半導体製造装置および材料市場のこれまでの動き
過去30年の半導体製造装置および材料市場の売上高推移を見てみると、製造装置は、1990年代半ばに200mmラインの増産および2000年代半ばの300mmラインの増産で売り上げの増加がみられるほか、その間の2000年に、いわゆるITバブルの恩恵で異常ともいえるほど装置の売上高が急増した。しかし、その後16年にわたって売上高が2000年の記録を超えることはなく、半導体製造装置業界は乱高下を続けた。この間、半導体の生産能力は上がっているのに、装置の売り上げが伸びなかったのは、装置のスループット向上とデバイスの製造歩留まり向上が大きい。しかし、2017年から2018年にかけてのメモリバブルのおかげで、状況は急変して装置市場は急拡大し、史上最高値を更新した。
一方の材料市場は、ITバブルの際も装置市場ほど上昇しておらず、リーマンショックの際も装置市場ほどには下落しておらず、1987年以降ほぼ四半世紀にわたってほぼ単調に拡大し、一時は装置市場を超えるまでに規模を拡大したものの、値下げ圧力などの影響から2010年代は売り上げが伸びず低迷した。材料市場の中で最大規模であるシリコンウェハの平均販売価格は、2007/2008年にピークを打ったのち低迷を続け、同業界の売り上げも低迷し続けてきた。ただし、2017年および2018年はメモリバブルの恩恵を受ける形で、ウェハが不足し、平均販売価格が上昇、同時に出荷数量も増え、同業界の売上高は2017年に前年比21%増、2018年に同31%増と大きく伸びた。
2019年と2020年の半導体製造装置市場
SEMIは、2019年の半導体製造装置市場について、2018年末のセミコンジャパンで予測した前年比4.0%減の595億8000万ドルから、SEMICON WESTにて同18.4%減の526億8000億ドルへと下方修正した。2020年については同11.6%増の587億8000億ドルになると希望的な予測を出している。
図6に2019年央における今後のカテゴリ別半導体製造装置市場予測を示す。ウェハプロセス処理装置市場が同19.1%減の422億ドル、その他の前工程カテゴリ(ファブファシリティ、結晶成長・ウェハ製造装置、マスク/レチクル製造装置など)は同4.2%減の26億ドル、組み立ておよびパッケージング装置は同22.6%減の31億ドル、テスト装置が同16.4%減の47億ドルとなっている。
なお、2017年ならびに2018年の装置売上高は、総額もカテゴリ別売上高も、テスト装置を除き、過去最高を更新している。テスト装置だけは、2000年の過去最高額92億ドルを越えることがいまだにできていない。
2019年と2020年の半導体材料市場
SEMIは、半導体材料市場について、2018年に前年比11%増の520億ドル規模に達したが、2019年は横ばいで成長率0%、2020年は同3%増と予測している。
このうち、半導体前工程ファブ材料の市場規模については、2018年に同16%増となったが、2019年は横ばいの326.5億ドルにとどまり、2020年に同4%増となると予測している。前工程ファブ材料市場で、もっとも大きなカテゴリであるシリコンウェハは、2018年に同31%増の121億ドルに達したが、2019年は同1.5%減、2020年は同3.7%増と予測している。また、パッケージング材料市場に関しては、2018年に同3%増の197億ドルに達したが、2019年は横ばい、2020年は同2%増と予測している。
まとめ
SEMIは2019年の半導体デバイス市場予測を、大きく下方修正したが、実際の問題として、下期は貿易摩擦と地政学的な要素に基づく不確定要素が大きく、不透明で見通しが立てにくい。短期レンジでは、需要の軟化と在庫レベルの状況が市場の動きのカギを握るが、長期レンジで見ると、技術革新による新技術が次々と登場するので、将来的には明るい見通しが持てると言えるだろう。
また、2019年のファブの設備投資および製造装置市場についてSEMIは、メモリ業界は、設備投資を凍結あるいは先延ばししているが、ファウンドリ/ロジック向け投資は、7nmの量産および5nmの量産準備に向けた投資で投資総額が増える見込みである。2020年もメモリへの投資再開と中国における新規投資で、投資額が2割近く増加する見込みとしている。
そして、2019年の半導体材料市場予測だが、2018年に同11%増となった反動か、短期レンジでは顧客から値下げ要求を迫られており、成長が期待できない。その代わり、2020年には数%ほど成長する見込みとしている。
材料の使用量は稼働率次第とも言えるわけだが、ロジックならびにファウンドリがそれなりに堅調な投資と稼働率が見込まれることを踏まえると、メモリ市場の回復がいつからか、という点が市場成長のカギを握ることとなりそうである。