ダッソー・システムズは、3D設計開発アプリケーション・ポートフォリオの最新版となる「SOLIDWORKS 2019」を正式に発表した。
SOLIDWORKS 2019のテーマは、「Design to Manufacture -設計から製造までをSOLIDWORKSで統合-」というもので、ものづくりにおける設計から製造に至るすべてのフェーズで生成されるさまざまな情報をシームレスにつなげる環境を提供することを目的に開発が進められてきたという。また、「これを実現することで、カスタマの経営とエンジニアリングにおいて、製品の品質向上、利益拡大、製品投入時間の短縮を実現する」(ソリッドワークスジャパン マーケティング部の田口博之氏)という意味合いもあるという。
具体的には、設計から検証を経て、製造用の図面作成、モデル作成、加工(生成・製造)、検査といった一連のものづくりの流れにおいて、どこかで不具合やそれに伴う設計変更が生じれば、この手順を問題の解決できるポイントまで遡っていく必要があり、その都度、情報の変換や作り直しが求められ、情報の欠落が生じる可能性が高まっていき、最悪の場合、意図しないものが生産されたり、不利益を被ったり、といったことが生じる可能性もある。
こうした課題の解決のために、3D CADのモデルを核に、製品情報(PMI)として、製造用モデルや加工パス生成・製造、検査表作成・検査などの工程データが確実かつシームレスに連動して含まれることが重要となってくるが、SOLIDWORKS 2019では、こうした密接な連携を通して、ユーザーにタイムリーな高い信頼性を有する製品の投入と、開発効率の向上などの成功体験を積み重ねていくことを可能とする機能の追加と拡充がなされたとのことで、そうした改良・改善、機能追加は実に250項目以上におよぶという。
大きなものとしては、SOLIDWORKS CADの描画性能改善。ソフトウェアのGPUへの最適化により、グラフィックパフォーマンスの設定をオンにすることで、従来バージョン以上に描画性能を高めることが可能となり、例えばSOLIDWORKS 2019のテーマモデルで、部品点数7000点の「Canada France Hawaii Telescope(CFHT:カナダ・フランス・ハワイ天文台)」の場合、前バージョンでQuadro K4200を用いて描画した場合、37秒であったものが、最新版では20秒へと最大45%の短縮を実現したとするほか、大規模デザインレビューモードにおいて、構成部品の追加・移動をダイレクトに実行することも可能としたことで、大規模アセンブリにかかる時間の短縮やレビュー時間の短縮も図ることが可能になったとする。
また、近年の3Dプリンタの性能向上によりトレンドになりつつあるトポロジー最適化も、従来の応力制約からの形状生成のみならず、固有値制約からの形状生成にも対応。それらの結果をメッシュボディに直接保存して、CADによるモデリングに引き継ぐことも可能とした。
さらに、3次元情報の共有についての機能強化も実施された。例えば、eDrawingsにおいて、Parasolid,Solid Edge、ACIS、JT,NXといったファイルフォーマットをダイレクトに取り込んで描画できるようになったほか、アドオンのプラグインの追加をしなくても3D HTMLとして保存することが可能となったことで、通常のブラウザを表示できる端末からデータを参照することが可能となった。このほか、細かいが、さまざまなツールで、別ツールの生成データをダイレクトに取り込むことが可能となっており、かつ描画速度も向上させるなど、各製品間をシームレスにつなげようとする方向での進化がなされている。
加えて、新機能として、「タッチ&ジェスチャースケッチ」がSOLIDWORKS CADに追加されたほか、「SOLIDWORKS Extended Reality(XR)」がCADならびにeDrawingsに追加された。
タッチ&ジェスチャースケッチは、ホイール型デバイス「Surface Dial」への対応を図ったもので、これによりデザイナーの利き腕とは逆の手を活用することが可能となり、マウスを持つ時間の削減をはかることができるようになったとするほか、3Dマークアップをペンでタッチスクリーンデバイス上で入れることも可能とすることで、3次現状方や意図の伝達性を向上させたとする。
一方のSOLIDWORLS XRはいわゆるVR/AR/MRの活用で、SOLIDWORKS CADで作成したシーンデータ(照明、カメラ、素材、デカール、モーション・スタディ・アニメーション情報など)を出力することで、没入型のデバイスによるレビューやトレーニングを加速させるものとなっている。
なお、今回のSOLIDWORKS 2019では、主に機械加工者向けのバンドル製品となる「SOLIDWORKS Machinist」と呼ばれるものも用意された。同Standard版は、SOLIDWORKS CAD Standardの部品編集機能と、SOLIDWORKS CAM Standardを組み合わせたモデルとして、一方のProfessional版は、同Standard版のこれらの機能に、さらにSOLIDWORKS Standardのアセンブリ機能と、SOLIDWORKS CAM Professionalを組み合わせたものとなっている。
また、日本市場向けの期間限定パッケージとして、「設計・製造パッケージ」も用意。こちらは、生産技術や製造準備をより効率的に行うための包括製品という位置づけで、SOLIDWORKS Standard、SOLIDWORKS Inspection Professional、SOLIDWORKS MBD、SOLIDWORKS Composerという設計現場の情報をつなげるソリューションをパッケージ化したもので、設計データのPMIの情報を製造時の作業にも活用することで、設計から製造までの情報をシームレスにつなぐことを可能にしたものとなっている。こちらは、2018年11月15日から同社の代理店より提供を開始し、2019年3月28日までの期間限定提供品となる。また、価格も、各製品も個別にライセンスを購入すると、通常価格で322万2400円(税別)だが、特別価格として198万円(同)、保守契約となる年間サブスクリプションサービスも、通常64万5000円(同)となるところが、46万8600円(同)で、この契約を維持し続ける限りは、サブスクリプションの割引は継続されるとのことである。
なお、同社では、今回の機能拡充について、設計から製造へのコラボレーションがさらに重要になっていく将来に備えるものとしており、今後も強力に実現に向けた取り組みを進めて行きたいとしている。