マンチェスター大学の研究チームは、RFIDに埋め込み可能なグラフェン湿度センサを開発したと発表した。IoT向けに利用できる可能性があるとしている。研究論文は、Nature系列のオープンアクセス誌「Scientific Reports」に掲載された。

  • グラフェン湿度センサの動作原理とデバイス構造(出所:Scientific Reports, DOI:10.1038/s41598-017-16886-1)

    グラフェン湿度センサの動作原理とデバイス構造(出所:Scientific Reports, DOI:10.1038/s41598-017-16886-1)

グラフェン上に酸化グラフェン(GO)層を重ねることによってフレキシブルなヘテロ構造を形成し、無線接続による遠隔センシングが可能な湿度センサとして機能するようにした。多層のセンサを一層ずつ印刷できるため、低コストでの量産に移すことも可能であるとしている。

親水性の材料であるGOが水を吸収する能力は周囲環境の湿度に大きく依存しており、この性質を湿度センサとして利用している。RFIDアンテナは近接効果により周囲環境の変化に対して敏感であるため、RFIDアンテナの表面にGO層を印刷することによってGO層の比誘電率の変化の影響を受けてRFIDアンテナのインピーダンスが変化する。

また、後方散乱信号の位相などのパラメータもGO層の比誘電率にともなって変化する。こうした信号はRFIDリーダーで容易に検出可能であるという。

具体的なデバイス構造はというと、さまざまな湿度条件下でのGO層の比誘電率を測定するため、共振器回路のキャパシタ領域(15mm×8mm)の表面に約30μm厚のGO層が印刷されている。

電源はレシーバで受信した電磁波による発電でまかなうことができるので、電池は不要となっている。厳格な湿度管理を必要とする製造プロセスや、食品、医療、核廃棄物など幅広い領域での電池不要のスマート無線モニタリングに利用できるとしている。

今回開発されたRFID埋め込み型センサを使うことによって、無線システム経由での情報収集を簡易化できる可能性がある。Wi-Fiや5Gといった無線ネットワークとの親和性も高いという。

グラフェンの発見でノーベル物理学賞を受賞した同大のコンスタンチン・ノボセロフ氏は今回の研究について「複数種類の二次元材料を一緒に使って、速やかな産業応用に適した機能性デバイスを作り出すプリンタブルテクノロジーの最初の例である」とコメントしている。