予定通りに小惑星リュウグウに到着

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月27日、16時より記者会見を開催、小惑星探査機「はやぶさ2」のリュウグウ到着について説明した。はやぶさ2はこの日、探査の"ベースキャンプ"となるホームポジション(リュウグウから約20kmの地点)に到着。これにより、往路は完走となり、いよいよ今後、小惑星近傍での運用が始まることになる。

  • 到着確認後の集合写真

    到着確認後の集合写真 (C)ISAS/JAXA

はやぶさ2は同日、朝の運用でコマンドを送信。9時30分頃にX軸方向に、続いて9時35分頃にZ軸方向に、化学推進系(RCS)の噴射を行った。LIDAR(レーザー高度計)で計測し、距離が約20kmであること(正確には20.7km)、そして距離を維持できていること(相対速度は秒速1cm以下)を確認し、予定通り、リュウグウへの到着を果たした。

  • 到着時のドップラーシフト

    到着時のドップラーシフト。9時51分に受信したところで速度が変化したことが分かる (C)ISAS/JAXA

津田プロジェクトマネージャが語った今の気持ち

16時から開催された記者会見には、津田雄一プロジェクトマネージャ、佐伯孝尚プロジェクトエンジニア、渡邊誠一郎プロジェクトサイエンティスト、杉田精司・光学航法カメラ担当などが出席。現状について報告した。

  • JAXA 宇宙科学研究所 研究総主幹の久保田孝氏、「はやぶさ2」プロジェクトチームの吉川真ミッションマネージャ、津田雄一プロジェクトマネージャ、佐伯孝尚プロジェクトエンジニア、渡邊誠一郎プロジェクトサイエンティスト、杉田精司・光学航法カメラ担当

    左からJAXA 宇宙科学研究所 研究総主幹の久保田孝氏、「はやぶさ2」プロジェクトチームの吉川真ミッションマネージャ、津田雄一プロジェクトマネージャ、佐伯孝尚プロジェクトエンジニア、渡邊誠一郎プロジェクトサイエンティスト、杉田精司・光学航法カメラ担当

地球を出発して3年半。初号機のときのような大きなトラブルに見舞われることなく、ついに目的地に到達したはやぶさ2。到着したときの気持ちについて聞かれた津田プロマネは、「天にも舞い上がる気持ち」と回答。「いつも『慎重に~』とコメントしているが、今日ばかりは諸手を挙げて喜ばせて欲しい。本当に嬉しい」と、喜びを爆発させた。

津田プロマネは、「リュウグウは人類が今日初めて到達した天体。まだ誰も見たこととが無い新しい世界をこれから探査することになるので、何が起こるか分からない」と気を引き締める一方で、「果敢に挑戦し、大胆にやっていきたい。創造性を持って探査に取り組み、初号機を越える成果を上げたい」と意気込んだ。

  • 津田雄一プロジェクトマネージャ

    津田雄一プロジェクトマネージャ(JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授)

撮影したリュウグウの姿から見えてきたこと

本格的なリュウグウの科学観測はこれからになるが、これまでに取得したONC-T(光学航法カメラ)の画像から、リュウグウの特徴がいくつか明らかになっている。

まずは、形がコマ型であること。これについて、渡邊プロジェクトサイエンティストは、「米国のOSIRIS-RExが向かっている小惑星ベンヌとそっくりなのは意外だった。少し違う2個を見るというのは、サイエンスにとって非常に良い戦略。2機の探査機が奇しくも似た天体に行く状況になったので、協力してやっていきたい」と述べる。

  • 渡邊誠一郎プロジェクトサイエンティスト

    渡邊誠一郎プロジェクトサイエンティスト(名古屋大学大学院環境学研究科 教授)

そして、かなりボルダー(岩塊)が多そうなことだ。着陸時のリスクになるのが気がかりだが、津田プロマネは「難易度が難しくなることは織り込み済みだが、それにしても難しそうだなと。神様はあんまりやさしくないなと思った」とコメント。佐伯氏も「訓練より各段に難易度が上がっている」と、頭を悩ませていた。

  • 佐伯孝尚プロジェクトエンジニア

    佐伯孝尚プロジェクトエンジニア(JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 助教)

ただ、杉田氏は「着陸は難しくなるだろうが、科学者からすると嬉しい」とも述べる。「大きなボルダーは、リュウグウの母天体から来た可能性が高い。大きいと、模様や構造が見えたり、組成の違いが見えたりするかもしれない。調査のしがいがある星だなと思う」と、興奮が隠せない様子だった。

  • 杉田精司・光学航法カメラ(ONC)担当

    杉田精司・光学航法カメラ(ONC)担当(東京大学大学院 理学系研究科 教授)

実は暗めの小惑星だったリュウグウ

またこれまでの画像では、リュウグウは明るく輝いていた印象であるが、明るさを合わせて地球と比較すると、かなり暗いことが分かる。杉田氏は、「反射率は、典型的な炭素質コンドライトと同等か、やや暗め。このことから、リュウグウは炭素に富んでいるとハッキリ言えるのでは」と述べ、今後の科学観測に期待した。

  • 地球とリュウグウではこんなに明るさが違う

    露出を揃えて比較すると、地球とリュウグウではこんなに明るさが違う (C)ISAS/JAXA

ミッションの本番 近傍運用がスタート

これから、ミッションの"本番"と言える近傍運用が始まるわけだが、プロジェクトチームはすぐに、リュウグウの科学観測に着手。ホームポジションからの観測に加え、高度を5km、1kmまで下げる観測なども行い、重力の計測と、形状の3Dモデルの作成を行う。小惑星の素性を良く知った上で、8月下旬までに、着陸地点の選定を行う計画だ。

その後、9~10月にも、第1回目の着陸に挑むことになる。着陸してサンプルを採取することは、はやぶさ2の最も重要なミッションだが、リスクも大きい。しかも前述のように、リュウグウにはボルダーが多いことが分かっている。

  • 今後のスケジュール

    今後のスケジュール。多くが未定で今後変更になる可能性もある (C)ISAS/JAXA

津田プロマネは、「安全の確保が最優先。その上で成果を最大化したい」と方針を説明。「着陸の成功確率が100%でなくても、安全が100%という状況は作れる。初めて見る天体のどこを攻めれば一番成果が上がるのか、大胆に決めていきたい」と、挑戦していく姿勢を示した。

往路からトラブルが続いた初号機に対し、はやぶさ2はこれまでほぼ"無傷"。これは今後の探査において、非常に大きなアドバンテージだ。はやぶさ2には、インパクタを小惑星に衝突させ、クレーターを作るという挑戦的なミッションもある。これから1年半の小惑星近傍運用において、一体どんな成果が得られるのか。大いに期待したいところだ。

  • 到着したことで、ミッションパッチもリニューアル

    到着したことで、ミッションパッチもリニューアル。リュウグウにはちゃんとクレーターが描かれている

リュウグウ到着確認時(9時54分JST)の管制室の様子(寄り) (C)ISAS/JAXA

リュウグウ到着確認時(9時54分JST)の管制室の様子(引き) (C)ISAS/JAXA