人類が火星に行く日

惑星を人類の住める星に改造する「テラフォーミング計画」。SFの世界ではよくある話だが、これがそう遠くない未来、現実のものとなるかもしれない。そんな未来を「体験」できる将来も見えつつある。そのカギを握るのが、HPやNVIDIAをはじめとした多数企業の"ある取り組み"である。

その取り組みとは、「HP Mars Home Planet」と題された、デザイナー、発明家、宇宙ファン、専門家が集い、火星上に100万人の居住者向けの都市エリアをデザインし、それをリアルなレンダリングとVRによって再現しようというプロジェクトだ。

  • 「HP Mars Home Planet」のイメージ画像

    「HP Mars Home Planet」のイメージ画像 (出所:Project MARS Webサイト)

4月9日、この「HP Mars Home Planet」の一環として、日本HP、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、NVIDIA、オートデスク、日本マイクロソフトによる、高校生・大学生を対象としたプログラム「Project MARS -Education League JP-」の決勝大会が都内にて行われた。

若者よ! 火星を目指せ

「Project MARS -Education League JP-」は、2017年より始動したプロジェクト。同プロジェクトの決勝となる今大会には、日本全国から参加した104チームの中から選ばれた8チームが浸出し、「100万人の人間が火星で生活する上で必要な建物や乗り物など、インフラをデザインせよ!」という題材に対するプレゼンテーションが実施された。ちなみに優勝チームの内容は実際にVR化され、一般の人でも体験できるようになる。

  • 「Project MARS -Education League JP-」 プレゼンテーションの様子

    プレゼンテーションの様子。参加チームのプレゼンテーションはもはや、高校生・大学生のアイデアとは思えないほどに深く考えられたものだった

見事優勝に輝いたのは、チーム「Yspace×MarS+HG」。実はもともとこのチームは、2つの別々のチーム(早稲田大学、東京理科大学、慶応義塾大学の学生からなるチーム「Yspace」と、広尾学園高校によるチーム「MarS+HG」)が合併してできたものであった。合併のきっかけとなったのは、コンセプトの相似性であったといい、各チームがお互いにアイデアを補完し合い、より高度なアウトプットにつなげることが優勝の要因となった。

100万人が住む火星都市ってどんなもの?

「Yspace」が考えた火星のアイデアのベースとなったのは、「居住空間の拡充性」。「100万人が住む火星都市」というテーマの将来の姿をも予想し、さらに人口が増加していく未来を見据え、人口の増加にも対応できるような仕組みを考え、景観をデザインした。

  • 「Project MARS -Education League JP-」 プレゼンテーションの様子

    「Yspace」がデザインした火星の様子。レールとパイプライン、移動型の居住空間からなる、拡張が容易な火星をデザインした

一方のチーム「MarS+HG」は、「Yspaceの発表を聞き、『生活感や都市感がなく、楽しくなさそう』という感想を持ちました。そこで、新たな共有スペースとしてピラミッド型のマンション、そこに色合いを持たせるためのカラフルな太陽電池をイメージと加えた」と語る。

  • 「Project MARS -Education League JP-」 プレゼンテーションの様子

    「Yspace」のイメージに「MarS+HG」のアイデアをプラスした火星の様子。「D-cube」という火星における新たな交通手段を提案したほか、新たな共有スペースとして、ピラミッド型のマンションを加えるなど、より生活感が増し、かつ世界観を色濃いものとした

さらに、チーム「Yspace×MarS+HG」は、「VRで表現したい」世界を作り上げるために、さまざまなVRを体験してみたり、インタビューにてVRに求めるものを聞いたりするなど、足を動かして「VRで何を表現すべきか」を考えたという。そして、そこで得た知見をもとに、さまざまなコンテンツ案を提案した。

  • 「Project MARS -Education League JP-」 プレゼンテーションの様子

    VRで体験できるコンテンツ案。探索のできる「仕事」、都市を見て回ることができる「ドライブ」など、VR要素として楽しめるためのさまざまなコンテンツが用意されている

その甲斐があって、プレゼンテーションを終えたチーム「Yspace×MarS+HG」に対し、審査員長を務める日本HPの岡隆史 代表取締役 社長執行役員は、「一番VRを前提にストーリーの中身を考えてもらい、理解しやすかった」と賛辞を送った。

  • 「Project MARS -Education League JP-」 プレゼンテーションの様子
  • 「Project MARS -Education League JP-」 プレゼンテーションの様子
  • 「Project MARS -Education League JP-」 プレゼンテーションの様子
  • 体験できるコンテンツは一部映像として公開された

イベントの最後には、岡氏より参加者へ、「人間が想像できることは、必ず実現できる。しかし、『火星で暮らす』という未来を、情熱を持って想像し続けることは難しい。しかし、きっと今回のように、情熱を持って1つの物事に取り組み続ければ、将来どんなことも成し遂げることができるだろう。今回のプログラムで、『頑張れば何事も形にできる』ということを、私自身、もう一度も感じることが出来た」と声がかけられた。

  • 「Project MARS -Education League JP-」参加者と審査員の集合写真

    「Project MARS -Education League JP-」参加者と審査員の集合写真

なお、優勝したチーム「Yspace×MarS+HG」の作品は「HP Mars Home Planet」本大会にエントリーされ、今後、本格的にVRデータを作成していくこととなる。

人類が火星に移住する日はまだ遠いが、火星移住をVRで体験できる未来は、すぐ近くに来ているようだ。