半導体商社大手のアヴネット。その年間売上高は約2兆円と、世界の電子機器産業を陰から支える1社と言っても過言ではない。そんな同社が、IoTの普及を背景に、従来の半導体商社、というイメージから、新たな姿への変貌を模索している。
そんな同社が考えるIoTのトレンドを、同社アジアパシフィック代表のフレデリック・フー氏は、「キーワードは"スマート化"」とし、ありとあらゆるものがスマート化に向かっていると強調する。スマート化で切り離せない話題がネットワークへの接続だが、従来の3G、4G/LTE、Wi-Fi、Bluetoothといった無線ネットワークに加え、低消費電力である程度の距離までパケットを伝送することが可能なLPWAの規格が次々と起こってきたほか、5Gの商用化もいよいよ現実味を帯びてきた。こうしたネットワークを活用し、エッジノードとクラウドが接続されることで、エッジノードで管理するセンサから生み出される膨大なデータを、クラウドコンピューティングを支えるサーバやストレージにて処理し、AIを組み合わせて解析を行う。こうした一連の流れすべてを把握し、対応を図っていくことが今後の商社にとって重要な意義を持つと同氏は語る。
その一方で、国や行政もスマートコミュニティ構想を打ち出すなど、一言で「スマート」と言っても、スマートシティ、スマートエネルギー、スマートホーム、スマートモビリティ…とさまざまな分野で取り組みが行われており、かつその業界に携わる人それぞれで解釈が異なるため、それぞれに対応していく必要性が生じる。同氏は、「アヴネットとしては、いずれのスマート分野においても、IoTとそのエコシステムの存在が、実現の基盤になると考えている」とし、それが提供できるのが自社であるとの見解を示す。
具体的にエコシステムそのものを見ると、どのようなことを実現するのかといった段階の「コンサルティング」、そうした話し合いの中から出てきた必要なものをつなげていく「コネクション」、そこで生み出されるデータをクラウドに送信するための「ゲートウェイ」と「クラウド」、そうして集められたデータから、活用できる情報へと変換させる「アナリティクス」、そしてその結果を業務改善などにつなげる「アクション」といった複数の領域に分かれており、これまではそれぞれの事業者がそれぞれの得意領域を中心に事業を展開してきた。
ただ、同氏は、「IoTは決して、こうした領域のどこか1つの分野を示すものではなく、すべてを実現するためのプロセスとしての存在である」ともしており、これらすべての領域をつなげていくことが、これからのアヴネットの役割であり、そのために半導体デバイスベンダのみならず、SIerなど、さまざまな領域でパートナーシップを積極的に展開を進めているほか、自社でもソリューションの開発を行っており、それらを組み合わせることで、顧客が必要とするIoTをソリューションとして提供することができる稀有な企業になれるとする。
実際に日本でも、独自のIoTエコシステムの構築が進められているとのことで、SIerやバリューアッドリセラー(付加価値再販業者:VAD)のような専門分野を有する企業などとの協業をこの3年の間に推し進めてきたという。
こうした動きについて、同社日本法人の代表取締役社長を務める茂木康元氏は「半導体を売っていくことが中心であることに変わりはないが、IoT時代に対応することを目指して取り扱い分野の拡大を進めており、単に半導体チップを売るのではなく、システムを売る方向にシフトを進めている。今後、日本においては、チップのみならず、マザーボードやOS、ネットワークに接続できるゲートウェイ、スイッチなども手がけることで、さまざまな企業の成功を陰ながら支えて行きたい」と、アヴネットが顧客のIoTに関する"困った"という部分の開発を支援していくことで、IoT市場での存在感を強めていきたいとしていた。