ルネサス エレクトロニクスは、28nmフラッシュ混載プロセスを採用した車載制御用マイコン向けとなる新たなフラッシュメモリ技術を開発したと発表した。
同成果の詳細は、2019年6月9日から14日まで京都で開催された「2019 VLSI技術/回路シンポジウム(2019 Symposia on VLSI Technology and Circuits)」にて発表された。
車載制御用マイコンでは、制御用のソフトウェアの大規模化やOTA(Over the Air)によるプログラム更新時の格納領域確保などのニーズから内蔵フラッシュメモリの大容量化が求められているほか、より高速なランダムアクセスリード性能やロバスト性などが求められるようになっている。
同社では、マイコン内蔵フラッシュメモリとしてSG-MONOSの研究開発を継続して行ってきたが、これらの要求を踏まえ、今回は、メモリセルサイズを従来比で15%以上の縮小となる0.045μm2とすることで、24MBの制御用コード格納用フラッシュメモリをマイコンに搭載することを可能にした。また、ランダムアクセスリードの高速化は、ワード線を分割する方法が有効だが、ワード線ドライバの増加や、トランジスタの信頼性低下などの課題があった。それに対し、今回は、ワード線ドライバのストレス電圧緩和や、ワード線電源電圧ドライバの分散配置によって解決を図ることで、240MHzのランダムアクセスリードを実現したという。
さらに、OTAへの対応として、フラッシュメモリへの書き込み動作時に、各メモリセルに流す書き込み電流を動作初期と後期で可変にすることで、書き込みスループットを低下させることなく外部電源(Vcc)のピーク消費電流を55%削減。走行中のOTAの電源電圧ノイズによるマイコンの動作への悪影響の抑制を可能としつつ、書き込みパルスを同時印加するセル数を増やすことで、6.5MB/sの高速書き込みも実現。加えて、テストチップでは、制御ソフトウェアの格納用フラッシュメモリ領域を、実行中のソフトウェアを格納する領域と、更新ソフトウェアの領域に分け、イグニッションオフ時に1ms以下で実行ソフトウェアを切り替えできることや、意図せずにソフトウェアの更新や切り替えが中断された後でも誤動作しないようなロバスト性の確保も可能にしたという。
なお、同社では今回開発されたこれらの技術により、制御ソフトの大規模化、高速なリアルタイム制御および高度なOTAに対応することが可能だとしているが、今後もマイコン内蔵フラッシュメモリの大容量化、高速化、低消費電力化を進めていくとしている。