建設現場の健康維持を目的とした生体モニタリングシステム

戸田建設と村田製作所は、共同でヘルメット取り付け型センサデバイスにより、作業現場で働く作業者の健康状態を遠隔地から把握することが可能な「作業者安全モニタリングシステム」を開発したことを発表した。

建設現場の作業者は、猛暑や酷暑の中で作業を行うため、場合によっては熱中症になる可能性が高く、過去5年間の業務中の熱中症発生患者の約25%ほどが建設業で占められるほどとなっており、その対応策の導入が喫緊の課題とされている。

両社はこうした現状を踏まえ、作業員の健康を守ることを目的に、小型軽量で付け忘れを防ぐことができる装着義務のあるものに付帯するだけで作業員の健康状態を監視できる装置の開発に2016年6月より開始したという。具体的には、村田製作所がシステム開発を、戸田建設が現場での調査とフィードバックを担当。さらに豊橋科学技術大学に体調変化の分析予測精度向上を依頼するという体制で実際の開発が進められてきたとする。

  • 開発初期時の検討項目

    開発初期時の検討項目。装着忘れを防ぐために、現場での装着義務のあるものに付与することを前提とし、ヘルメットを選択した

現場で実用が可能なサイズ・重量を実現

開発されたシステムの全体像は、ヘルメット内のバンド部に脈拍などを計測するセンサデバイスを装着(バッテリ、通信、環境センサ部は後頭部に別付け)。装着者の生体情報と環境情報を組み合わせた独自指標「熱ストレスレベル」(周辺の環境、パルスレート、活動量を計測して、総合的に判断する独自のパラメータ)を逐次監視し、それらの情報をクラウド上の解析プラットフォームにデータを送信。体調に変化があった場合、現場監督者にアラートで状態の変化を知らせ、体調維持の指示を出したり、場合によっては医療機関に搬送するといったことを可能とするものとなっている。

  • 作業者安全モニタリングシステムのイメージ
  • 作業者安全モニタリングシステムのアラートのイメージ
  • ソリューションのイメージ。作業者のヘルメットから得られた生体情報などはクラウドに吸い上げられ、異常を検知した場合は、監督者にアラートとして知らせ、対応を仰ぐ流れとなる

システム開発としては、2017年3月より実地評価を開始。2018年5月からは、それまでの課題点であったバッテリ寿命やデバイスサイズ、装着感の改善などを図った第3次トライアルをスタート。現状の試作デバイスは既存のヘッドライトと同等のサイズ、重量を実現したとのことで、実用性に耐えうるという判断が現場からもでているとのことで、2019年の春からは、量産モデルの提供を開始。戸田建設が施工中の建設現場への導入を進めていくことを決定したという。

  • 第3次現場トライアルの概要
  • デバイスの特徴
  • 開発されたデバイスの概要。無線は920MHz帯の特殊無線を採用したとのことで、量産モデルでは1回の充電で2週間から1ヶ月ほどの稼動が可能だという

広がる対象市場

同デバイスはヘルメットに装着することで生体情報などの取得を可能とするものであるため、建設現場に限らず、ヘルメットをかぶって作業を行なう電気工事や工場・プラント、鉄道の保線作業などといった分野への応用展開も期待できると村田製作所では考えており、量産が開始され、戸田建設での導入が進んだ後、将来的にはそうした市場への参入も検討していきたいとする。

また、アルゴリズムやセンサデバイスを変更することで、まったく異なる業界や困りごとにも対応できる可能性も見えたとのことで、さらなる応用発展も期待できるとしている。

  • ソリューションの展開イメージ

    センサデバイスを改良したり、変更したりすることで、新たな用途開拓も期待できる

なお、戸田建設としては、建設現場はもちろんのこと、災害救助活動や復興活動にも人員を供出していることから、そうした現場での活用も検討していきたいとしているほか、「自社の作業員4000名に、協力会社の作業員を合わせれば全国で数万人規模の作業員がいることになる。将来的には、そうした作業員全員がこうしたデバイスを活用していくことで、作業中の健康管理につなげていきたい」としており、自社の労働環境の改善につなげる取り組みとして、広く展開していく計画としている。 。

  • 実際に装着した様子
  • 実際のデバイス
  • 実際に装着した様子。ヘルメットから出ている黒い箱状のものがバッテリ、加速度センサ、通信モジュールなどを搭載したデバイス部。実際の生体情報は、ヘルメット内に設置された別デバイスでデータを取得する