導入事例

最適緊急対応プロセスが生み出す数分が生命を救う

ウェルネスサービスの提供に取り組む東南アジアの効率総合病院であるA病院にとって欠かせないのが、外来時の患者体験の向上です。診察受付は、セルフサービス型の自動受付機、サービスデスク、オンライン、タブレットのいずれでも行えるようにしたことで効率化され、患者が公共交通機関、車、徒歩のいずれの手段を用いて病院まで来たのかも考慮されるようになっています。

  • スマートヘルスケア

    A病院の概要とスマートヘルスケアに向けた3つのビジョン

受付のプロセスは自動化されており、患者は診察の予約を入れると、スマートフォンの自動識別機能を介してテキストメッセージを受け取ります。RFIDベースのIDと待機管理システムを通じて患者には最適化された受診コースが提示され、患者はこれを印刷したりスマートフォンにダウンロードしたりできます。患者の優先度を最適化することで待機管理システムは待ち時間を予測し、最新情報を患者のスマートフォンに送信します。診察後、患者は請求書を受け取り、最後の診療科もしくはセルフサービス型キオスクのいずれかで支払いを済ませます。最終的に外来でのサービスプロセスはこのように最適化され、患者が順番待ちをしなければならないのは、予約を取る際と支払いを行う際のみとなります。

コード・ブルーの発令で応答時間を短縮

重篤な症状に陥った患者は一刻を争います。コード・ブルーが発令されると、救急対応チームが到着し、わずか数分で蘇生措置を施します。救急チームのメンバーはエレベーターを優先的に使用でき、ビルオートメーションシステム(BAS)が自動的に病棟内の空調や照明を始めとするシステムを調整し、処置に最適な環境を整えます。手術が行われる場合、BASは手術室の準備を整え、患者を素早く搬送できるようエレベーターを待機させます。

新たに統合された緊急対応システムは以下のような目覚ましい成果をもたらしました。

  • 心停止に陥った患者の生存率が3倍向上
  • 悪化の兆候を示している患者を6時間から8時間モニタリングし、より短時間で手当てが受けられるようにしたことで心肺停止による生存率を改善
  • スマートヘルスケア

    図3-1 最適化されたA病院の緊急救命プロセス

環境に優しいサスティナブルな環境での効率的な手術

A病院ではビルシステムのほかIT、治療や診断システムなど、約30のシステムをミドルウェアで一元化し、9万以上のハードウェアポイントを統合しました。一元化した統合オペレーション用ユーザーインタフェースと継続的な最適化や改善の取り組みによって、A病院は地域のグリーン標準システム認証を取得しました。

病院を省エネ施設に変革

度重なる増築で膨大な量の機器類やシステムがそれぞれ独立して動作し、施設のオペレーションや保守管理を行うスタッフのスキルにはバラつきがあるという状況は公立の病院の多くでは一般的で、中国の主要都市中心部にあるB病院も例外ではありませんでした。

  • スマートヘルスケア

    B病院の概要とスマートヘルスケアに向けた3つのビジョン

この医療施設ではオペレーション効率の悪さから、利用者に対して快適な環境を提供することができなくなっていました。例えば、空調はいくつものメーカーの製品があって、制御システムが稼働しているもののそれぞれが独立して機能しており、中には手動制御のものまでありました。外来エリアは人であふれ、十分な空調が行われていなかったために頻繁にクレームが生じるなど、患者の満足度は低下していました。

こうした状況は、病院が既存施設を改修してスマートビルに変革することを決めたことで変わりました。段階を踏んで導入する戦略を採用し、本部の敷地内にあるすべての建物のオペレーションとメンテナンスの最適化を実現。改修作業期間中、医療サービスが中断されることは一切ありませんでした。

この改修では、以下のようなアップグレードが行われました。

  • 外来棟でコンピュータ、ソフトウェア、ネットワーク制御エンジンを始めとするオートメーションシステムのアップグレードを行い、システム全体の容量と処理能力を引き上げ
  • ウォーターポンプ、ファンコイル、ビルオートメーション、ビルマルチエアコンなどの分散システムをMetasysビルオートメーションシステムに統合して中央集中管理とモニタリングを行い、環境制御や運用効率を最適化
  • IoTベースの空調ユニットを60台以上追加して、外来エリア内の室温を改善

B病院ではアップグレード版のMetasysプラットフォームの設置によって、以下のような改善が見られました。

  • 全体のエネルギー消費量を約20%削減し、大幅な省エネを実現
  • 夏季の外来エリアの周囲温度についてのクレームが減少
  • クリーン環境、エネルギー、プロパティエリアにおける統合管理を可能にしてさらなる効率化を実現

こうした効率化を実現したことで、B病院は2018年に「省エネにおける公的機関のリーダー」に選定されました。

ジョンソンコントロールズのヘルスケアビジネス

ジョンソンコントロールズでは省エネや運用の効率化を実現する持続可能なソリューションを提供することで、よりスマートで健全そして生産的で快適に構築された環境の実現を目指しています。

例えば2003年より提供しているスマートホスピタルソリューションは、ビルテクノロジー(ビルIoT)、医療テクノロジー(メディカルIoT)と病院ビジネスプロセス(ITシステム)とを有機的に統合することを可能にします。また、戦略プランニング、アセスメント、運用とメンテナンスのための統合アプローチを通じて、ヘルスケア組織のビジョンやミッションの達成を支援することを可能にしています。

ビル環境の管理によって快適で安全でありながら省エネルギーを実現するためには複雑なノウハウを要します。HVAC、冷凍、防火、セキュリティシステム用機器、制御およびサービスまで幅広く提供するジョンソンコントロールズが世界150カ国で多くのカスタマに支持されるのは、そうした複雑なノウハウを提供できるためであり、今後、引き続き、省エネルギー性能を高めながら運用コストを削減し、人々が快適に働き、学び、遊び、暮らせる環境の実現に向けたソリューションの提供は続いていきます。

参考

[1]Deloitte、「Voice of Asia - Third Edition」