チャルマース工科大学の研究チームは、テラヘルツ帯の周波数の信号検出が可能なフレキシブルな検出器を開発したと発表した。

プラスチック基板上に形成したグラフェントランジスタが使用されており、無線センサネットワークやウェアラブル分野などにテラヘルツ波を応用する試みとして注目される。研究論文は、「Applied Physics Letters」に掲載された。

グラフェンを用いてPETフィルムに形成したテラヘルツ波検出デバイス。指先に載るくらいの大きさ(出所:チャルマース工科大)

テラヘルツ波とは周波数100GHz~10THzの範囲の電磁波である。広帯域の無線通信や、セキュリティ分野向け撮像技術などにテラヘルツ波を使いたいという需要があり、テラヘルツ領域の周波数で利用できるシステムや部品の開発が進められている。

軽量化や低コスト化が長らくの課題であったが、最近では高分子材料の進歩によってフレキシブルエレクトロニクスの開発が進み、フレキシブル基板を用いた高周波デバイスの作製が可能になってきている。

今回の研究では、グラフェンを用いて機械的に曲げることのできるテラヘルツ波検出器の作製にはじめて成功したとする。室温条件で300~500GHzの周波数帯の信号を検出することができ、半透明でフレキシブルなデバイスとなっている。

グラフェンによる電界効果トランジスタ(FET)はPETフィルム上に形成され、デバイスのサイズはゲート長5.5μm、チャネル長4μmとなっている。

デバイスの曲げによる歪みが、直流特性、電圧応答性、ノイズ等価電力(NEP)といった性能に与える影響を調べた結果、デバイスの堅牢性を実証できたとしている。

テラヘルツ領域でのカメラ、物質の違いを見分けるセンサ、ガンの発見といった医療分野への応用などが挙げられている。自動車向けの撮像用センサや無線通信などへの利用も考えられる。