スマートホスピタルの構築には何が必要なのか
ヘルスケア組織は妥協することなく患者ケアを提供すると同時に、臨床成績や経営効率を改善しなければならず、その圧力は年々増すばかりです。どの病院も患者の満足度の向上やコンプライアンス遵守、技術的進化への継続的な取り組みといった課題を抱えています。
さらに、スマートテクノロジーやInternet of Things(IoT)を巡る議論も高まっています。こうしたイノベーションはヘルスケア業界にとってどのような意味を持つのでしょうか? データ保護の面で妥協することなく、病院や患者がコネクテッド技術の恩恵を享受するにはどうすればよいのでしょうか? 何より重要なことは、スマートテクノロジーによって優れた成果を生み出すにはどうすればよいかということです。
病院は無数のシステムを擁する複雑な集合体です。臨床、IT、施設管理のそれぞれのシステムを理解し、一体となって機能させることができて初めて、さまざまな課題により効果的に対処することができます。
スマートなヘルスケア環境の創造
治療体験は、患者が病院の建物に足を踏み入れた時から始まります。診療記録が電子化され、ベッドサイドに情報端末が設置されるようになった今の時代、患者も医療スタッフも最高の体験を期待します。
ビジネス、セキュリティ、臨床システムが適切な方法で統合されれば病院の建物自体を、医療機器の一部として治療に活用することができます。ナースコールのような臨床ソリューションやそれを支えるインフラの計画、設計、購買、導入、統合、コミッショニング、サービスまでを運用管理するためには、組織全体を大局的に捉える必要があります。
肝心なことは、当初から最終目標を念頭に置くことです。新築で医療施設を建設する場合でも、既存施設を改修する場合でも、院内のすべての部門をテクノロジーに関連したイニシアチブとして扱う必要があります。統合自体が目的になってしまうと過剰なアラートや、劣悪なワークフローにつながり、臨床医と患者のどちらにとっても不必要な複雑さを招きます。
統合を成功させるためには、システムを2つのレベルでコンバージョンする必要があります。
- 異なるシステムが確実に同一のインフラ(ネットワークとサーバーなど)を共有するようにするための物理的コンバージョン
- 同一システムの業務プロセスやワークフロー内でデータ交換が行えるようにするための論理的コンバージョン
残念ながら、建設業界はテクノロジーの進化に遅れをとっており、一方のITインテグレーターは往々にしてビルシステムの構築や、作業現場の調整、建設スケジュールの策定といった建設の専門的ノウハウが不足しています。異なるシステムがサイロ化されて導入されているケースでは、システムベンダーが異なることが多く、20種類以上になることも珍しくありません。これほど多くの業者が関わることになると担当領域も断片的になるため、複雑なオペレーションプロセスや利用者の多い最新の施設設備に必要な統合された環境を提供することはほとんど不可能です。
統合された実現プロセスの重要性
ジョンソンコントロールズではマスターシステムインテグレーション(MSI)という手法により、全般を統括する統合責任者として部門横断的な観点でプロセス管理を提供しています。MSIは10年間にわたり改善されてきた手法で、全世界でスマートホスピタルを実現する手法として実証されています。MSIは以下のステップに従って進められます。
- インテグレーションの検討
- インテグレーション/テクノロジーのナビゲーション(独自に構築した双方向のプロセスについて医療施設の部門横断的なチームとヘルスケアテクノロジーのニーズや投資についての評価と優先付けを行う)
- インテグレーションの設計
- インテグレーションの実現プロセス策定
- インテグレーションのコミッショニング
また、ベンダーに依存しないアプローチを採用するために、適切なテクノロジーを提供し、導入管理や性能保証を行うために、インフラストラクチャーからアプリケーション、デバイスまで、業界の100社以上のパートナーと提携しており、広範なサプライチェーン管理プロセスを活用することで、こうしたパートナーと競争力の高い価格設定を実現しています。
またリスク回避、将来的な拡張性を阻害する要因の最小化に加え、テクノロジー予算における投資回収効率を最大化するためのテクノロジー計画策定なども手伝っています。これは配線、ネットワークインフラ構築、専門システムの互換性など、コアインフラに関するデザイン決定に伴って実現されます。