ジャパンディスプレイ(JDI)は12月4日、戦略発表会「JDI Future Trip」を開催。8月に発表した最終製品への参入に向けた状況や、同社の目指すべき方向性の説明などが行なわれた。
ディスプレイに表示されるデータを見るから活かすへ
同社は日本の電機メーカー各社が有していた中小型液晶ディスプレイ製造子会社や拠点などが結集して生まれたディスプレイ製造メーカーだが、JDI 常務執行役員 CMOの伊藤嘉明氏は、「世界最高峰の技術を持っていると評価されてきた。しかし、8月に提示した3つ(最終製品ビジネスへの参入、定期課金ビジネスの導入、テクノロジーで社会的課題を解決)の戦略を進めるためには、今までとまったく異なるアプローチが必要であった」とし、そのためのオープンイノベーションの推進を8月の発表以降、約4か月にわたって進め、戦略的アライアンスもさまざまな分野にわたって23社・団体と締結。共同快活は実証実験を進めてきたことを強調する。
現在のJDIについて伊藤氏は、「3つの戦略をベースに、あらゆることを愚直に、かつ着実に、スピード感を持って取り組んでいる」状況にあるとし、これを進めていくことで、今までのパネルビジネスから、大きな変化が生み出されることが期待されるとした。その変化は、単なるディスプレイから、インプット/アウトプットを司るインタフェースへと変貌を遂げることであり、「そのためにはデータ連携が競争力の核になる。情報を見る、から、活かす時代に変わる」と、データを活用したソリューションを実現するために、今回、Arm Treasure Data(トレジャーデータ)との戦略的協業に至ったことを明らかにした。
今回の提携の目的は、BtoCソリューションの創出に向けたマーケティングの強化と、そこから生み出されるさまざまな情報をBtoBビジネスへとフィードバックさせることによる中核事業の強化にある。具体的には、JDIは、Armが提供するエンド・トゥ・エンドなIoTプラットフォーム「Arm Pelion IoT Platform」や、デジタルマーケティング領域で実績のあるArm Treasure Data eCDPを活用し、インプット/アウトプットデバイスとなったインタフェース(ディスプレイ)で得たデータの解析・分析を実施することで、こうしたことを実現し、最終的にはインダストリー4.0、スマートファクトリーの促進にもつなげていくことを目指すとする。
インプットの実現にむけ、センサビジネスを強化
ディスプレイは、映像を表示させるデバイスだが、液晶ディスプレイの仕組みを考えると、液晶を駆動させるのはTFT(薄型トランジスタ)であり、いわば半導体素子であるといえる。TFTから外に向かって信号が流れれば液晶ディスプレイや有機ELとして映像を表示するデバイスとなるが、これが逆に外部からの情報をデータとしてプロセッサに送れば、センサとして活用できるようになる。
「もちろん、ディスプレイそのままの技術ではセンサは実現できない」(JDI 常務執行役員 CTOの永岡一考氏)わけだが、従来比で感度を1000倍、リーク電流を1/1000に抑えるセンサに適したトランジスタ技術を開発したほか、センサ用の回路アルゴリズムも開発。これにより、大面積の認証センサや、実際にタッチせずに、パネルの上でジェスチャーするだけで操作できるホバーセンサなどの実現が可能になったとする。
また、詳細は語られなかったが、フレキシブルエレクトロニクス系の技術と組み合わせる形で、伸びても駆動可能なストレッチャブルセンサなど、従来にないさまざまなセンサの開発も進めていることも明言。大面積センサならびにホバーセンサについては2019年の量産開始とするほか、ストレッチャブルセンサのような新方式センサも2019年にはなんらかの形で発表する予定であることを明らかにした。
「トレジャーデータとの提携と、センサ技術の確立により、今までディスプレイというアウトプットデバイスを作ってきたJDIが、インプットからデータの解析・分析、そしてアウトプットと、1つんも大きな流れを作れるようになる。これは、今までJDIはデバイスを売っていたが、これからはソリューション、プラットフォームを売ることができるようになることを意味する。トレジャーデータとの連携で、新しいデータの活用にも期待できるようになる」と同氏は、今回の一連の取り組みによってもたらされる変化を説明する。伊藤氏も、「いままで、新しいことを提案してきたときは、常に前例がない、経験がない、できるわけがないといわれてきた。厳しい状況にあることも分かっている。しかし、できるできないじゃない。すべてはやるかやらないか。JDIはやるを選択した」と、変化することをJDIが選択したことを強調。今後も、BtoCにどうやって参入していくのか、といったことを折を見て、披露していき、JDIの変化を広く知らしめていきたいとしていた。