れ数を増やすよりも、ウェハの投入数量そのものを増やすことで、需要を満たそうとする。そのため、ウェハあたりの良品ICの出荷数は、2000年から2019年にかけて年平均で0.9%ほど増加したにすぎず、2000年から2019年にかかる平均年間IC出荷数量の増加率(6.5%)の約86%がウェハの投入数量が増加したことによるものであるという。また、ウェハあたりの良品チップ数の増加に起因する分は14%を占めるに過ぎないという。
2019年の半導体工場稼働率は86%
2017年、2018年のいわゆるメモリバブルの間、半導体工場の稼働率は非常に高く、供給量の拡大に向け、工場における生産能力の拡充に向けたプロジェクトが各地で進められた結果、過剰な生産能力に至る、という懸念は当時から囁かれていた。そうしたこともあり、2019年は世界全体の生産能力は向上したにも関わらず、市場の低迷という憂き目にあい、世界全体で見た場合の稼働率は2018年の94%から86%に低下したという。